第107話 準備

 星人ほしとは買い物を終え自分の部屋で考えていた。女性に振られるのは精神的に負担が大きい。今日もう一度振られたら二度と女性に積極的になれないかもしれない、だから、明日もう一度、彩香にメールしよう。

 でも、まさかこれ程もてないとは思っていなかった。実はモテると思っていたのに。顔は悪くない。身長は高いし、喧嘩は強い。女は不良に憧れると聞いたことがある。う~~ん、何がいけないんだろ?

 星人は、女性問題は置いておくことにした。まずは持っていく為にアイテムボックスに入れる物の選別をすることにした。あまり持っていけば家出だと思われるからそれは避けたい。だから、最低限度の必要品を選別する。

 まずは漫画だろ。森のなかでキャンプすることになったら絶対必要だし。あ、ライトも必要だな。アマゾンでポチった。娯楽がないだろうから娯楽は必要だ。ネトゲは出来ないからゲームを持っていくか。ネットに繋がらないと知識が手に入らないな。神がなんとかしてくれないかな。ゲームは暇つぶし用だからそれ程必要ないだろ。ダンベル、バーベル、スラムマンも持っていくか。あ、バイク持っていくならガソリンが必要だな。大きな専用の容器がないと売ってくれないだろうから、容器買ってガソリン入れてもらうか。ナタも必要だな。鍋、ヤカン、包丁、まな板、皿、茶碗、う〰〰ん、こうなってくると引っ越しだな。お菓子も必要だ。肉とかアイテムボックスの中は腐らないのか?腐らなければ冷たいものは冷たいままかな。だったら冷蔵庫は要らないな。熊とか居た時の為に銃がほしいけど散弾銃とか許可がないと買えないからな。1545年って言ったら鉄砲伝来がが増える鉄砲伝来で1543年か、その2年後じゃねぇーか!鉄砲は未だ普及してないな。鉄砲持っていったら最強だな。マシンガンでもあったら天下が取れるんじゃないか。神様ならアメリカからアサルトライフル買ってこれるんじゃないのかな。日本じゃ買えないからな。アメリカでもフルオートは軍とか法執行機関とかにしか無いって話だし。フルオートに改造しただけで終身刑って話だからな。そうだ、足と手につけるプロテクターは必要だな。弾丸は無理だとしても刃物は通さないやつが必要だな。モトクロス用のやつを買おうかな。お!アマゾンで防刃グローブが9800円か。ポチッと。防刃ベストも9800円か、でも安いな。これで大丈夫か?おっと、防弾プレートが9800円。これも安いな、大丈夫か?でも防弾プレートなんて日本で使う場面なんてほとんど無いだろ。ライオットシールは販売してないのかな。サバゲー用のシールドはカッコいいのがあるけど流石にBB弾くらいしか防げないだろうな。最低ポリカーボネートのシールドだな。おっ、暴徒鎮圧用ロングシールド36,500円!これも買っとくか。ヘルメットはバイク用にフルフェースは持ってるから良いか。でもフルフェースだと周りが見えずにやられちゃうな。あ、アイアンマン!しかも発光ギミック、更に自動開閉機能搭載!こりゃ戦国時代なら驚かれるぞ。でも周りが見えなくてすぐにやられちゃうだろうな。おっと、レッドブルのヘルメットだ!速そうだ!いや、速くても仕方ないし。ダースベーダーは興味ない。ぷ、プレデターのヘルメットぉ、し、しかもカーボンファイバー、頑丈そう。よしこれにしよう。カーボンの地肌に赤い模様があるやつをポチった。7万もした。だけどこれも周りが見えにくいからもう一つなにか買っておこう。自転車のヘルメットなら周りが見えるけど穴が開いてるから弓矢で攻撃されたら穴から矢が入って頭を直撃しそうだ。普通のジェットヘルが良いかな。防御だけじゃなくて攻撃用の武器も買ったほうが良いな。アーチェリーとボーガン。接近戦用にスタンガン買っとくか。日本刀は向こうで手に入れる事にしよう。警棒で戦っても相手は日本刀だろうし長さ的に負けるよな、しかも強度も刀の方が上っぽいし、相手は当たれば痛いだろうけど、こっちは当たれば死んじゃうかもしれないよな。ウーンやっぱり日本刀が良いな。


 星人の欲望は終わらない。


 翌日、星人は昨日の怪我の治療というお題目で学校を休んだ。そして、近所のスーパーで日用品や食料品を買い漁っている。


(お、寿司だ。腐らないんだったら買ってアイテムボックスに入れておこう)

 そう思った瞬間、目の前から寿司が消えた!あれ?何だ、消えたぞ?周りの誰も気づいていないようだ。もしかしてアイテムボックスに?


 確認した。


 やはりアイテムボックスに寿司が追加されていた。


 考えただけでアイテムボックスに入る。買う必要がないな・・って、これ万引きじゃん。これはさすがに神様は許さないだろ。寿司、出ろと考えた。すると目の前に寿司が出現した。隣でおばちゃんが二度見していた。


 沢山のお菓子を買った。もしかしたら1週間で帰らないかもしれないからその時の為には買えるだけ買っておかないと後悔する。お金を持っててもこの世界に戻ってこなければ使えないし。

 沢山の食料も買った。色んな飲み物を買った。特にコーラ。


 しかし、結局は無くなるものだ。だったら野菜や果物なんかの種を買って持っていったほうが良いかもしれない。帰りに買おう。


 帰りに東急ハンズに寄って便利そうなものを色々買った。思いつく限り必要だと思うものでアマゾンで買い忘れたものを買った。

 ホームセンターにも寄った。そこではスコップとか色々と買った。野菜の種も買った。果物の苗もいろいろな種類を買った。


 これで、困ることは少ないし、なんとかなるだろう。と思う。後は現地調達だな。


 家に帰り部屋の中で寛いでいる。ベッドの上や周りにはアマゾンに注文した商品が入った例のマークが付いた箱が沢山積み重ねられている。中を出してアイテムボックスに片っ端から入れなければならない。ただ、今はその前のコーヒータイムだ。


「星人ぉ!お客さんよぉー。」


 階下から母親が星人を呼ぶ声が聞こえる。


「今行くぅー。」


 階下へ降りると玄関に女の子がいた。星人はすっかり忘れていた。今日また連絡しようと考えていた彩香だった。


「あれ、どうした?取り敢えず、俺の部屋で話す?」


「うん。」


 彼の部屋へ来ると彩香はベッドにアマゾンの箱をどけて座った。


「どうしたの?この箱。沢山買い物したんだね。」


「明日から暫く旅に出るんだ。親にはカラダを鍛えるために山ごもりするって言ってるけど。」


「そうなんだ。でも、酷いよ。昨日はどこ行くのって聞いたら戦国時代って。バカにされてるかと思った。」


「あ~、それガチなんだ。だから彩香に一緒に来てほしくって。」


 その前に別の女性にメール送ったことは内緒にしている。


「バカにしてるの?戦国時代なんて行けるわけ無いでしょ。」


「なんでもこの世は多重世界で少しずつ別の自分がいるって話だけど、時間も少しづつズレているんだって。だから、かなり離れた世界には未だ戦国時代の世界が在って、そこの世界の神がオレを勧誘に来たんだ。」


「え、そんなの嘘だよ。嘘でしょ。嘘だよね。」


「いや、本当なんだ。オレ昨日刺されただろ?」


「うん、校舎の裏には血が溜まってた。皆死んだだろうって言ってた。」


「そんなに酷かったのか?その怪我を神が治したんだ。だからこんなに元気だし傷もないぞ。その神が準備を整えろって100万円呉れたんだ。そして明日迎えに来るそうだ。」


「それで、こんなに沢山荷物を買ったの?持てないでしょ。」


「アイテムボックスというのを神に貰ったんだ。見てろ。」


 星人はダンボールを一つ開封してアイテムボックスと唱えると目の前に出てきた黒く丸いものの中へ荷物を入れた。荷物はプレデターのヘルメットだった。


「ヘルメットどうするの?」


「バイクを持って行くから。それに戦いになったら頭を守ってくれるだろ。」


「ふ〰〰ん。もし私が一緒に行くって言ったら私のは?」


「その時は彩香がプレデターだ。オレは前から使ってたやつかジェットヘルも買ったからそれを被るから。」


「私がプレデターか。猫耳ヘルメットとかなかった?」


「あるのか?・・・」


「そんなに持っていって重くないの?って言うか入るの?」


「もっと入るし、重くもないよ。バイクも入れてく。」


「だったら車持っていったら?」


「オレ運転できないよ。」


「いや、免許要らないんだし。乗ってたら運転できるようになるよ。しかも車でも寝れるし、動物から身も守れるし。」


「そうだな。でも、100万しか貰ってないし。俺たち高校生だから持ってないだろ。」


「うちには車、余ってるよ。」


「おっ、一緒に来る気になったか?」


「うん多分行くよ。決めた。後は親をどうするかだね。じゃぁ、明日。」


「お、待ってるぞ。」


「私ね・・ずっと・・・好きだったの・・・」


「え?何だって?」


「なんでもないよ。」


 ホントは聞こえていた。だけど聞こえないふりをした。まさかもう会えなくなるなんて思いもしなかった。


 帰り道、彼女は信号無視の車にはねられ死亡した。


よく聞く話だ。






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