キアズマハイビーム!

@theBlueField

序 『和』の再登板 ~『令』の書体と発音は~

 れは、まるで要塞の様だった。

 幼きずま逗雅ずあは、いまかつて無い寸法サイズ感のぎょうなるコンクリートの怪物モンスターが隣町に出没し、日に日に建造されてゆく光景を、ただ眺めている事しか出来なかったのだ。



 あき名葵亜なきあは、きしむ音、と云うのが嫌いだ。

 サビ等にる潤滑性能の低下で鳴る音が、どうも其の物体が発している悲鳴アラートの様に聴こえてしまうのだ。

 痛いよぅ、辛いよぅ、滑らかにしてくれよぅ――。

 そう云った悲鳴を耳にすると、葵亜は常にげている腰袋の中から赤いスプレー缶を取り出す。黒いキャップを外し、ピンポイントを狙う為、キャップに付属している赤く細いストローを噴射口にじ込み、其処に噴霧する。すると、まるで魔法の様に悲鳴が止むのだ。

 葵亜は、の瞬間が好きだ。

 呉工業クレのCRC5‐56を噴霧した途端、其の潤滑能力のおかげで、耳鳴りの様な音が収まる。幼い頃、祖父が使っているのを眼にした其の時から、葵亜の脳内ではCRC最強万能説が確立していた。

 そして今日も、葵亜は街を行く間、悲鳴を耳にしては「お節介かな?」と心の片隅で思いつつ、腰袋から自前のCRCを取り出すのだ。



NEXT……1 日陰かげをひなたに ①根深き2市の確執フュード

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