ユートピア-1
生まれ変わり。転生。そんな、自分の存在が一新されたような爽快感に包まれて、俺はのそりと上体を起こした。
途端、爽やかな風が正面から顔を直撃し、髪をかき乱した。うっ、と思わず目を閉じてから、俺はゆっくり、再び目を開けた。
「……は」
飛び込んできた光景に、呼吸を忘れた。
正面を貫く目抜通りは、布切れ同然の
呆然と、辺りを見回す。俺は街を一望できる丘の上にいた。背後を振り返ると、大きな池があった。歩み寄り、覗き込むと--澄んだ水面に、慣れ親しんだ俺の顔が映った。
「俺の、顔だ……」
信じられない。いっそ残念なぐらい俺の顔だ。もう少しディテールをぼかしてくれた方が男前になったのではないかと思うほど、ほぼ完璧に俺の容姿がアバターに反映されている。
いや、そもそも……今の俺の体は、本当にアバターなのか。
手を握ったり、首を鳴らしたり。試しに色々動かしてみたが、一切の不自由もラグも存在しない。むしろ、慢性的な肩こりや寝不足の気だるさが解消され、普段より体が軽いぐらいだ。
今一度あたりを見渡す。この、美しい世界が……仮想空間? あり得ない。風の匂いも、太陽の温かさも感じる。何より、この景色の解像度はなんだ。
最新鋭のグラフィック技術も裸足で逃げ出す最高画質。まさに、現実にモノを見ているかのよう。
ここは、本物の異世界ではないのか。その可能性の方が、俺にはよっぽど現実味があった。
再び池を覗き込む。ジャージ姿でカプセルに入ったはずだったが、水面に映る俺はずいぶん珍妙な服装をしていた。
麻のシャツにレザーの胸当て。それだけでも馴染みがないが、極めつけは、右腰に差してある革製の鞘。三十センチほどの……恐らく、短剣。武器だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます