日本国現報善悪霊異記の第2話について
《対象読者》
万葉仮名に興味のある人、もしくは、上代特殊仮名遣いを疑っている人.
《推理》
「日本国現報善悪霊異記」の第2話「狐を妻として子を生ま令むる縁」の中の一つの文章『成野干登籠上而居』の意味を推理してみます.
まず、第2話の粗筋を示します.
或る男が或る女と出逢って結婚した.
実は、妻は狐が化けた女であった.
飼い犬が咬もうとして吠えたので、妻は何かに変身した.
それを見ていた夫は、毎日来い、一緒に寝ようと言った.
それで、妻は毎日「来つ寝」たので、狐のことをキツネと言うようになった.
粗筋は大体こんな感じです.
ここで妻が「何かに変身した」と書きましたが、原文は『成野干登籠上而居』です.
この原文の意味は、参考文献を読んでも好く分かりません.そこで自分で推理してみる事にしました.
取りあえず、『成野干登籠上而居』を読み下します.
● 野干に成りて籠の上に登りて而して居る.
狐が変身して「野干」に成ったわけですが、「野干」は普通に読んで「のびる(野蒜)」と読めるので、表の意味は野蒜と云う事にしておきます.
さらに「野干」は音読みで「やかん(夜間)」と読めるので、裏の意味は夜間と云う事にしておきます.
また、籠を解字すると竹冠に龍です. すると、「籠上」とは、龍の上にある部首の「たけ(竹)」と解釈できます.
「成」と「登」と「而」は無視できると仮定します.すると、『成野干登籠上而居』は「夜間竹居(やかんだけいる)」と云う意味に解釈できます.
そうであれば、夫は「(夜間だけ居るのなら)一緒に寝よう」と言っていた事になります.
そして、犬が吠えたと云う文章の「犬」は「いぬ(往ぬ、去ぬ)=帰れ」と解釈できます.
纏めますと、狐に対して犬が吠えるのは「帰れ」の比喩で、それに対して「夜間だけ居る」と妻の狐が答えて、夫がそれなら一緒に寝ようと言ったので、妻は毎日「来つ寝」る、と言ったから「狐」は「きつね」と呼ぶようになったと云うわけです.
霊異記の読者に『成野干登籠上而居』という謎々を出して、謎解きをさせているのだと推理します.
(了)
―― あとがき ――
日本国現報善悪霊異記の第2話について
著者:茜町春彦
投稿サイト「パブー」で公開した作品です.こちらに移植しました.
初出:
「リトルプレス小豆A4」2013年10月13日発行
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