・・・

 からっからの喉に無理やり唾を流し込むように飲み込んだ。

「今気づきました出雲さん。高宮さん、生きてないです」

「今頃気づくなんてほんとに君って際限なくあれだよね。あれってわかるでしょ?」

「ことば、濁してくださってほんとありがとうございます。私、今全身に鳥肌総毛立ちです」

 最後まで言わないうちに、高宮の方を指さした。そして、そこに目をやれば無数の霊が纏わりついていた。


「こいつらが高宮さんの魂を乗っ取ろうとしてるやつ。彼女、自分が死んだことに気づいてないから」

 呆然と立ち尽くす高宮は、口をぱくぱくと開けたり閉じたりしていた。

 自分の体を触って確かめて、『死んでない』ことを自覚しようとしている。

「高宮君、昨日君は何をしたのか覚えてるかな?」

「昨日は……昨日は……は」


 ひたと目を上に向け考えてみるものの、なかなか思い出せないようで、髪の毛の中に両手を突っ込んでわしゃわしゃと掻きむしっている。

 思い出せないのには理由があると出雲大社は言った。


「幽霊はね、過去のことは分からないんだよ。でも、そのかわりに未来のことは分かる」

 出雲大社の言うことは突拍子もない。

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