第51話「秘書②」

 クリスマスイブが近い12月中旬だった。

 草薙副社長の担当秘書が夫の海外転勤に伴い退職することになっていた。その送別会に平野も誘いを受けた。

 忘年会シーズンだったが、たまたま平野のスケジュールが空いていた日の開催だったからだ。平野としては年に1度ぐらいしかない機会でもあり、秘書室への日頃の感謝を込めて出席することにした。

 スタート時間は18時。場所は大阪の本町にあるセントレジスホテル大阪内のイタリア料理店だった。セントレジスは満水ハウスが開発した本町ガーデンシティにテナントとし入居している。セントレジスというブランドは世界的ホテルチェーンのマリオットグループにおける最高級のグレードだ。芸能人の定宿としても知られており、東京の芸能人が大阪のテレビ収録に来る時に良く利用されていると聞いていた。

 地下鉄御堂筋線の本町駅真上に位置し、大阪市内の観光スポットへはもちろん、京都や奈良、神戸へのアクセスも良好だ。セントレジスホテル大阪自体は、ミシュランガイドの最高評価である5レッドパビリオンを大阪で唯一3年連続で獲得したホテルだった。160室と部屋数は多くなく、バトラー(執事)サービスを宿泊客全員が利用できるのが特徴で、荷ほどきや靴磨き、航空券の手配などを24時間態勢で対応するラグジュアリーホテルだ。

 建物である本町ガーデンシティは11階までは敷地面積一杯に建っているが、12階以上は1階あたりの床面積が小さい。そのため、遠くから見ると、11階までのビルの上に更に細長いビルが乗っているように見えた。

 ホテルは本町ガーデンシティの1階から2階、11階から27階に入居している。フロントは12階にあり日本庭園も同階に存在する。

 今回のお店はフロント階にある。店名はラベデュータ。満水ハウスの開発部署とマリオットグループで企画したイタリア料理の店だ。シェフは東京の有名イタリア料理店で料理長をしていた人物を引き抜いてきていた。

 満水ハウスが開発した物件であることから接待で利用することも多い。平野も何回も足を運んでいる。

 高級ホテルであり部屋数も少ないことから、満水ハウスの役員が使っても目立つことはあまりない。この安心感もあって役員と秘書部のメンバーで懇親会がある時には良く使われていた。

(続く)

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