第8話 王宮へ向かう

外の世界は僕が想像していた童話のような、RPGのような仮想世界とは違い、映画で見たようなカリフォルニアやマンチェスターの片田舎のような感じでちょっと拍子抜けした。現実世界と違うのは自動車は走っていない。馬車が走っているので道は舗装されておらず、汚い話だが馬糞が道端に落ちており、昔はこういう感じだったのだろうと想像できる。


僕の勝手な予想だが、魔法使いや守護神がいる世の中で科学が発達することの必要性がないことがもう一つの世界と根本的に違うのでは?と思う。所謂いわゆる必要は発明の母というやつである。


ただ、ここグランアンジェはとても穏やかな国であることは間違いない。歩いていても柔らかな日差しで田園風景が広がる。沢山の人が農業に従事している。こんな穏やかな国で、なぜクレアさんは連れて行かれたのだろう?


僕は偶然、道端にいた農家のおばさんに旅行者と名乗ってこの国のことを聞き出してみた。


グランアンジェは王宮がここから北にあり、この国にはとても素晴らしい軍隊があるのだが、最近、隣のエルドラ王国と政治的理由で仲が悪く、いずれ戦争になるのでは?との噂もあるらしい。魔法使いの話題は特に出なかった。みんなは知らないようだ。僕はおばさんにお礼を言うと、グランアンジェ王宮がある北の方角に歩き始めた。ミカちゃんは王宮はあまり知らないというので、カプセルの中に入ってもらってとにかく僕は歩いた。坂道や山道はなく、平坦な道を二時間ほど歩いただろうか。道の先に大きな建物らしい物が見えてきた。


僕はミカちゃんをカプセルから出してあげた。ポンッと煙の中からミカがあらわれる。

「ちょっと休憩してクッキー食べようか?」

「うん。食べる食べる!」ミカちゃんは喜んでクッキーを頬張った。


すると僕等のすぐ横を黒い馬に乗った同い年くらいの黒髪の青年がすごい速さで王宮の方角へ走り去った。


「あの人も王宮か城下町に行くのかなあ。」

僕達はしばらく休憩した後、またミカちゃんをカプセルに入れて歩き出した。

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