はみださないくらいの恋愛

きど みい

1.不幸の貯金は言い換えたら幸福の借金みたいなもの


ゆとりのわたしたちは、いつも「それなり」を求めている。



もし人生で感じる不幸の量が決まっているのなら、今は不幸の貯金をしているのだと思う。不幸なんて貯めるものでない、といわれるかもしれないけど、それはきっと自然とたまっているものだ。


不幸の貯金は言い換えたら幸福の借金みたいなもので、たまに溜めすぎてふくれあがってそれが破裂してしまう人だっているんだから、きっと私の考えは間違っていないと思う。


みんな日々不幸の貯金をしてでも一生懸命がんばるのはきっと、いつかその不幸が幸福に換金できると信じているからで、不幸なことがあってもいつか同じだけの幸福があるはずだ。


―――少なくとも私はそう信じることでいつもの自分を保っている。


「・・・っぷは~。」


きっと換金できる幸福の量には色々種類がある。


たとえば今日みたいに必死に働いた日のお風呂上りのビールだって、今日私が感じたストレスの換金みたいなものだ。もっともこの一杯で全てが換金できているのかと聞かれたらそうでもない気がするけど、人というものは自分に都合が悪いことほど量が多く感じるというのは、アインシュタインさんがすでに古い昔に証明済みで、私がいまさらとやかく言うことではない。


「ニャ~。」


そんなばかげたことを考えていると、知らないうちにひざにいた猫が鳴いた。この甘えた鳴き声はだいたいおなかが空いているときにしか出さないけど、こんな夜遅くに何かをあげる気はさらさらない。


私もこの子に不幸の貯金をしてしまっているのだろうか。


自分の不幸の貯金は、もしかしたら純粋に幸福に換金されているものではなく、自分が他人に与えた不幸の量に比例しているのかもしれない。猫の頭をなでてこれで少しでもこの子の不幸が幸福に換金されるよう願った。


不幸、不幸といっても、私の不幸なんてきっとしれている。社会人になって働いていれば誰だっていやなことの一つや二つあるし、学生の頃だってきっとその頃なりの不幸があったに違いない。


「玉山さん、ちょっといい?」

「・・・はい。」


私より15個年上で、10年以上この会社でキャリアを積んできた友永さん。最近の不幸の主な貯金源はこの人にある。


「あなた、お客様のコールは3回以内に取れって前も言ったわよね。」

「・・・はい。」

「さっきまた3回以内に取れてなかったわよ。」

「はい・・・。すみません。」

「すみませんって言うだけで直せないなら何の意味もないのよ!」

「すみません。」

「これだからゆとり世代は・・・。」



――――これだからゆとりは。



その言葉を、私たちは人生で何度耳にしてきたのだろう。


自分たちが望んでいたわけでもないのに、”大人たち”によってゆとり教育というものを受けさせられた私たちは不幸にもその”大人たち”に仲間入りしてから幾度となくそんな言葉を投げかけられる。


“ゆとり”である私だって、電話のコールに3回以内に出ることなんて簡単に出来る。でも、自分が他の電話に対応中に掛かってきた電話にどうやって出ればいいんだろう。


最初は納得できる”指導”をしてくれていた彼女が、最近私に”言いがかり”を言うようになったのは、きっと私が部長に可愛がられているからだと思う。


「若い頃はみんなそうやって言われるのよ。」


私の相談に答えながら、藤堂さんはだるそうに、でもすがすがしく黄金の飲み物をのどに入れた。


友永さんより更に年上の彼女は、とても特殊な”大人”だと思う。大人になっても子供だったときのことをしっかり覚えていて、でも大人としての分別や威厳も持ち合わせている。


「私たちも”新人類”って呼ばれてたことがあったな。」


どこか懐かしそうに、でも昨日のことのように語って、藤堂さんはまた黄金の飲み物を豪快に清楚に飲み干した。


「ま、世の中尊敬できる人よりも反面教師にすべき人のほうが断然多いのが現実よ。」


数少ない尊敬できる人の一人である藤堂さんに少しでも近づきたくて、自分もグラスを持って豪快に清楚にビールを口に含んだ。


――――これだからゆとりは。


そう言われても、私はムカつくとか悲しいとか、そんな感情が浮かんでこない。


少なくとも私は自分が”ゆとり教育”を受けてきた世代としての自覚がある。何より誰に何を言われても感情があまり浮かんでこないことこそ、自分がゆとり世代である証拠のような気がしていた。


すぐ会社をやめるとか、怒るとすぐに逃げ出すとか、ゆとり世代はそういわれることが多いけど、私からしてみたら色々なことをあきらめていて、それなりに生きている世代という印象のほうが強い。


3高が大事だった時代はきっと、何をするにしても人より”タカイ”ことが求められていて、きっと上昇志向も強かったのだろうけど、3低の求められる私たちの時代は”それなり”の幸せを求めている。


だからたまに上昇志向の高い同世代がいると、そんな人を一歩引いた目でみてしまう。でもそんな人をきっとみんなちょっとはうらやましく思っているような、そんな気持ちも確かに持っている気もする。みんなのことは良くわからないけど、でも少なくともゆとりである私は”ゆとり”らしく冷静に”ゆとり”を分析している。


「とにかく、あのおばさんの言葉は右耳で聴いて左耳で流しときな。」

「はい、そうします。」


分かってくれる人がいればそれでいいと思った。


私たちの世代はきっと”上手く生きていく”のも上手な世代なのだ。


私たちが”上手く生きていく”のに必要なのは、有り余るほどのお金ではなく、なにより安定だ。だから将来の夢で”公務員”と答える人が増えたし、公務員になった男の子はそれなりにもてると思う。


「よくやった。褒めてつかわす。」


合コン会場に向かう前、デパートのトイレに入って最終確認をしながら菜月が梨絵に言った。


大学時代からの友人である2人は、ゆとり世代らしく自分自身たちを分析している仲間で、学生を卒業して違う会社で働いていても“同志”だ。3人とも自分たちのもとめる「それなり」を見つけるために、同士としてこうやってたまに合コンをしている。


今日の相手は国家公務員と銀行員、そして大企業の営業マンらしく、菜月も梨絵も、もちろん私も興奮気味だった。男性には聞かせられないそんな会話をしながら、二人は目も合わせる事もなくしっかりと鏡を見つめて戦闘体制を整えていた。


「美衣、その口紅の色可愛いね。」

「うん、こないだ買った新作。」


それなりに生きている私たちだけど、ネットの恩恵をうけて流行には人一倍敏感だった。新作の化粧品、新作の服、新作のスイーツ。


きっと”シンデレラ”みたいなお姫様になれる人は特別な人だ、と思っていながらも、人よりちょっとおしゃれになりたいとか、可愛くなりたいとか、そういう気持ちも確かにある。


それに、お姫様にあこがれる気持ちがないといったら、もちろんうそになる。


でも、何を基準にお姫様とするのか、それは人によって違う。時代によっても違う。バブルで日本中が浮かれていたことを知らず、ちょうどそれが崩壊した頃に生まれた私たちの足は、しっかり地に着いている。着きすぎているほどだ。


「よし、行くか。」


口紅を塗ることは、戦国時代の武士が鎧を着ることに似ていると思う。私たちは女子の”基地”であるトイレを後にして、戦場へと向かった。


「梨絵ちゃん、早かったね。」


梨絵のお姉さんの友達だという国家公務員のその人は、店の前でスマートに私たちを待ってくれていた。私たちより少し上の世代のその人は、同世代のいつまでも子供の男たちよりずっとスマートに見えた。


「ごめんなさい、暑いのに・・・。」

「いいのいいの、俺たちが早く来すぎただけだから。」


“俺たち”ということは、きっと男性陣はもう集まっているのだと悟った。やっぱり私達より少し長く生きているだけあって、女性の扱いには慣れている。


「さ、行こうか。」


あくまでも自然にエスコートしてくれるのに感動して、私達3人は思わず目を合わせた。


「こんばんは。」


そこにいた銀行員と営業マンの大人の第一印象としては、特に特質して語ることもないという感じだった。とってもいけているわけではないけど、清潔感のある見た目に私たちはひとまずほっとした。


「すみません、お待たせしちゃって。」


菜月はそういいながらわざわざ手前に座っていた銀行員の前に座った。もうこれはロックオンしたな、と感じた。幹事である梨絵が自然と国家公務員の前に座ったことによって、私は大企業の営業マンだという彼の前に座ることになった。


営業マンらしく爽やかな笑顔を浮かべて清潔なスーツを着て座る彼はやっぱりすごく大人に見えた。


「なに飲む?メニューたくさんあるから、好きなの選んでね。」


国家公務員さんはそういいながらもさりげなく女子の好きそうなカクテルが載っているページを私たちに差し出した。


「私、カシオレで。」

「ファジーで。」


そのページを見ることもせず、梨絵と菜月は女子がすきそうなカクテルを選んだ。いつも3人で飲みに行くと大概ビールから頼むのに。


―――まったく。あざといなぁ。


「私も、ファジーで。」


そういいながらも、無難なカクテルを選んでしまう私はもっとあざといと思った。


飲み会はとても楽しく過ぎていった。


私達ゆとり世代より少し上の世代の彼らは、”草食男子”と呼ばれる同世代の男の子達よりずっと余裕があるように思えたし、何より安心感があった。私の前に座っている営業マンさんも飲み物が少なくなったらメニューを差し出してくれたり、私がトマトが好きという話をすればトマトのサラダを注文してくれたりと、紳士な対応をしてくれた。


この人はきっと私の望む幸せの形を実現してくれそうだと、私の中の直感がそう言っていた。


その代わり、もっともっと若かった頃に感じていた胸が躍るような感覚もなかったけど、それは自分が大人になってしまったせいだと思った。



「今日は当たりだったね。」


合コンの後、女子は今日の男性の評価をする。それは百発百中でそうだと思う。男子は自分たちの反省をしていることのほうが多いというのは本当だろうか。


さっきは飲めなかったビールを豪快に飲みながら、私たちはセオリー通り今日の評価をした。そんなに何回も合コンというものに行った事は無いけど、今日は本当に当たりだったと思う。


でも男女というものは難しい。当たりだからといって、これが恋になるかどうかは本当にまだまだ分からない。


「あ~ビール最高。」


少なくともこんな私たちを受け入れてくれる”普通の男性”が必要だと、あっという間に空いてしまったグラスを眺めて思ったのは、きっと私だけじゃない。


「そんなの愛じゃないよ。」


お昼の会社のテラス。たくさんのビルが立ち並ぶ中にあるちょっとした緑の空間を、私はとても気に入っている。ここでサンドイッチを食べているときだけは、私がこの都会の中で特別なOLになれているような、そんな気がする。


同僚の穣二は、私の定番ランチになりつつあるサンドイッチとコーヒーの時間をいつも邪魔する。そして穏やかなこの時間に似つかない熱いセリフを言った。


「美衣はどうしてそうなのかな。」


私より3つ下の穣二は小さい頃から大学時代までアメリカで育ったといういわゆる”帰国子女”で、この熱さも生意気さも、全てはそのせいだ。


「愛なんて、必要ないもん。」

「愛が必要ない人なんていないよ。」


穣二は穣二というより、ジョージだ。両親もそのつもりでその名前をつけたらしい。ゆとり世代のはずなのにその教育を受けてこなかった彼は、社内でもよく誰かと対立しているのに、持ち前の明るさと紳士さでとても人気者がだった。いつもなにかと邪魔をされながらもジョージを可愛がってしまっている私も、彼の魅力にやられている人間の一人だ。


「美衣は何も知らないんだね、きっと。」


日本人だけど中身はアメリカ人。英語と日本語、スペイン語を使いこなすハイスペック過ぎる彼には、きっと私の希望なんて分からない。


そんなちっぽけな自虐と一緒に、残っているコーヒーを飲み干した。


「そんなジョージはどうなのよ。」

「僕?」


背の高いジョージが背伸びをすると、本当に大きく感じる。その大きな背中の向こうに青すぎる空が見えて、その幸せな空を全部彼が独り占めしているように思えた。幸せの量というのは、人によって違うのかもしれない、と思った。


「僕は美衣に愛を教えてあげたい。」


笑顔で、でも真剣にいつもジョージはそんなことを言う。3つも年下のクセに。


「人の心配してないで、自分の愛みつけなさい。」


子ども扱いをして背中を押したけど、私のサンドイッチのごみを自然と片付けて持ってくれているジョージのほうが、どう考えても大人に感じて、少し短めの前髪を伸ばそうかと考えた。


後日、私は営業マンさん改め、立石恭祐(たていしきょうすけ)さんと2人でご飯に行くことになった。


たとえ誰であっても、ご飯に誘ってもらえることになんだか胸が躍った。その日はいつもルーティーンで着ている服ではなく、少し高めのワンピースを選んだ。スカートを履くことが無いわけじゃないけど、少し裾の広がった服を着ると、なんだかそれだけで女子になれた気がした。


「今日はなんだかいつもよりもっと可愛いね。」


そんな私に気づいたのは、やっぱりジョージだった。


いつものベンチに座ってサンドイッチを食べようとしている私に、どこから持ってきたか分からないブランケットをかけながらジョージは恥ずかしげも無く言った。


「分かる?今日、デートなの。」

「そうだと思った。」


少しあきれた顔をしながらジョージはバケットをかじった。ジョージが持っているだけでバケットもニューヨークっぽくみえる。


「どうかな、張り切りすぎてないかな。」

「ううん、とっても可愛いよ。」


素直に意見を言ってくれるジョージの意見は確かなものだと思った。私は自分の選択に間違いがなかったとホッとして、元気にサンドイッチをかじった。


「でも、いつもどおりの美衣の方が僕は好きだけどな。」


私の口の端についているマヨネーズをティッシュで拭きながらジョージは言った。


「いつもどおりの私?別に変わらないけど。」

「You don’t know why you’re beautiful.」

「意味わかんない。」


シュガーレスのコーヒーは思ったよりもずっと苦く感じられた。それも全部、ジョージの流暢過ぎる英語のせいだろう、と心でふっとため息をついた。


「美衣ちゃん。」


いつもより少し仕事を早く切り上げて帰る準備をする私に、少し納得のいかない顔で「楽しんでね。」というジョージに颯爽と手を振り会社を出ると、もう目の前に恭祐さんが待ってくれていた。


都会の喧騒の中でたくさん光るまぶしすぎるライトの中でも、恭祐さんはどこか光って見えた。長い間恋愛から離れてしまっていた私は、男の人に会社まで迎えに来てもらえることだけでもとても幸せで、今日一日の疲れも吹っ飛んでしまうようだった。


「ありがとうございます。」

「お礼なんていいよ、俺が来たかったんだから。」


なんだか本当にスマートだった。


私より少し長い間生きて、少し長い間社会人として働いている恭祐さんの余裕が、とても心地よく感じられた。


「トマト好きっていってたから、今日はイタリアンにしたけど、いいかな?」

「はい、大好きです。」


うそみたいに順調にことが進んでいた。マイナスポイントが一つもないようなエスコートにとても穏やかに、でも確かに私の胸は躍っていた。


「んじゃ、いこっか。」


自分では入れないようなフォークとナイフを使ってしまうようなお店にまた私の胸は躍った。それなりの幸せを求めている私でも、人より少し特別にあこがれたりもしていて、私が少し特別だと思うことをスマートにこなしてしまう特別感がすごくかっこよく思えた。


「料理はテキトーに頼んであるんだけど、お酒は何がいいかな?何でも飲める?」

「はい、大丈夫です。」


慣れない感じを押さえるのに必死な私に対して、恭祐さんはスムーズにことを進めて行った。自分が望んだ通りの展開が、少し怖くも感じられた。


「なんか店員さんのオススメ選んじゃったけど、ワイン大丈夫だった?」

「赤も白も好きです。」


運ばれてきたワインはとっても口当たりのいい白ワインで、のどが渇いていた私はそれを一気に飲んでしまいたいような衝動を抑えながらも上品になめるように飲んだ。


「うん、美味しいです。」

「ね、飲みやすいね。」


恭祐さんも同じことを感じてくれていたようで、たしなむようにワインを飲んだ。それからも大きなお皿に盛られてくる小さい美味しいご飯を食べながら、とても楽しく会話をした。


「美味しかった?」

「はい、とっても。」


料理は本当に美味しかった。こんなに美味しいものがこんなに少ししか盛られていないのが不思議に思えるほど美味しかった。でもなんとなくこんな雰囲気で食べるご飯は味気ないような気もして、いつも屋上で食べるコンビニのサンドイッチの方がよっぽど私には似合っていると思った。


「いこっか。」


恭祐さんはそういって、自然と私の手を取った。久々の男性のぬくもりに私の胸は高まった。そんな私の気持ちをしってか知らずか、彼は優しくふっと笑ってそのまま歩き出した。


――――東京は眠らない町だ。


街頭もろくに無いような田舎で育った私にとって、その言葉がとてもしっくりきた。こんな時間でも煌々ときらめく街頭や行きかう人々がみんないつもと違って見えるような気がした。もちろん気がするだけだけど、日常のちょっとこんなときめきを、幼い頃眠ってしまう町で私はずっと探していた。


「家まで送れなくてごめんね。」

「いいえ、全然大丈夫です。」


この後また少し会社に戻らなくてはいけないという恭祐さんは、私をタクシーに乗せてそう言った。むしろ家まで送ってもらって、「あがっていきますか?」なんて質問をした方がいいのか悩まずに済んで、ホッとしている自分がいた。


「じゃあ、また遊ぼうね。家についたら連絡して。」


そういって恭祐さんはタクシーの運転手さんに「よろしく」と一言伝えてドアを閉めてくれた。


「お姉ちゃん、あの人彼氏?いい男捕まえたね~。」

「へへへ。」


その時の私の顔は、きっと「へへへ」顔だった。こんなに幸せなことがあっていいのか、今まで溜め続けてきた貯金を全部使ってしまっているのではないか不安になってしまうほど幸せだった。


今も眠らないネオンの街を颯爽と走るタクシーの中で、私はもう恭祐さんにお礼のメッセージを作成し始めた。


「あ、この辺で。」


昔タクシーを使うのが贅沢だと思っていた頃は上手く説明できなかった家までの道が、どこからでもだいたい上手く説明できるようになったとき、私は自分が大人になったんだな、と感じる。


いつもタクシーを止めてもらう定位置について財布をだそうとすると、タクシーの運転手さんがニヤリと笑った。


「はい、これおつり。」


「おつり?」


その意味を理解するまで時間がかかっている私の手に運転手さんはおつりを握らせてドアを開けた。


「残った分でコーヒーでものんで、だってさ。本当にいい男つかまえたね。」


一週間くらい私の定番お昼ご飯を買えてしまうほどのおつりを見て、私はこの幸せの分自分に降り注ぐかもしれない不幸を思ってぞっとした。そうやって素直に自分の幸せを喜べないのも、不景気と呼ばれる時代しか知らない私たち世代の特徴なのかもしれない。


「思ってたよりナイスガイだね。」


何回も使い古したかのような茶色い紙袋に入ったちょっとおしゃれなバケットをかじりながらジョージは言った。私は昨日恭祐さんにもらったお金で買ったいつもよりちょっとリッチなサンドイッチをかじりながら得意げにうなずいた。


「はぁ。やっぱり大人って素敵。」

「でもそれは愛じゃなくて優越感だよ、美衣。」


またこの時間とサンドイッチには似つかないセリフをさらっとはきながら、ジョージは笑った。


「・・・愛なんて。」


そう、愛なんて。そんなものは必要なかった。いや、必要ないわけではなかったけど、私が求めていたものは少なくとも形の見えない不安定な愛なんてものではなく、確かに安心できる存在だった。


「可愛いなぁ、美衣は。」

「何それ。」


ジョージの本当に良く分からない言葉と一緒にほろ苦いコーヒーを飲み干した。


「玉山さん!」


ボーっとしている午後の私の目を覚ますのは、大概友永さんの半分ヒステリックな叫び声だ。


「はい。」

「このデータ午前中までにまとめてってゆったでしょ!言われたこともまともにできないの?」

「・・・すみません。」


そんなことを言われた覚えは無い。そういう時は大概友永さんが上司に言われていたことをやり忘れていたか、私の後輩に頼んだ仕事を私に頼んだのだと勘違いしているか、どちらかだ。ちらっと後輩の方を見てみるとしょんぼりして座っていたから、きっと今回は後者だ。


「どうするの!お客様3時には来ちゃうのよ!」

「それまでにまとめます。」

「2時半までにまとめて持って来て!じゃないと確認できないでしょ!」

「・・・はい。」


時計を見ると時計の針は1:45をさしていた。今にもここから逃げ出したいような気持ちになっていたけど、そんなことする度胸は無く、机に座ってパソコンとの格闘を始めた。でもこんなときに限ってパソコンは上手く動かない。


そんな機械的ないたずらにも負けず、無心でキーをたたき続けた私は、無事2:15にはデータをまとめ終わり、友永さんに持っていった。


「いい加減にしてよね。」

「すみませんでした。」


冷静に、でも確実に刺すように友永さんは言った。


部長の前では決して見せないから、部長が外回りから帰ってきて少し安心していた私だったけど、怒り方がより陰湿になっただけで状況はなにも変わらなかった。


「あと今日中にこれまとめといてくれる?月曜の朝一で必要なの。」


「・・・。」


今日中といって渡された資料は、私が退勤するまであと数時間の間にとてもまとめられるような量ではなかった。


「返事も出来ないの?」

「すみません。やっておきます。」


こんなとき、間違っていることは間違っている、と言えず頑張ってしまうところが、私のいいところであり、悪いところであると思う。


社会人として顔にも出さず、理不尽な要求に「はい。」と笑顔で言えることはきっと日本人としては正解の答えだけど、今の姿見たら小学生時代の私はなんていうのだろう。


「間違っていることは間違っている、と言いなさい」

と教えてくれた大人は、いつしか

「間違っていることをされても目をつぶりなさい」と言うようになった。


きっと私もこのまま、そういう”大人”になっていくんだろう。そう思うと思わず漏れてしまいそうなため息をぐっと飲み込んで、私は再びパソコンとの戦いを始めた。


「お疲れ様です。」


私のこの仕事を作る原因となった後輩は、退勤時間のチャイムと同時に席を立って行ってしまった。とてもいい子なのだけど、”報連相”が上手く出来ない。その上”察する”ことも苦手だから、何度もこうやって尻拭いをしてきた。いっそ悪い子なら思いっきり怒ってやれるのに、と後輩の背中を見送った。


「あれ?玉ちゃん金曜なのに帰らないの?」


そしてそれからも続々と華金とやらに心を燃やす”大人”たちが続々と帰る支度を始めた。


「まだ仕事残ってるので。お疲れ様です。」

「そう?若いんだから飲みに行かなきゃダメだよ?」

「はい、ありがとうございます。」


街が浮かれているのに、私だけはまだ半分も終わっていないデータたちと格闘をしている。


こんな状況があまりにも理不尽で自分が不憫に思えたこともあるけど、そんなことにももう慣れた。でもこれはきっと慣れてはいけないことだったんだと思う。気持ちを殺すと言うより、もう死んでしまったような気持ちでまだ気持ちが生きていた頃を思い出すと、なんだかまぶしくてかすんで見えた。


「How’s it going, honey?」


私の死んだ視界の中に、ホットコーヒーの匂いと甘いセリフが降ってきた。もう誰がそこにいるかなんて分かりきっていたけど、私は慎重に振り返ってみせた。


「ジョージ・・・なんで?」

「美衣が残業してるって聞いて、2人きりになれるチャンスだと思って。」


ジョージのいつもの冗談でさえもなんだか死んだ心を生き返らせてくれるように感じた。ジョージは私の横につまれた書類を見て、「こりゃひどい」と一言つぶやいた。


「まったく美衣はお人よしだな。こんなの今日中に出来ませんって言ったらいいのに。」

「そんなこと通用しないよ。」

「言ってみたことあるの?」


「ないけど・・・。」

「ないならやってみないと分からないじゃん。」


その通りだ。ジョージの言うことはとても正論だ。でも正論がいつも正しいとは限らない。それが社会というものだと、私は悟ってしまっている。


「それにさ、これ後輩ちゃんがしたミスなんでしょ?」

「なんで知ってるの?」

「美衣が残業してるときは大体そうだから。」


全てを見透かしたようにジョージは笑ってコーヒーを飲んだ。見透かされていることが少し恥ずかしいような、でもなんとなくうれしいような不思議な感覚になった。


「終わった~~~。」


格闘を終えた頃には時計の針は21時を回っていた。そんな時間まで一緒に戦ってくれたジョージも私の背伸びに合わせるように背伸びをした。


「Me, too. 美衣, too.」


ジョージのつまらないアメリカンジョークでさえも喜んで聞いてしまうほど、私は浮かれていた。今日も敵との戦いに勝った。私たちは日々戦っている戦士なのだと、心の中で思って少し笑った。


「ジョージ、本当にありがとう。」

「僕は美衣からのお礼が欲しくて手伝ったわけじゃないよ。」

「え?」


ジョージは驚く私にかばんを手渡した。その動きがあまりにもスムーズで違和感無くそれをうけとっている自分がいた。


「さ、行くよ。」

「どこに?」


その問いかけにジョージは笑うだけで、ちゃんとした答えはくれなかった。でも手伝ってくれた恩もあるから、私はだまってその背中を追った。ジョージとは座って話すことが多いからいつもあまり感じないけど、改めて追う背中はなんだかとても大きかった。


なのにジョージはヒールを履いた私の歩幅に合わせてくれてとても歩きやすかった。ジョージらしい優しさだなと思った。


「どうぞ。」


黙ってジョージについていってたどり着いたのは、日本にあるのになんとなく外国の香りがするバーだった。飲んでいるお客さんの7割は外人のお客さんで、店員さんも外人ばかりだった。そんな異空間の中、ジョージはジョージとは比べ物にならないくらい大きい黒人の店員さんとがっちりハグをして軽い挨拶を交わした。しばらくジョージと話した店員さんは私の方を見てニッコリ笑って手を差し出した。


「コンニチハ、My name is Kevin.」

「こんにちは、美衣です。」

「Me?」


外国人の方に自己紹介をすると定番で聞き返されるいつものくだりに、私はちょっと笑ってうなずいた。ジョージが「Me」じゃなくて「Mii」だと必死に説明してくれたけど、私は別にどっちだって良かった。何よりいつもそのネタでからかってくるジョージが、必死に説明しているのがちょっとおかしかった。


その後もしばらく3人で談笑した後、私たちは奥のテーブルに案内された。


「緊張する?」


ジョージは当たり前のように私の椅子をひきながら言った。慣れない対応に戸惑いながらも私はやっとの思いで一つうなずいた。


「今日は美衣の残業に付き合ったんだから、僕の夕飯とFridayに付き合ってもらおうとおもって。」

「そんなことでいいの?」

「そんなことって、一人でご飯食べる悲しさ、美衣は知ってるでしょ?」


私は一人でご飯を食べるのが嫌いじゃない。


誰にも邪魔されず、人の目なんて気にせずに好きなものを好きなだけ食べられるから、そんな時間もストレス発散の一部だ。でももちろん、誰かに話を聞いてもらいたい日だってある。今日はそんな日だった。


「美衣はビールでいいよね?食べ物は好きなもの頼んでいいよ、今日はFridayだから。」


意味の分からないことを言いながらジョージは私にメニューを渡してくれた。ジョージの前なら気軽にビールが飲める。手で持ってかぶりつかないと食べられないチキンだって食べられる。そう思って私はほんとに好きなものを好きなだけ頼んだ。


「相変わらず最高の飲みっぷりだよね。」


「ありがとう。」


ちょっとおしゃれなグラスに入っていたおしゃれな黄金の飲み物は、あっという間に私に吸収された。そして目の前に運ばれてくる何なのか良く分からないエスニックな食べ物も、私たちにキレイに吸収されていった。


ジョージはよく飲む、そして良く食べる。それは本当に見ていて気持ちが良くなるくらいだった。でも私もそれに負けないくらいよく飲むしよく食べる。たぶん始めてご飯を食べに行った人ならだれしも引かれてしまうほどだから、いつもは適度に飲んで食べるようにしている。


「美衣はその小さいからだのどこに食べ物がいってるのかな。」

「消化がいいの。」


とはいっても食べた分、体型にでないように食べるときには食べるし、食べないときには食べないという生活で何とか体型を保っている。それはほんとに何とかという感じで、気を抜いたらきっと見る影も無い体型になってしまうと思う。


「食べっぷりも飲みっぷりもいいけど、全部キレイだから見てて気持ちいいね。」


それは私がいつもジョージに感じていることだった。私たちは本当に似ている。だからこうやってベストフレンドでいられるのかもしれない。


「もっと言いたいこといって、したいようにしたらそんなに食べなくて済むんじゃない?」


しばらくご飯を堪能したあと、何杯目になるか分からないビールを飲みながらジョージは言った。


「食べたいから、食べてるんだよ。」

「でも、それだけじゃないでしょ?」


ジョージの言うとおりだった。もちろん食べたくて食べているのはそうだけど、私がこうやってご飯を食べるのは決まってストレスがたまった日だった。食べたり飲んだりすることが、私の唯一の癒しだった。


「でも社会人だし。」

「間違ってることは間違ってるって言わないと、ずっとあの調子だよ。」


昔大人が教えてくれた通りに、ジョージは言った。ひねくれることなくまっすぐ育ってきて、いい意味で人に合わせることなく生きてきた彼は私にはまぶしすぎた。


そんな彼のまぶしすぎるセリフに何も言えなくなった私を見て、ジョージはとても悲しそうな目をした。


「美衣は優しすぎる。」

「そうじゃないよ・・・。」


きっとそうじゃない。ただ、臆病なだけだ。


これ以上考えると余計に惨めになってしまう気がして、考えるのをやめてビールをまたのどに流し込んだ。


「ごちそう様。」

「こちらこそ、最高のFridayをごちそう様。」


遠慮もなく食べるだけ食べて飲むだけ飲んだ上、3つも年下のジョージにおごってもらっておいて、それでも遠慮なく振舞う私に、ジョージは気持ちいいくらいにすがすがしく言った。なんだそれ、と思いながら、体の中にたまった悪い空気をスッと抜くように、私は笑った。


「美衣、夢ってないの?」


「夢?」


タクシー乗り場まで2人で向かっている時、歌うように踊るように歩きながら、ジョージは楽しそうに聞いた。


そんな質問、いつ振りにされただろう。


昔はよく自分の夢を書きなさいなんていう作文を書いて、それを発表するだびほめられたり、激励されたりしたけど、いつしか夢を語るだけのことにハードルができてしまった。


「特に、ないかな。」


それはハードルが高くていえなかったんじゃなくて、本当に特になかったから出た言葉だった。私はこれからどうなっていくんだろう。そんなこと考えただけで目の前が見えなくなってしまいそうで、働きかけた思考回路を一度閉ざした。


「特にないなんてないでしょ。なりたいものとか、したいこととかないの?」


ジョージはいつも開けたくない箱を開けろと言う。ずっと目をそらしていられるならそうしておきたいけど、いつか見なければいけないことも知っているから余計にフタをしておきたいのに、それを見ろといってくるのがこの人だ。


「ジョージの夢は?」


そんな彼に最初はとまどったけど、今はこうやって上手くかわすことが出来る。もっともジョージは私がかわしていることにも気づいているようだったけど。


「僕の夢?それはもちろん美衣。」


本当に意味が分からなかった。


いつも基本的に突拍子もないことを言うけど、こればっかりは本当に意味が分からないと思った。そう思って目を丸くしている私を知ってかしらずか、ジョージはふんわり笑って私の頭に手を置いた。


「いつか、美衣の夢になりたい。」


男の人の精神年齢は女より低いというけれど、ジョージの精神年齢は時にとっても高くなる。普段は本当に素直で小学生みたいに思えることもあったけど、こんなときは私なんかが手が届かないくらい大人に見えた。


冷静に客観的にいつも物事を分析しているけど、ジョージだけは上手く読めなかった。そもそも日本人という枠に収まらない彼を読むというのは無理なのかもしれない。彼は本当に”特別な人”だと思った。


休日を早送りしているのは一体どこの誰なのだろう。


友達とランチに行ったり、時には大好きな旅行に行ったり、ただ家でボーっとしてみたり。休日の過ごし方にはたくさん種類があるけど、過ぎていく時間の速さはいつも変わらず早かった。


いつか誰かにそんなことを言ってみたら、「平日が5日あるのに、休日は2日しかないから早いのは当たり前だ。」と言われたことを思い出すけど、それにしても早すぎると思う。


「ニャー。」


どんなに忙しくても疲れていても、朝は少し早く起きてゆっくりすることにしている。


早起きが得意な方では決してないけど、それでも朝のコーヒーとこの子との時間を過ごさなければなんとなく仕事に入る気持ちが作れなかった。


もっとも、この時間を経たとしてもみなぎるような気持ちが涌いてくるわけではないのだけれど。


田舎のさびた学生だった私が、大都会に出てきてこうやって街の人口と同じくらいの人が乗っているのではないかと思うほどの電車に乗っている。たまにそれを考えただけで不思議になる。


あの頃の私がみたらきっと今の私をうらやましがるだろう。でも、私は昔川で無邪気に遊んでいた頃の私の方がよっぽどうらやましかったし、よっぽど人間らしかったと思う。


「玉山さん!」


たまに自分の苗字がいやになることがある。こうやって友永さんの甲高い声で何度も何度も呼ばれるくらいなら、名前なんて要らないとさえ思う。でも20年以上この名前で生きてきた私は、無条件にその声に反応して歯切れよく返事をしてしまう。


「ねぇ、またお客様から伝票間違ってるって連絡きたけど。あなたちゃんと小南さん指導してるの?」

「すみません。」

「たまにはすみません以外の事いえないの?」


また、後輩ちゃんがなにかをやらかしたようだった。


彼女はいわれた仕事を本当に忠実にこなそうとしてくれるけど、キャパがいっぱいになるとこうやってミスをする。いつも尻拭いをするのは私で、修正をするのも私だ。


前は指導をしようとしたこともある。でも一度一緒に飲みに行った時、


「ミスすると一週間引きずっちゃうんですよね。」


なんて言われたものだから、なんだか言いづらくなってしまった。


私よりもっと田舎の出身で、大学に行くこともなくいきなり社会にでた彼女を、私はなんとなく妹のように思っていて、穢れのない綺麗なこの子を守ってあげたいと変な正義感があった。


「・・・よし。」


物語に出てくるスーパーヒーローになんてなれないけど、この子にとってちょっと尊敬できる先輩くらいにはなれるのかもしれない。そんな気持ちで必死にパソコンをたたいた。


「それじゃ、そこの子のためにならないじゃん。」


ジョージはまたごもっともなことを言った。


私は冷たくなってきた風にそのごもっともな話を乗せてどこかに送った。


「もう、不器用だなあ。」


本当にそうだと思う。でも私はどっちかというと器用貧乏の方だ。


自慢できるほどではないけれど、頼まれたことはなんとなくそつなくこなす。


人より飛びぬけて出来るわけではないけれど、本当にそつない程度にこなす。そんな雰囲気をわかってか、なんとなく頼まれることが増えて、どんどんやることが増えた。でも忙しいことは悪いことではないと思う。頼まれると言うことは、必要とされているということで、必要とされなくなったら人は終わりだ。


不景気、就職難、就活の厳しさを超えてきている私たちは、必要とされなくなることに、とても敏感なのかもしれない。


「幸せなんだよ、きっと。」


ここにいていいといわれることは、きっと幸せなんだよ。ホットコーヒーも、私にそういっている気がした。


「でも、美衣がつぶれてしまうのを僕は見たくないんだけど。」

「つぶれないよ。」


たまに本当に泣きたくなってしまうこともあるけど、そんなときも絶対友永さんの前では泣かなかった。なんか悔しいから。


でも不幸を発散しておかないと破裂してしまうから、そんな日は鉄板で泣けるDVDを1人で見て、家で思いっきり泣くことにしている。そんなことで上手くそつなくこなしていけるから、きっと私はつぶれないという自信があった。


「ま、僕がつぶさないけどね。」


ブラックのコーヒーが甘く感じるのは、この人のせいだろうか。得意げに笑う彼の顔を見ていつもどおり飽きれていると、私の普段は滅多にならない携帯が震えた。


「あ、恭祐さん。」


夕ご飯に行って以来、連絡は取っていたけど会ってはいない恭祐さんから連絡が来た。週末のドライブのお誘いだった。


「わ~い。」


こんな何気ない日常の中にもなんとなくこうやってときめける出来事もあると知ってるから、私たちは生きているのかもしれない。胸が躍っている間はなんだかそんなポジティブな考えが浮かんだ。


「いい事あった?」

「久しぶりにデートに誘われたの。」

「僕とこの間したじゃん。」


不服そうに言うジョージにいたずらに舌を出して、私はにやついた顔を抑えることなくもちろんオッケーの連絡を返した。


「本当にチャーミングだね、美衣は。他の男にしてるのが本当にむかつくけど。」

「へへ~。」


なんだか今日はサンドイッチが美味しい。冷たい風も心地よく感じられる。幸せだ。






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