第53話 三好政勝って誰だよ!!

 襲撃を受けた当日の京の夜は混乱していたにもかかわらず宴会を望んだ吉法師の所為で御所には豪華な料理が並べられていた。

宴会が始まり、帰蝶は今川義元の妻の花と二人で話しをしながら料理を食べ、吉法師は三好政勝と一緒に料理を食べていた。

 御所は突然の三好長慶ながよしの謀反に遭遇し上司の細川春元も十二代目将軍の足利義晴も驚いていた。吉法師はその原因を三好政勝にこっそり聞いてみた。


「どうして三好長慶は突然謀反を起こしたんだ?」


「俺だ。俺が原因だ。俺が武器を作ったから天下を取れると思って謀反を起こさせたんだ。」


「おまえかぁ!ここを出るまで黙っていろよ。聞かなかったことにしておいてやるから。」


「あー、ありがたい。同郷だしな。おな中だな」


「そうだな。ある意味同郷だな。おな中ではないな。おな郷だな。」


 そこへ帰蝶がやって来た。


「ねぇ、お風呂あるってよ。先に花さんと入って来るね。」


「帰蝶様はご飯はもう食べられたんですか。」


「もう食べたわよ。」


「なぁ、政勝。なんで帰蝶には敬語なんだよ。」


「当り前だろ。俺は帰蝶様の家来だぞ。」


「だったら俺にも敬語で喋れよ。」


「なんでだよ。俺はお前の家来じゃないぞ。」


「俺は副将軍だぞ。」


「おい、普通、副将軍にはならないだろ。」


「なんでだ?」


「ちょっと待って!」


 そこへ帰蝶が話に割り込んで来て、政勝にこっそり耳打ちした。


「この人は、自分が信長だって知らないの。それでうまく操縦してるのよ。だから内緒にしておいて。」


「そうなのか?それは良い事を聞いたぞ。揶揄からかい甲斐があるな。」政勝はおもちゃを貰った子供の様に無邪気に笑う。まさか自分が帰蝶のおもちゃにされるとは思いもせずに・・・


 そして、次の日、吉法師達は熱田神宮へ立ち寄り帰国することにした。


「今から熱田神宮まで寄ってから帰る。義元殿はまだ帰らないだろ。どれくらい滞在したい。」


「十日ほど滞在したいでおじゃるな。」


「だったら十日後また迎えに来るぞ。のんびり久しぶりの京を楽しむと良い、花さんもな。兵六人は銃を持たせて残しておく。」


「なぁ、俺にも銃くれよ。」政勝が偉そうに銃を所望して来る。


「あー後でな。最近な、神が殺した一人に殺されかけたんだ。その時予備の銃がかなり減ったんだ。デカい銃も有ったんだが壊れた。壊したのは帰蝶だけどな。」


「ほー、さすが帰蝶様だな。」


「そのデカい銃があればお前に負ける事はなかったな。」


「まあ、後でなら何とでも言えるな。」


「うるさい。」


「それで、それ誰だった?」


「俺の弟だった。自分で織田信長と名乗ってたな。」


「ほぉ―、信長と名乗ってたのか。もしかして信行か。」


「そうだ、帰蝶に聞いたか?多分、もう死んだがな。今度は確実に。」


「そうか。だと良いな。」


 こうして、吉法師、帰蝶、平手政秀、三好政勝の四人は帰国の為に相国寺へと向かった。


「こ、これは、セスナじゃないか!凄いな、吉法師が作ったのか?だが、これどうやって飛ばすんだ。滑走路が無いぞ。」


初めてこの世界でセスナを見た政勝は驚いた。


「私が飛ばすのよ。まぁ見てて、さぁ早く乗って。」


 こうしてセスナは、見送りに来ていた今川義元夫妻、兵士六人と今川の兵士三名を残し、上空へと浮かび上がるのであった。


「おい、浮かんだぞ!凄い!」


「おい、子供みたいにはしゃぐんじゃない。」吉法師がたしなめる。


「だって、俺まだ子供だぜ。垂直離陸するから滑走路が必要ないのか。帰蝶様、俺荷物を取りに行きたいんですけど大丈夫ですか。」


「どこ?摂津?堺?取り敢えず南に行けばいいわよね。」


「このセスナ、どれくらいの速度出るんですか。」


「400キロ位出せるわよ。」


「400キロも。だったら四国迄あっという間ですね。」


「若様方は、皆様お話が合う様で、爺には何が何だかさっぱりでございますぞ。」


「爺、大丈夫よ。気にしなくても。四国の何処?」


「徳島県ですね。淡路島の先の勝瑞城しょうずいじょうの近くに家があります。」


「そうだな、今の地名で言われても何処か分からないぞ。」


「若様は勉強されてませんからな。」


「爺、うるさい。それと政勝、お前は帰蝶の部下二号だぞ。」


「一号は誰だ?」


「一号は滝川一益だな。信長に取られる前に部下に出来て良かったよ。」


「そうだな。織田信長は敵だからな。ぷぷっ。」


「ちょっと、政勝。吹き出さない。」


「すいません。初めてだったもんで、つい。」


「何がおかしかったんだ。」


「いや、俺達に掛かれば織田信長なんて鼻糞みたいなもんだろ。」


「そうだなぁ、織田信長なんて鼻糞だな。」


「ひーっ、ひひひーっ、何笑わせてんのよ。ちょっと、久しぶりにお腹が痛い。ヒーーっ。ひひっひーーっ、は、鼻くそって。ひーーーっひーーーっ。自分で、自、自分で鼻糞って。ひーーっ、自分で言うか。ひっひっひっ・・って、は、腹が、腹が痛い。駿府の古傷が・・い、痛いっ・・・助けて・・」


 久しぶりの大笑いに笑いの止まらない帰蝶であった。


「帰蝶、飛行機が落ちてるぞ、って落ちるぞぉー!助けて欲しいのはこっちだよ。飛行機運転中に腹を抱えて笑うなぁ。ハンドルから手を離すな、オートバイロット無いんだぞ。」


「あ!俺オートパイロットとかの電装パーツも作れるぞ。」


「本当か!?だったらオートパイロット作ってくれ。無いといつか死ぬぞ、俺たち。」


「そうだな、帰蝶様だけは生きのこりそうだけどな。あのバリアで。」


「爺ーっ、後ろで手を合わせて念仏唱えないで!あ、海が見えて来たわよ。大阪湾ね。なんか形が記憶と違うわよ。」


「この辺りは埋め立てでかなり地形が変わってますからね。関空も無いですし。しかし、速い。来るときは何日もかかったのに。正面の島が淡路島ですね。」政勝が丁寧に答える。


「あのお城?海沿いにあるやつ。」


「いえ、あれは土佐泊城とさどまりじょうですね。そこから2.5里ほど西にある勝瑞城しょうずいじょうですね。城の海側に家があります。この頃のお城って天守閣が無いから寂しいですよね。吉法師、俺たちは天守閣のある城を立てるぞ。」


「任せた。俺は外国へ行くから。」


「この人はヨーロッパ行って金髪ハーレム作りたいとか言ってるのよ。ふざけるなって話よね。」


「お、それも捨てがたいな。だったら日本征服して兵を集めてシルクロード沿いに征服していくか。」


「政勝、なぜあなたまでダーリンと同じこと言い始めるの?男って阿保なの?」


「本当ですか、帰蝶様?吉法師、お前とは気が合うな。」


「そうだな。じゃ日本の次は中国な。」


「でもセスナで外国はきつくないか。」


「はは、何にってる。もう直ぐマッハを出す飛行物体作るぞ。神様に魔力を溜める事の出来る物質を聞いたからな。」


「まさか、それが帰蝶様が言っていたヒヒイロカネか?」


「そうだ。熱田神宮に草薙剣があって、それがヒヒイロカネで出来ているらしいんだ。それを鑑定すれば、その組成が分かるだろ。そうすればヒヒイロカネを作ることが出来る。作れれば魔力を溜めてマッハを出せる乗物を作ることが出来るぞ。」


「そりゃ、楽しみだ。本当に帰蝶様の部下になって良かったよ。あ!ここで、止まって、あの空き地に降りてください。」帰蝶に話す時には直ぐに丁寧になる政勝であった。


 一行は、政勝の家の前の空き地にセスナを停め政勝の自宅、と言ってもお殿様の親戚なので屋敷と言えるほど大きい家におじゃまし、日本庭園の見える縁側に座り込み、四人で出されたお茶を飲んで休憩している。


「荷物はどれくらいあるんだ。」


「あー、バズーカ砲の試作品と迫撃砲だな。バズーカはカールグスタフ無反動砲みたいなものだな。狙いが正確だっただろ?あれは狙った通りに誘導する装置を付けたんだ。」


「だから、狙いが正確だったのか・・・って、俺はその所為で死にかけたぞ。」


「それは仕方ないだろ。敵だったんだから。それより、ここから尾張迄どれくらい掛かるんだ。」


「直線距離で約250キロだから、普通に行けば1時間ほどだろうな。約半刻だな。」


「だったら、何時でも里帰りが出来るな。通勤も出来るな。って、何で距離まで分かるんだ?」


「神様から地図貰ったからな。でも、多分通勤は無理だぞ。このセスナは滑走路で加速して飛ばせる用のタイヤを作って無いからな。一人で来るなら滑走路を作らないとな。海に着水するのも良いな。それとも神様にお願いして重力魔法を使えるようにしてもらうかだな。」


「神様と話せるのか?俺はずっと神に言いたい事が有ったんだ。三好政勝って誰だよ!!」




 



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