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こうなったらまずは向井さんを片付けるか。櫻井さんにはまかり間違ってもかなわない。としたら、甲乙さんが動物たちを逃がし終えて逃げていることに賭けるしかない。
何が起こったのか分からず、受け身を取り終わった体勢でキョトンとしている櫻井は無視し、べちゃってなってる向井の腕を素早く後ろ手に縛り上げた。背中を踏んづける。
「おい、何やってんだよこれ。やめろよ!」
「ダメです。もう騙されませんよ!」
噛みつく向井の背中を足で踏んづけて素早く縛り上げて転がした。
「……ええと、朝倉さん、何してるんですか?」
向井と湖を交互に見て訝しむ。
「もう騙されません! そんな、何も知りません風ふかせてるけど、ぜーんぶ聞きましたよあんたたちのこと! ここを管理していることも、動物を盗んでいたこともね!」
「いや、ぜんぜん意味分かんないですわ。それ、誰に聞いたんですか?」
櫻井が頭をかき、バタつく向井の背に足を置いている湖は力強く踏んづけた。グエッと蛙が鳴くような音が向井の口から出る。
「甲乙さんに、ぜーんぶ聞きました」
「あいつ……やっぱり」
櫻井は険しい顔になり、ひとつため息をついた。
「朝倉さん、甲乙にハメられてますわ」
「この期に及んでまだそんなことを」
「俺ら、飲み物になんか仕掛けられて眠らされてたんですわ、たぶん。気づいたらソファーの後ろに転がされてましたからね」
「……ソファーの後ろに?」
確かにあのとき事務所には誰もいなかった。いなかったのは、ソファーの後ろに転がされていたからだというのか。
「おい! 早く取れよこれ!」
向井がなんとか湖の足から逃れようと懲りずにじたばたしながら怒っている。湖は今一度踏んづける。
「でも、そんなことってない。ここは、お二人が管理している小屋なんですよね! そうですよね?」
「それも違いますよって俺ら言いませんでしたっけ? そんなに信じてもらえないなら、そこ、見てもらっていいですか」
櫻井は入り口の横にかけてあるボードを指差した。構えは解かずに目だけでそっちを向く。
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