第50話 車中泊だよ! 全員集合!

家が出来て、二日がたった。


新居は、快適そのものだ。

家具は備え付けてあるし、キッチンには大型の冷蔵庫や電子レンジにガスレンジ完備、大きな風呂は、ちゃんとお湯が出るし最高だぜ!


何か忘れている気がする……


ま、良いか。

今が良ければ良いんじゃないか?




「って、そうだ!」

そう言えば、冒険者として、Sランクを目指していたのだった!


俺は、全員をリビングに集合させる。


「何よ、みんなを集めて?」

キャスカが不満そうに言った。

俺は、軽く無視して話を進める。


「みんな、Sランクの冒険者を目指す件だが」


「あ」

「ん」

「そんな話も前にあったわね」

「そうでしたね」

「今日の晩御飯は何ですか?」


軽キャンクラブのみんなが、ざわざわ言ってる。

最後の、ウィズの言葉は聞かなかった事にした。


( こいつら、完全に忘れていやがったな……俺もだけど! )

「ええ―い! 嘆かわしい、それでも、軽キャンクラブかよ! 初心を忘れてどうしようもないな」

俺は、自分を棚に上げて言った。


「でもさ、どうすんの? Sランクって言ったって何やればいいの?」

キャスカが俺に聞いてきた。

良い質問だ。


「俺も、知らん!」

堂々と言ってあげたら、キャスカが、口をパクパク開けて呆れてたが、俺は、気にしない。


「しかし、いまさら、冒険者稼業ってもなぁ」

バンが、腕組をして言った。

「そうですよ、安定した暮らしが出来てるんだし……」

カイも同調してる。


「人間、上を目指さないと、成長しませんよ!」

俺は、みんなに言ったが、反応がいまいちだ。

( 目標も無くダラダラ生きてどうする? サラリーマン時代の俺のように、無気力な人間になってしまうぞ! )


「あれ、私達、ランクなんだっけ?」

レイラが言った。

「情けないぞ、レイラ、俺達は……あれだよ、なぁ、キャスカ」

( ホントにランクなんだっけ…… )

困った時は!

俺は、華麗にキャスカに振った。

キャスカが目を見開いて、無言で俺に抗議した。


「えっと、Cランクですよ」

ルファスが、ギルドカードを掲げた。

俺は、そう言えば、そんなのあったなと思った。


……どこに、やったっけ?


「レイラ、ギルドカードどうした?」

「ヒロシが無くすといけないからって、プロムのと一緒に渡したわよ……」

レイラが、不安そうな表情になった。


焦った俺は、部屋を出て、軽キャンの元へ走った。


「あった」

軽キャンのダッシュボードの中にカードが三枚入っていた。

俺は、ダッシュで戻る。


ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、

「あ、あったよ」

俺は、ギルドカードを見せる。



「しっかし、俺達って、まだCランクだったのか?」

バンが自分のカードを見ながら、しみじみと言った。


実力的には、Aランクでも おかしくないもんな と、俺も思うよ。


「よし、とりあえず、じゃんじゃん依頼をこなして、まずは、Bに上がろうぜ! 街に向かうぞ!」

みんな、やる気がなかったのに、街に行くと聞いたら、凄いやる気満々な感じになっった。

そんで、今から出発する事になった。

まさかとは思うが買い物に行きたいだけか?

みんな、家から、いそいそと出ていくのを確認した俺は地下室、軽キャンに乗り込む。

変形解除!


ドン!!


家が消え、あった場所に軽キャンが残った。




軽キャンピングカー

 四名乗車

 俺、レイラ、プロム、ミロース


キャンピングカー(キャンピングトレーラー付)

 八名乗車

 ルファス、キャスカ夫妻、ウィズ、ユリス夫妻、

カイ、フィリー夫妻、バン、ライカ夫妻


全員乗車完了!


「ルファス、調子はどうだ?」

ルファス

「いつでも、イケますよ! 通信状況も良いです」

「魔導通信は、常時通話モードにして、運転席にセットしとけ」

ルファス

「了解です、ヒロシさん! 分からない事があったら、質問するので、お願いします」

「任せとけ! ゆっくり行くから、俺の軽キャンについてくるんだぞ」



小さな、俺の軽キャンが走り出し、後ろから、ルファスの大きなキャンピングカーがついてくる。

でっかいのと、ちっちゃいの、まるで、親子みたいだろうな。


「そういや、並んで走るの初めてだな! 運転大丈夫か?」

ルファス

「だいぶ練習したので、安心して下さい」


俺はサイドミラーで後を確認すると、ルファスの運転するキャンピングカーがふらふらと走っていた。


「ルファス、落ち着いていこうな」

俺の言葉に落ち着いたのか、ルファスの運転するキャンピングカーのふらつきが収まったようだ。


俺達は、街を目指す。


「ルファス、あっちに見える広くなっているところで休憩するからな」

俺は、常時通話にしている魔導通信で、ルファスに指示をだす。


昼過ぎにドラゴンの里を出発して、だいたい二時間くらい走ったので、一旦休憩を入れるのだ。

ルファスは初心者なので、もう少し早目に休憩をとってやればよかったかな?


俺の軽キャンが、広場に停まった。

続けて、俺の横にルファスがキャンピングカーを停車させた。


車外に出て体を伸ばす。

みんなも出てきて、体を伸ばしたり、辺りをうろついたりして休憩を始める。


どれくらい走ったのだろうか?

久々なので、すっごい楽しい。

俺とした事が、嫁さんにスケベな事をせずに運転に集中していたよ。


俺は、軽キャンの冷蔵庫から、缶コーヒーを二つ持って、ルファスの元に行く。


「疲れたか?」

俺は、ルファスに冷たい缶コーヒーを渡して、もうひとつを開けた。

「まだ、行けます」

ルファスは、そう言って受け取った缶コーヒーを飲む。

「疲れたり、無理だと、思ったら、すぐに言えよ。 お前、無理するから」

「ありがとう、ございます。 無理したら、逆に迷惑がかかる。でしたね」

ルファスが笑って言った。

俺が、前にルファスに言った言葉だ。

俺達は、ボーっと休憩した。


休憩が終わり、出発する。

舗装された道路じゃないので、俺でも結構怖い。

細い道もあったが、ルファスは必死に運転した。

ちょっと、暗くなり始めたので、車中泊ポイントを探しながら、運転した。


だいぶ暗くなったころ、水辺の良い感じにひらけたところで、俺達は車中泊をする。

ライカとユリスが家を出さないのか?と聞いてきたが、今日は、車中泊なのだ!


なぜって? 楽しいからです!


晩御飯をみんなで食べた。

そして、久々に焚火をしたりしながら、夜の静けさと、非日常を楽しむ。

良いね~! これだよ!コレ!

俺は、焚火の炎を見ながら、酒を飲み最高の気分。

最愛の妻達が側にいるし、ホントに最高だ。


男連中は、奥さんと良い感じの雰囲気になっていた。


ほら、見てごらんレイラ、星が綺麗だよ。

プロムも見てごらん。

ん? どうしたミロース。

ミロースの方を見ると、その向こうにあるルファスのキャンピングカーに連結していたキャンピングトレーラーがユッサユッサ揺れていた。

せっかくロマンチックな雰囲気が……

「ミロース、そっちを見ない」

ユッサユッサ

ほら、ミロースも星を見なよ、

ユッサユッサ

綺麗だろ。

ユッサユッサ

ユッサユッサ

ユッサユッサ

ユッサユッサ

ユッサユッサ

ユッサユッサ

ユッサユッサ

ユッサユッサ

気になるわ!!

一度気になったらダメだった。

俺は、レイラ、プロム、ミロースをつれて、軽キャンに戻ることにした。

ポップアップルーフをあげて、二階部分に俺が寝て、一階部分に嫁さん達が寝ることにして、今日は、早めに寝た。




朝になり、簡単に朝ごはんを済ませて、出発する。

昨日は、みんな早めに寝たので、元気一杯だ。

久々の車中泊、楽しかった。

また、ちょいちょいやりたい。

時には、ソロで行くのも良いな。

俺は、運転しながら、そんなことを思った。


「ルファス! もうすぐ森を抜けるぞ」

俺の目の前に草原が見えた。

「ヒロシさん、街ありますかね?」

「さすがに、まだじゃないか? ゆっくり行こうぜ」

「ヒロシさん、運転楽しいです!」

「そうか、良かった!」

俺たちは、草原をはしる。


ところで、街はこの方角で良いのかわからないが、俺は自信満々で運転するのであった。

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