コーヒーカップを二つ。

 丸テーブルの上に置いた湖は、三菱に向かって頭を下げ、台所へ引っ込んだ。

「じゃ、始めましょうか花井さん」

「えっ。うそ。あのその、なぜ私の、」

「そんなことはいいですから聞かせてください。ささ、どうぞ」

「はい、実は、」

 などというなんとも乱雑なやり取りが聞こえてきた。

 ちょっと考えてたら、そりゃ三菱って名前には無理があるよな。それではなぜ偽名を使う必要があるのかと疑問に思うところでもある。


 それにしても、彼女はまだ一言も話していないのに、なぜ彼女の本名を言い当てられたんだろう。もしかしたらこの人は本当にすごい人なのかもしれない。と湖は台所から出雲大社を覗き見した。

 反っくり返る態度。長い足をこれみよがしに組んたわ横柄を絵にかいたような男がそこにいた。

 湖はそんな出雲大社を残念な目で見て、ため息をついた。


「うん、なるほどね。で、花井さん。君はこれから彼のところに行くと思うんだけど、」

「うそでしょ。なんでそのこと知ってるんですか。だって私誰にも言ってないし。それにその話は」

「それが聞きたくて僕のところに来たんでしょ。そいつをどうにかしたくて来たわけだよね」

 うん、でもここまで来れたっていうのは何かしらの縁があったわけだから。

 まずは元彼のところに行こうか。今の彼氏が好きなのはわかってるけど、そいつをまずは片付けないといけないよね。と、己で花井に話せと振ったのに、詰まるところほぼだいたい自分で話さないと気が済まないのである。


 もしや、まさかの二股してるってこと?

 湖は出雲大社が残したサンドイッチを片手に椅子に座って耳をダンボにし、湖は話を聞いていた。そこへノリコがジャンプして甘えてきた。サンドイッチの中のレタスをちぎってやる。

べちゃってるサンドイッチを無理やり口に詰め込みウサギのように小刻みに噛む。そしてこまめに飲み込んだ。

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