「KAC」カクヨム4周年記念選手権~Kakuyomu 4rd Anniversary Championship~個人的振り返り その2



「カクヨム4周年記念選手権~Kakuyomu 4rd Anniversary Championship~」

 KACを振り返るエッセイ その2


 前頁に重ねてのご案内となりますが。

 

 作家様方には、勝手にお名前を拝借することになります。通知の範囲、紹介の対象を相互フォローの方に限定させていただき、投稿通知をもってお知らせに代えさせていただきます。不都合不利益があると感じられた記事つきましては、コメントにてお知らせいただければ可能な限り速やかに、当該紹介項目を削除いたします。削除結果についてご納得いただけたなら、コメントを削除ください。


以下、順不同にて、失礼いたします。


【KAC20205】ブライダル・ハプニング!?/月葉蘭 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894630291


※感想を書いている時の私的BGM

『The Sound of Silence』以外 今日は『翼をください』


『どんでん返し』というテーマを

「物語のラストで、すべてをひっくり返すような意外な結末」

と解釈して書かれた作品は色々とありましたが、本作は「どんでん返しの後」を読ませるお話でした。

 世の中にはいろんな逆転劇があります。スポーツなんかは身近でしょう。終了間際の逆転なんてドラマチックです。そしてロスタイムにゴールに飛び込んだボールで、四年間の戦いが無に帰すこともある。そらもう、日本中が絶望感に蹴落とされるような衝撃です。

 とはいえ。歴史に残る名勝負であれ、次の日には次の試合があります。いや、完全犯罪を企む犯罪者とそれを解き明かす名探偵が対決し、どんでん返しの末に事件が解決したとして、やはり犯人と名探偵にもそれぞれに次の日はやってくる。


 本作の主人公は人生最高の幸せから、一転人生最悪の立場へと転がり落ちます。まさに満身創痍、塗炭の苦しみです。そこから臥薪嘗胆、自分を陥れた連中に復讐して……なんてのが、最近ネットではやっておりますが、そっちにはいきません。

 息をするのも苦しい。生きているので精一杯。もしかしたら画面の外で助けてくれる友達や家族がいたのかもしれないけれど、読者の視界には誰も入ってこない。彼女はまるで傷ついた動物が静かに体力を回復するかのように息をひそめ、やがて、一筋の光明を掴んでゆっくりと立ち上がる。


 人生最悪の「どんでん返し」の後であろうと、わたしの人生は続いているのだ。――と力強く歌い上げるように。


 生きている限り毎日はけして平たんではない。歩いていくからには何かに直面する。そこを越えても、次の困難が立ちふさがる。それでも、私は歩いていくんだ。

 この作者さんのお話にはそんな当たり前の強さと明るさがあって、読みに行くたびに力づけられます。

 

 今回も、よいお話を書いてくださって、ありがとうございました。




種も仕掛けも内容もありません/坂井令和(れいな) 様https://kakuyomu.jp/works/1177354054894590665


※感想を書いている時の私的BGM

『浪速恋しぐれ』 『The Entertainer  8 Bit アレンジ版』


 最初の一行を読んで、がーっ読んで「ちくしょー ああ苦しい 面白かった」なんて言ってしまうお話ばかり書く方。いや、面白い人は他にもいっぱいいる。この人が凄いのはリズムとノリの「ライブ感」なのです。

 

 どっかで聞いたことのあるような気がする名前のマジシャンが二人。今日も舞台に立っている。お客を楽しませてるのだが、突然色んな意味で大コケして、ショーの世界から去らねばならなくなった。

 慣れない仕事への転職。居心地はいいけど今ひとつ頼りにならない感じのある会社。それなりにうまくやってたけど、やっぱり二人はエンターテナーなのだ。再び舞台の世界に舞い戻る。

 ――そんなどっかで聞いたことのあるような気がする変な名前の、でもいいコンビの二人が七転八倒で最後はちゃんと起きて、またこけるまでを息をつかせぬテンポとノリで突っ走るお話なのです。

 読んである間の、体感時間が短いのなんの。

 何の根拠もないけど「この人、もしかしたら最初から最後まで息止めて書いてるんじゃないか?」などと変な心配をしたくなる。


 ホントにいいお話でした。ありがとうございました。


 あと、個人的にすっごい語りたい話もあるんだけど! ものすっごいずっと話してたい話があるんだけど! でもその話をここで始めちゃうと、ほぼKACと関係ない話になっちゃうから! でも、それでもっ! 私はおやじさんと飲みに行きたい。いや仕事が終わって次の日が休みの事務所で、昔のプロレスの録画(VHS)みながら、薄くてかたくて、水っぽいメキシコのビールをラッパ飲みして、懐かしい話をいっぱいしたい! マスクなかったら貸すぞ。うちにあるのは昔宴会用にヤフオクで買ったウルティモ・ドラゴンのレプリカだけど!

 …………ああ、結局脱線した。




天国のあなたに会える喫茶店/響ぴあの 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894486924


※感想を書いている時の私的BGM

『 you  ―Vocal Version― 』


 不思議な喫茶店を舞台とした、不思議な「一期一会」。


 一通の手紙。それは届く宛のない、手紙である。


 だがそれが、ある奇跡のために必要な『鍵』でもあった。

 彼は手紙を読み確認して、許可を与え、アドヴァイスする。

「一時的な快楽にしかなりませんし、今は変わりませんよ」

――と。

 驚くと同時に、すとんと腑に落ちる、ラストシーンが訪れて、

「そうだった。これって『どんでん返し』だっけ」なんて、つぶやくことになる。

………


 とにかく。前半の手紙の情報量が凄い。これは細かいとか丁寧という意味ではない。ボリュームは勿論ある。だがそういう意味ではない。人の死と別れに接し、心のうちに沸き起こってくる複雑で処理しがたい感情を、やさしく静かな語り口で淡々と積み上げてゆく。それがその文章に接する者の、それこそ胸の奥に達するほどのリアルでもって迫ってくるということだ。

 当然だ。人の死とは「悲しい」とか「寂しい」という単語で処理できるものではない。そこを敢えて真正面から向き合った上で、届けようという確固たる意志を持って綴られた文章だからこそ、その悲しみの範囲の外にいる人間にまで「揺らぎ」が(ごく一部であるにせよ)届くのだ。

 まず、これを書ききった作者の覚悟に敬意を表したい。


 ただ、ここで問題となるのが体験を下敷きにするからこその鮮烈さと重さだ。

 むき出しな感情でなく、制御され彫琢された読みやすい文章になっているものの、それがそのままに示されたのなら、その重さによみびとたちは耐えられない。自分自身を守るために、敬して遠ざけることになる。

 それはあまりにもったいない。


 だからこその後半。

 整えられた、少し不思議な風景を構築して、すべるようなソフトランディングで物語を着地させた。

 それでこの手紙は、ようやく、心の中に何かを残す『物語』になった。


 だから、わたしはこのお話に関しては。むしろ最初の覚悟よりも、最後の心遣いを評価したい。


 近く、身近な者を見送った経験を持つものとして、自分自身の大切な記憶をこうして何かをつたえるための文章にしてくれたこと。伝えようとしてくださったその思いに共感し、また感謝します。



 

KAC感想文 了

(感想文は終了ですが。明日もう一度 更新予定です。)



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