冷やし茶

『 冷やし茶の緑の流れ喉滑り』


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いつも冷蔵庫には緑茶を冷やして常備している。

さすがに真冬には熱いお茶も飲むが、基本的に冷たいものが好きなのだ。


身体を冷やすから冷たいものは良くないと言われても、神妙な顔をして拝聴はするが、従う気はない。



正しいことが正解だとばかりに、したり顔をして押しつけてくる人は苦手だ。


何でもありになるのがいい事だとは思わないが、正しさを振りかざす人ほど自分が踏み外す事は考えもしないらしい。


その絶大なる自信が羨ましくも恐ろしい。


わたしはキンキンに冷やしたビールを喉をならして飲み、夏の日にイチゴ味のかき氷を食べ、果物を凍らせてシャーベットにして楽しむ。


健康には良くないのだろうけど、そのくらいの逸脱いつだつで失う時間なら、その分、短くなろうとも自分の心地よい様に生きたい。


細心の注意をはらいながら長生きし、贅沢なベットの上で最新の看護を受け、迎える最期は多分、恵まれているのだろう。

けれど泥の中に顔を突っ込んで息絶えることになっても、それが不幸な最期だったのかどうかだけは本人にしかわからない。



夜明け前にふと目が覚めて、冷蔵庫の冷やし茶を飲む。


ひんやりとした流れが滑るように喉を落ちていく。


この時間が好きだ。





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