家の中は広くもなく狭くもない。可もなく不可もない普通のアパートのワンルームマンションの茶の間といったところだ。

 ちゃぶ台を囲むようにしてよに四人は座り、出雲大社だけが笑んでいるが、残る三人は嫌なものをみる目でお互いを盗み見ていた。

 出雲大社の腕には花井の腕がしっかりとホールドされている。


「で、あんたなんなんだよ。要件は何」

 情況が飲み込めない男が我慢できぬとばかりにことばを発した。

「要件ですか。そういうのであれば、単刀直入に申し上げますね。田中さん、ここから出ていってもらえます」

「なに言って、お前ちょっと待て今なんつった」

「田中さん、ここから出て行ってもらえます?」

 田中と呼ばれた小平は、顔中を目にする勢いで見開き、花井の方に目だけ向ける。

 花井は怪訝そうな顔をしていた。

「君の名前は田中なんちゃらで、小平という名前なんかじゃない」

 そもそも偽名だったということだ。

 出雲大社は平然としていた。


 花井は状況が飲み込めず、険しい顔を崩さない。しかし、問い詰める勇気は彼女にはない。

「それでですね田中さん。実は、花井さんの体には複数の打撲痕があり、まだ新しく生々しい傷も見受けられましてね、」

「なんの話だよ」

 田中の声は掠れていた。それを隠そうと唾をごくりと飲む音が大きく響く。


「またまた。あなたがやったんでしょ。ん? ああ、はいはい、あ、そうなんだ。了解」

 出雲大社は話の途中でふと視線を宙に送る。そこにはいない誰かと話をし始めた。

 始めて見る出雲大社の行動に今度は湖が面食らう

「気持ち悪いな。独り言かよ」

 田中は額に水玉程の汗をかいていた。

「ちょっと失敬」

 無理に絡めさせていた腕をほどき、春の風のような爽やかな立ち居振舞いで立ち、おもむろに襖の方へと歩み、手をかける。

「待てよ」

 焦った田中は跳び跳ねるように立ち上がり、襖をドンと叩いて開けさせない。

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