第25話 信長
尾張の暑い夏を雲が緩和してくれた天文十一年のとある日に尾張は統一された。
戦後処理は信秀に任せる事にして吉法師は那古野城へと十名の兵士を連れて帰るのであった。遅れて残り二十名の兵士も帰還して来た。
「お前ら、今日はよくやった。下位二十名は弾を発射していないと思うが今日は銃の掃除方法を教える。自分で分解し掃除してまた組立てなければならない。簡単だ。難しく考える必要はない・・・」
説明を終え実際に掃除させ、再び組立てさせた。これで今日は解散とはならない。勿論この後一時間走り込ませて今日は解散となった。
「帰ったぞ。」
「お帰り、ちゃんと手足は付いてる?何処も切られてない?どうやら、大丈夫みたいね。」
「これで尾張はひとつになったぞ。」
「だったら、次は経済を発展させて金集めないといけないよね。楽市楽座とか。」
「ゲームセンター作るのか?」
そして月日は流れ、二年の歳月が流れた。吉法師と帰蝶は十歳になっていた。
そんなとある春のまだ涼しい日に吉法師と帰蝶は信秀に彼の住む末森城へと呼び出された。
「帰蝶、さっさと行くぞ。」
「でも用事って何だろうね。」
「予想がつかないな。」
車に乗り込み末森の城へと向かった。
末森城に到着すると兵の数が多い。何処かと戦でもするのだろうか。
通された広い部屋には武将が集まっていた。上座には子供が座っている。その横には信秀が座っていた。
「どうした、親父殿。」
問い掛けると、上座に座っている子供が話し始めた。
「待っていたぞ。兄上。」
「お前が末森城にいるという俺の弟か、初めてだな。元気か。」
すると、信秀が話し始めた。
「今日からここにいる信長が織田家の当主だ。」
「やはり、お前が織田信長だったのかぁ!」
「いや、違うしぃ!」
すかさず帰蝶がが突っ込みを入れる。どう考えても吉法師が信長であり、末森城にいる吉法師の弟は信長などではなく信行だ。どういう事だ。しかも、ここ二年で尾張を統一し、尾張の経済的発展を担ったのは吉法師だ。しかも吉法師が嫡子の中では長男だ。どう考えても後継者は吉法師だ。にも拘らず信行が後継者になりしかも信長を名乗っている。どういうことだ。歴史を知っているのか?帰蝶は最悪の考えに辿り着いた。もしかしたら転生者がいた。もう一人ここに?だとすれば、全て納得がいく。
「今日から俺が織田信長だ。俺が尾張を統治する。お前は牢屋だ。」
すると後ろから銃を持った兵士が銃を吉法師と帰蝶に向けてくる。
「動くなよ。しかし、お前が作った武器は役に立つな。お前が神が殺した十数人のうちの一人だという事は知っている。なぜおまえが吉法師で俺が信行なんだ。俺は信行なんかに転生したくなかったぞ。だから今日から俺が信長だ。何もするなよ。銃が狙ってるぞ。さしずめお前の力は銃や車を作る能力だろう。他にも魔法が使えるのか?反抗すれば帰蝶を殺すぞ。帰蝶をここへ連れて来い。」
「おい、俺が大人しく牢屋に繋がれると思うのか?信長に殺されて頭蓋骨で酒を飲まれるくらいなら暴れて逃げるぞ。」
「そんなことをすれば帰蝶は殺す。大人しくしておけば俺の妻として生かしておいてやる。妻として生かすんだからお前が暴れない限り帰蝶を生かしておくのは理解できるだろう。それに・」
その時吉法師の首に革の首輪が嵌められた。
「それに、お前は魔法が使えなくなったぞ。一切な。諦めるんだな。魔法も使えない上に牢屋に閉じ込められるんだ。その内、帰蝶と仲良くなったら二人でお前の処刑を嗤いながら眺めてやるよ。俺はな魔道具が作れるんだ。魔道具で戦国の世を支配してやる。織田信長としてな。そいつは地下牢に閉じ込めておけ。」
自称信長が吉法師の隣の兵士に命じる。高笑いを
地下牢に連れて行かれそうになる吉法師は抵抗を試みるが全ての行動が無に帰してしまう。魔法も発動できない、力も入らない。これでは銃で撃たれれば普通に死んでしまうだろう。抵抗空しく連れて行かれる吉法師を信秀と帰蝶は虚ろで、無感情で、まるで何者かに操られ自分の意思が無いかのような目で見つめていた。
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