第39話 ギルドマスターに説明しに、異世界へ
鬼のようなレノに正座させられ、全てを包み隠さず言わされ、説教が始まる。その間、リーとポチはガンズローゼズの4人が乗ってきた馬の手入れをしてやっていた。どの馬もリーのバブルショットが直撃していたわけではなく、驚いてこけただけだったようだ。どの馬もリーとポチに気持ちよさそうに撫でられていた。
(俺もあっちに行きたいなぁ)
そんなことを考えているとレノから雷が落ちてくる。いや、火が落ちてきた。蓮人のすぐ横の草が焦げて灰になった。
「ちゃんと聞いてくださいね?」
語尾にハートが付きそうな声だが、目は全く笑っていない。
「は、はい!」
蓮人はそんな返事しかすることが出来ずしっかりレノの説教を聞くのだった。
しかし、レノの魔法の腕はとんでもなさそうだ。
レノの話はその後
「続きはガサラに戻ってギルドマスターにも叱っていただきます」
そんな言葉と共に終わった。まだ続くのかとうんざりしながらもとりあえずは終わったことに安堵してリー達の方に行く。
「お疲れ様です、蓮人さん」
リーから労いの言葉がかけられる。なんでリーとポチは怒られないんだという思いは心の奥に閉まっておく。
「とりあえず、早く帰ろうか」
「あ、それなんですけど、この馬に乗って帰りませんか? 4頭とも元気なので1人1頭乗って帰れるんですけど」
確かに馬に乗ればすぐに帰ることが出来るだろう。ただ1つ問題がある。それは蓮人が馬に乗ることができるかどうかである。日本では乗馬する機会などそうそうなく乗れる人の方が少ないだろう。
馬に乗っていくと勝手に決まっても困るので正直に白状する。
「でも俺、馬乗ったことないんだよね」
「それなら大丈夫です、私に任せてください!」
リーはやる気満々だ。
「よろしくお願いします!」
そう言って乗馬体験会が始まった。
リーの指導のおかげか、全力ダッシュは無理だが、軽く走る程度には乗れるようにはなった。
かかった時間は1時間程なのだが、ポチはレノに膝枕をしてもらいながら昼寝をしていた。
(羨ましい)
蓮人はダメだダメだと急いで首を振り、そのままポチを起こしに行く。
「ポチ、起きろ。そろそろ帰るぞ」
そう言ってほっぺたをムニムニしてやる。それにレノも混ざってくる。
ポチはそれに耐えきれず起きてきたがまだまだ寝ぼけているようだ。
「ポチちゃん、早く帰りましょ」
そう言ってリーは水を生み出してそれでポチの顔を洗ってやっていた。お母さんみたいだ。
そんなことは口にしないが。
なされるがままのポチは顔を洗われてやっと目を覚ましたようだ。
「お腹空いた! 早く帰ろう!」
そう言ってもう馬に乗っていた。気が早い。
「じゃあ早く帰ろうか」
他の面々も馬に乗り、ガサラに向けて馬を走らせる。
そんなこんなでお昼を過ぎおやつの時間になった頃、蓮人達4人の姿はガサラのギルドマスターの部屋にあった。出発前と同じようにギルドマスターの前に並んで座っている。
「じゃあ、とりあえず報告を聞こうか」
「無事ワーウルフの討伐を達成し、レノからも合格を頂きました! ではBランクに昇格して貰いに行くので、それでは!」
そう言って蓮人はその部屋を出ようとするのだが、素早く鬼の形相のレノに腕を掴まれる。
「まだ大事なこと報告してませんよね?」
蓮人はレノのこめかみに青筋が浮いてピクピクしているように見えた。
再び席に座らされ、報告させられる。
「討伐を終えたあとガンズローゼズの幹部のフェラーに襲撃され、無事撃退に成功しました」
出来るだけ何事でもないかのように言ったのだが、勿論ギルドマスターには驚かれた。
レノがそれに補足して説明し始めたので、この襲撃が始めてではなく3度目だということも、ギルドに報告しなかったことも全部バレた。
「ほう、なんで言わなかったんだい?」
レノの反応と同じように鬼のような形相で指をポキポキと鳴らしながらそう言う。レノよりも迫力があってより怖い。
それに返事を返すことなく黙っていると、ハアとため息が聞こえた後
「……それはまあいいよ、次は見逃さないけどね。
それでなぜ襲われているのか分かってるのかい?」
「やっぱりポチのことを知ってだと思う。ポチは森に暮らしていた頃の記憶がなく、気付けばこの街にいたみたいなんだ。
俺はガンズローゼズがポチの正体に気づいて捕まえてきたんだと思う。それで何かがあってポチが逃げ出したんだと思う」
「それにあんた達が何人も倒しちゃったし、組織のメンツ的にも放っておかないだろうね」
それには全員が同意した。
「とりあえずBランク昇格試験は合格で、嘆きの森への立ち入り許可は出してやるが絶対気を抜くなよ。間違いなくガンズローゼズが襲って来ると思え。そしてポチを親のところへ返して、蓮人とリーも必ず帰って来るんだよ、いいね!」
ギルドマスターの激励に3人は決意を込めて頷くのだった。
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