第30話 ラガス王国攻防戦 その2

ラガス王国での拠点である、俺達の新居で、レイラとプロムと愛を確かめ合った。

些細な行き違い、思い違い、ちょっとした事で生じた、レイラとプロムの怒りが収まって良かった。

そんな、理解ある二人を愛している。

これが真実の愛だ! と、思いながらも、朝のシャワーを浴びるキャスカを覗く俺。

本格的にロリコ…ゲフン、ゲフン。

談じてない! と、言いつつ見る!

…俺は、シャワーの調子が大丈夫か見ているだけだ。


そんな、他愛のない朝の日常を満喫した俺は、ぶらぶらと、朝の散歩がてら街に来ていた。

こそこそと、カイがついてくる。

「何か用?」

俺は、カイに近づき言った。

「レイラ様が、ノガミさんの護衛と監視をしろと…」

「あー、わかった、わかった。 もう隠れなくていいから、ただの散歩だけど、暇ならついてこい」

カイの様子から、レイラに十二分に教育されたんだと思った。

可哀想に…俺は、また、良いとこに連れていってやるからな、と小声でカイに言ってやった。

カイは、とても喜んでくれた。

可愛いやつだ。


ゴーン! ゴーン!…

街に教会の鐘が鳴り響く。

俺とカイは何事?と顔を見合わせる。

辺りの人か大通りに向かって走っていく。

「ムトゥ将軍が帰還されたぞ!」

「戦況は?」

「もう、終わったのか?」

人々が口々に言って走っいく。

「カイ、俺達も見に行こうぜ」

俺とカイも人の流れにのって、大通りに向かって走った。



大通りについた。

数名の騎馬と馬車が遠くからこっちにくる。

「ん、あれは?」

馬車にいる、お尻に包帯して寝かされてるのは、グラナス高原でフリチン丸太にしてやった奴じゃないか?

ここの人だったの?

と、思いつつ通りすぎていく馬車を見つめた。

「なんか大変そうですね」

カイが言ったので、そうだねと答えて、街の散策を続ける。

今日も平和だ。


冒険者ギルドにいくと、戦争関連の依頼ばかりだ。

とりあえず、状況はわかりました、休憩して帰ろう。

「カイ、ちょっと遊んで帰ろうぜ」

俺は、カイを引き連れ、昨日のリベンジをしに行く。

通りを、ウキウキしながら歩いている俺達の前に騎士の一行が現れた。

こっちを見ている。

なんだろね?

「お前達、止まれ」

声がしたが、俺は無視して歩く。

「お、おい、止まらんか、ちょっと待て」

さらに無視して歩く。

嫌な予感しかしないもん。

「そこのお前だよ、さっき目があったろう、止まれ!」

声の主がこっちにくる。

「逃げるぞ」

俺は、カイに言って走り出す。


「二人とも止まれ」

走る俺達の前に、女の騎士が飛び出してきた。

「わっ!」

俺は、急に現れた女騎士の前で、驚いて立ち止まる。

「わ、わ、わ、急に止まら」

カイが止まれずに俺にぶつかってきた! 俺とカイは女騎士の前にすっころんだ。

「貴様がムトゥを…引っ捕らえよ!」

女騎士が言うと、後ろから走ってきた騎士達によって、俺達は連れていかれた。

突然の事に俺は、女騎士を睨むが、可愛かったので笑顔になった。



ラガス城。

なんか、豪華な部屋に俺とカイは通され、待つように言われた。

「レイラ、聞こえるか?」

俺は、ブレスレットに話しかける。

「あ、ヒロシ、どこにいるの? 昼いるの? 要らないの? 用意あるから出掛ける前に言ってもらわないと」

俺は、すぐ帰るつもりだったので、黙って出てきた。

昼御飯の準備した方が良いのかと、レイラに怒られた。

「ごめん、すぐ帰るつもりだったから。 今、この国の城に来てる」

「あ、そう。 迷惑かけちゃダメよ。 お昼食べてくるの?」

うーむ、緊張感のない会話が続く…

「食べて帰るから、お昼は気にしないで、それより、俺達…」

「わかった。何か簡単なもので済ませるわ。じゃーね」

通信が終わった。

カイを見ると、何か気まずそうにしてた。

なんだ? そうだよ、普段こんな感じですよ、悪いのか?

俺は、顔が赤くなった。

「あ、あの、僕、やってみますね」

気を使って、カイがブレスレットに話しかける。

「ウィズ?」

「…」

「ウィズ?」

「…」

「ウィズ!ウィズ!」

「うるせー! 今忙しい、後にしろ! 以上」

通信を切られたカイが固まってる。

俺は、カイの肩にそっと手を置いてあげた。


ドアが開き、先程の女騎士が入ってくる。

「先程は、失礼した。 私の名前は、ラフィス・ラガス この国の王女だ」

ラフィスが自己紹介してきた。 お姫様ね。 うん、可愛い。

「俺の名前は、ヒロシ・ノガミ 実業家にして、冒険者だ。 こっちは、仲間の、カイ」

俺も、自己紹介しといた。

「では、ヒロシ、父に会ってもらいたい」

ラフィスが真剣な目で俺を見て言った。

「ごめんなさい、俺は、既婚者なので」

嫁さん増やしたら、レイラ、プロム怒るだろうなぁ、だから俺は、残念だが嫁さんには出来ません。

「いや、意味がわからんが、とにかく着いてきてくれ」

そう言って、ラフィスは部屋を出ていく。

だよね。 まぁ、わかってたけど、めんどくさい話になりそうだな。

俺は、カイと一緒にラフィスの後を追う。



長い廊下を渡り、王様のいる謁見の間にやって来た。

目の前には王様がいる。

「ほう、お前達が、ムトゥ将軍のケツに…プププ」

王様が笑いをこらえながら言った。

俺は、笑うわけにもいかないしな~と、カイを見るが、なんで、ここに連れてこられたのか解らずとまどっている。

カイは何の事か知らないから、とんだ、とばっちりだろう。 スマン。

「で、俺に何か用か?」

俺は、王様に向かって聞いた。

「率直に言おう、お前の力を我が国に貸して欲しい」

王様が頭を下げた。

こんなんされて、嫌です。 って、言ったら、殺されるだろ? やり方が汚いな~なら、

「俺の力を借りる、その対価はなんだ?」

俺は、王様に言った。

「いくら欲しい?」

王様が、つまらない事を言う。

金なら、腐るほどあるから要らねーっての!

「王さん、俺は、ノガーミ商会のノガミだ、金なら悪いが、この国より持ってる。 わかるな?」

王様、重臣達、ラフィス、カイまで驚いてる。

あっ、カイに言ってなかったかな?

「それよかさぁ、ゼノス王国の支配下に入るか、同盟結んでよ」

俺の言葉を聞いて、王様が考える

「支配下に入る訳には、いかないが同盟なら、でも、ゼノス王国に何のメリットが?」

王が乗ってきたが不信感があるようだな。

「バカだねアンタ。 平和にならないと、商売だって安心してやれないだろ? それに、戦う心配が減れば、経済活動に金を回せるだろう? 金があれば経済で成り立ってるゼノス王国は、商売で稼ぐ事が出来る。 みんな喜ぶ。 最高じゃねーか」

俺は、王様に儲け話をしてあげてるんだ、考えるまでもないだろう?

「フ、フハハハ! 面白い奴だな、お前! このホラ吹きめ!」

王様が、大笑いして俺に言った。 この野郎…

「よし! 決めた! ワシは、ヒロシの言うことを信じる。 どうせ、このままじゃ、ヴァルファの連中には勝てん。 なら、このヒロシに賭けよう! ヒロシ、お前が、見事ヴァルファを倒す事が出来れば、この国は、ゼノス王の支配下に入ろう」

王様が言うと、場がザワついた。

そりゃそうだろ! マジか! 俺、言ったよ? でも、支配下にって?

俺は、キョトンとして、つっ立ったまま呆然としている。

王が玉座から降り、跪く。

すると、回りの全ての者が跪いた。

「頼む、ヒロシ! この国を救ってくれ」

王様が言った。

そこまで、追い詰められてたのね。

俺は、都会のこの国で、風俗行ったり、おねーちゃんのいる店で飲んだりしながら、冒険者として活躍して、ランクアップしようと思ってたのに…

「王様、顔をあげてくれ」

俺は、王様に言った。

「男が、国を憂いて、チンピラみてぇな奴に頭下げて頼んでんだ。 そんなん、断れねえよ… 心配すんな、任せとけ!」

俺は、言い切った。


やってしまった。


ま、しょうがねぇか。

俺は、トホホと力なく笑った。


「王様、作戦決まったら、連絡すっから、連絡役に誰か寄越して」

俺は帰る前にそう言うと、

「娘のラフィスをつける」

との事だ。

前の俺なら大喜びだが、今は柄にもなく責任をもってしまい、それどころじゃない。

それより、レイラ達に何て言おう?

ルファスやキャスカに至っては、祖国だぜ? その軍隊と戦わせんのか? 出来ないよ、そんなの…

俺は、足取り重くラガス王国の用意した馬車に乗り込む。

「大丈夫なんですか?」

カイが、ラフィスに聞こえないよう小声で聞いてきた。

知らねぇよ、と俺は思いながらも笑顔で返しといた。

俺の心とは裏腹に、馬車は軽快に俺達の拠点へと走り出すのだった。

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