第19話 パーティー申請に、異世界へ

 「れーんーとーさん! 早く起きてください! 今日はパーティー登録してお祭りに行くんじゃないんですか!」


 今日も今日とてリーにゆすり起される蓮人である。


「うーん……。おはよう」


 目をこすりながらベッドから体を起こす。蓮人は朝にかなり弱いのである。


「もう! 遅いですよ!」


 先に下に降りてますねと寝ぼけている蓮人にそう言って部屋を出る。

ドアを閉める間際に、二度寝しないでくださいと釘を刺して下に降りて行った。


(日本に居た時も、よくドアをドンドン叩かれて起こされてたなぁ)


そこで蓮人は頭にモヤがかかったかのように思い出せない記憶があることに気づく。


(……毎日ドアを叩いて起こしてたやつって誰だ?)


 思い出そうと必死に頭をフル回転させるが、どうしてもその人物についてだけは朧気にしか思い出すことが出来ず、顔も思い出せないのだった。


(まあ、所詮日本のことだし、もういいか)


 二度と日本に戻ることは出来ないのだ。

 今更思い出したところで寂しくなるだけかもしれないと思った蓮人は考えるのをやめて、リーが待っている下に降りていくのだった。







 蓮人とリーは朝食を食べたあと、そのままギルドに向かう。


「パーティー申請もレノに言えばやってもらえるよな」


「はい。とてもビックリしそうですね」


 ふふっと笑ってリーはそう言う。


「なんでだ?」


「だって、仲間だなんだって言っておいてパーティーは組んでなかったわけですからね。順序がおかしいですよ」


 納得した顔をして頷く蓮人。


 たくさんの人で賑わっている道をはぐれないように歩いていく2人。そしてギルドに着いた。

 中には依頼を受けに来たりしているはずの冒険者達がほとんど居らず、暇そうなギルド職員がカウンターに座っているだけだった。

 蓮人とリーはギルドの中に入っただけで注目を浴びる。そしてレノからすぐに声がかけられた。


「蓮人さん、リーさん、こちらですよ!」


 カウンターの中で立ち上がりこちらにブンブンと手を振っている。やっと暇でなくなると嬉しそうである。


「今日はどんなご要件ですか?」


 蓮人とリーが近づくとすぐにそんな話が振られる。


「パーティー申請をしようと思ってな」


 蓮人とリーは顔を見合わせ、代表して蓮人がそう言う。


「どなたのですか?」


 レノは誰をパーティー登録するのか分かっていないようだ。予想通りの展開に蓮人とリーは思わず笑ってしまう。


「なんで笑ってるんですか!」


 レノは仲間外れにされたことに少しムスッとする。


「いや、あまりにも予想通り過ぎたからさ」


 笑いながらそう言う。


「私と蓮人さんのパーティー登録をして欲しいのです!」


 リーが満面の笑みを浮かべてそう言うのに対し、レノは理解出来ないかのような顔をしている。


「お二人はまだパーティーを組んでなかったんですか?」


「うん」


 蓮人の即答に驚くレノ。信じられない顔をしている。


「思い込みってのは怖いもんだな」


 あっさりとそう言う蓮人。それに対してレノは呆れた顔をしながら


「蓮人さんに驚くのが間違いでした。そんな気がします。で、パーティー名はなんですか?」


 そんな風に諦めて、しっかりと仕事モードに切り替わった。さすがギルド職員だけのことはある。


「ホワイトストライプスだ」


 蓮人は誇らしそうに、リーはニコニコしている。


「その名前なら他に存在していないパーティー名なので大丈夫ですね。ではギルドカードを出してください」


 その言葉に従って、蓮人とリーはギルドカードを差し出す。

レノはギルドカードになにやらペンで書き込んであるようである。


「はい、出来ました!」


 ギルドカードが返却される。裏面の所属パーティーの欄に『ホワイトストライプス』と記されているのだった。


「あと、ゴブリンの群れの討伐の報酬なのですが、蓮人さんとリーさんは一応道案内という個人依頼だったのでギルドマスターから報酬が支払われることになるのですが、こちらで預かっております。その報酬はCランクアップと5万ゴールドになりました」


 ギルドカードの表面には名前の横にCランクと記されていた。それと袋に入った5万ゴールドが渡される。

 リーはCランクになったことにかなり驚いているようだ。固まっている。


「どうした? 嬉しくないのか?」


 蓮人はリーの目の前で手をヒラヒラさせながらそう尋ねる。

 はっと我に返ってきたリー。


「Cランクといえば、腕利きと言われてもおかしくないんですよ! それにたった5日でなれるなんて……」


 信じられないといった顔をしている。

 そんなリーにレノもうんうんと頷いている。


「私も同じ気持ちです。ですが蓮人さんですので、何も不思議ではないです。そう思ってしまうのが間違いなのです」


 どこか悟ったような顔をしているレノ。

 レノとはまだ出会って3日とかだよ?と言ってやりたくなったが、そこはぐっと堪えたのであった。

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