ニ
二
約束の時間の十分前に入り口のドアが開かれ、外の空気が部屋の中へ入ってきた。
丁度そのとき、出雲大社と湖はキッチンで昼ご飯を食べているところであった。
なぜ一緒に食べているのかというと、
『食事は一緒にしたほうがおいしいじゃないか』
といった出雲大社のひとことによる。
昨日はレタスとトマトのシンプルなサンドイッチにしたが、今日は照り焼きチキンサンドにしてやった。
昨日べちゃってる発言をしたから、見返してやろうと思ったわけだ。照り焼きチキンもたいがいべちゃってるけどそこは問題ではない。
一口口にしたあとで、
「俺、チキンてあんまりなんだよね」
「……すみません、知りませんでした」
「そこは予知ろうよ」
「無理ですそれは」
ぎりぎりする手をおさえて謝るが、なんてことない、全部ぺろっと食べてしまっている。
ただの嫌味でしかなかった。
よし、チキンはあまり好きじゃない……と湖は心のメモに記憶し、ごちそうさまをしてお皿をシンクに入れたところで、外の空気の気配がして二人してキッチンから仕事場に顔を覗かせた。
「あのう、すみません。ええと、黒猫に着いてきたらここにたどり着いたんですが」
顔を覗かせたのは出雲大社の言った通り高校生だった。しかも女子高生だ。しかし、この子なんかおかしいと湖は小首を傾げた。
「やあやあどうぞどうぞよくいらっしゃいました。ささ、こちらへ」
真夏の太陽さながらの笑顔で招き入れる出雲大社は、朝倉さん、飲み物よろしくね、と優しさ百倍の声色で言う。
「事務員の朝倉です。こんにちは」
ちょこんと顔を出して、この前覚えた己の役職を惜しみ無く披露し挨拶をした。
じゃないとびっくりさせてしまうから。それじゃなくても地下のこんな場所だ。それが若い女の子だったらなおさら怖がるだろう。こんなやくざな占い師と二人きりだとわかったら更に不安になるだろう。
女子高生はホッとした笑みで湖に頭を下げた。
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