不快美少女戦隊ラフレシアンⅡ

しをおう

プロローグ

「なに!?戦場を地球に移すとな!?それはまことか!!」

 フラワーパークの辺境に城を構えるラフレシア女王の妹、ラフレシア・プリシィは、その報告に自分の耳を疑った。

「間違いありませんプリシィ様。先程決定されたようです。これは吉報ですぞ!!」

 側近は安堵し、喜んでいる。それはそうだ。ここラフレシア・プリシィの城はカンキョハカーイとの国境線。激戦区の一つだ。いつ城が破壊されても、命を失ってもおかしくは無い。その心配が無くなったのだから。

 女王はカンキョハカーイ総王、ダイオキシンと勝手に休戦条約を結び、地球を舞台に移してドリームアイランドの覇権を掛けて戦う事を決定したのだ!!

 休戦条約は兵士を休ませる為には有り難い話だったが、カンキョハカーイ最高幹部、国防元帥ガイチューン将軍は絶対に許せなかった。

 何度も何度も戦い、未だに決着が付いていないのだ。

「ガイチューンのおかげで我が兵が何万人犠牲になったと思っているのだ!!貴様はこれが良い事だと言うのか!!あのクソ公害国に我が国がどれだけ苦しめられていると思っているのだ!!」

 憤りを部下にぶつけて八つ当たりをするも、気が晴れない。つうかビンタされた側近もいた。

「女王は地球でラフレシアンを捜してダイオキシンにぶつけるようです。これ以上我が国の兵士は死なないのです。これは吉報ではないのですか……?」

 なんかマジギレしている『辺境の女帝』に、なんかマズイ事でも言ったか?と、超ビビりながら言う。

 ぶっちゃけると、兵士が死のうがどうでもいい。自分の治める辺境に喧嘩を売って来るカンキョハカーイが許せないだけだ。

 最初の切っ掛けはなんだったか…自分が大事に育てていた花にアブラムシを大量にばら撒かれた事だったか?

「で、ですが、辺境は国境とは言え平和だったのです。その平和を壊したのはプリシィ様で、その責を取らなくても良くなったと言う事では……」

 そうだった。向こうの領土が結構な広さで、住民もいなかったのをいい事に、勝手にガーデニングを始めたのが切っ掛けだった。その花にアブラムシをばら撒かれたのだった。

「ええい!!煩い!!私はいいんだ!!だってあの土地は誰も使っていなかったし!!」

「ですか、カンキョハカーイの領土に違いないのでは…」

 正論を言われたら返す言葉が無くなるものだが…

「元々フラワーパークとカンキョハカーイは戦争していただろうが。私のガーデニングのせいじゃない。あの姉が、ケイティお姉さまが、現ラフレシア女王がお姉さまを……」

「プリシィ様、それ以上は……壁に耳あり、障子に目ありです」

 いや、別に言っても良かろう。どうせあの女王は人望が無いのだ。この『三女プリシィ』と違って、民に何も期待されていないだろう。

「た、大変です!!ガイチューンから会談の申し込みが!!」

 流石に場がざわめいた。ついさっきまで命のやり取りをしていた憎き敵からコンタクトがあったのだから。

「……良かろう。どうせ電話での会談だろう」

「い、いえ…それが、テレビ電話です…」

 流石に驚いた。あの貧困に喘いでいるデカいだけの帝国に、テレビ電話の通話料が払えるとは思えなかったのだから。

 ともあれ、会談は始まった。素早くとの要請だったからだ。理由はカンキョハカーイにテレビ電話の高額な通話料はあまり支払えないからだ。

「……待たせたなガイチューン将軍」

【……通話料が惜しいから単刀直入に言おう。俺はダイオキシンの決定に賛成はしておらぬ。俺の管理する土地に進行した貴様の首を欲しているのだから】

 進行とは人聞きが悪い。余っている土地を有効活用してやっただけではないか。と、思うだけに留める。

【戦場は地球の日本国幌幌町。小さな町だが、そこで雌雄を決するそうだ】

「私もそう聞いておる。そして、貴様と同じく、その決定は受け入れられぬ」

【ダイオキシンの馬鹿は戦場を移す見返りとして、貴国から金を貰い、その金を糞くだらん事に費やした。別荘の城ひとつリフォームしたり、日本国各地にカンキョハカーイ幹部を飛ばしたり…最悪なのは、アスベストすらも日本国に飛ばしたのだ。名目は資源調達部隊の指揮、だったか】

 馬鹿は姉も同じだと思った。現在殺し合っている最中の敵に金をやるとは。

 だが、アスベストが飛ばされたのは吉報だ。このガイチューン将軍と同じ『カンキョハカーイ四天王』の一人にして、司法局のトップにしてカンキョハカーイ最大宗教の最高位、アスベスト教皇。その強さはガイチューンに勝るとも劣らない。

【フロンの奴は早々に見切りをつけて、同じ日本国のどこかに兵器製造工場を作ると、とっとと出て行ってしまったし、シーペストの野郎は相変わらず何を考えているのか解らん。兎に角、我がカンキョハカーイの内政はグダグダになったのだ。元よりダイオキシンは強さの他何もない、国家経営能力など皆無なのだからグダグダだったが、更に酷くなった】

 ほう、と感心した。

 姉の愚行は腹立たしいが、結果カンキョハカーイ四天王をバラバラにしたのだ。超強力な戦力を分散させたのは。棚から牡丹餅のようだが、結果そうなった。ここは素直に褒める所だ。

【俺もこのままダイオキシンに付き合うつもりはない。だが、曲がりなりにも俺は国軍元帥。数多くいる配下の兵の路頭に迷わす訳にはいかぬ。そこで、俺も日本国で貴様と決着を付ける事と、配下の者をその戦闘要員にする事を条件として、ダイオキシンの提案に譲歩したのだ】

 此処で漸く合点がいった。

「要するに、私達も地球で決着を付けようと言う事か」

 頷くガイチューン。渋い表情を拵えて。

【そうは言っても、俺に与えられた兵はかなり限られたがな。幌幌町で雌雄を決すると言うのならば、そうせざるを得ないのは理解できるが、配下の者すべて守る事は叶わなかった】

「ふむ、その心中は察するが、私的にはいい話だ。姉上と同じ、原住民を戦士として戦場に送り込めるのだから」

 やや沈黙の後、ガイチューンが発する。

【ケイティと同じように、自国の兵は使わんと言う事か。流石は姉妹。薄汚い思考が実によく似ておるわ。長女のアドンリィが居ればまた違った話になっていただろうに】

「貴様如きに我が国の内情を語る事は許されんぞ。で、どうするねガイチューン。原住民を使う事を了承しなければ、貴様の提案など飲まんぞ。そうであろう?誰でも自国の民は可愛いものだ。貴様が配下の兵をなるべく底辺から引き揚げようとしたようにな……」

 底辺とは言い得て妙だとガイチューンは思った。ダイオキシンの采配に任せれば、自分の可愛い兵士は無駄死になる。浮かばれぬ結果となる。故にダイオキシンに譲歩したようなものだから。

【ふん。腹立たしいが、いいだろう。その条件を飲もう。自国の兵士を疲弊させたくない心情は解るのでな】

 薄く笑ったプリシィ。地球の戦士がダイオキシンに勝てるとは思えないが、ダイオキシンの兵は減らせるだろう。そうなれば今度こそ自分の兵をダイオキシンに向けて数で押す事ができる。そうなれば確実に勝てるだろう。

 この勝負、どう転んでも自分の損にはならん。ガイチューンを殺した後、あの土地で再びガーデニングを行う事が出来るのだ。

「ふむ、話が早くて何よりだ、では、戦場はどうする?」

【こちらの提案を受け入れたのは貴様。戦場の選択は貴様に譲ろう】

 そう言われても、地球など片田舎の星の事など全く知らぬ。

 適当に日本国の地図に指を差して、ここだ、と簡単に決定した。

【日本国…倉倉くらくら町…此処に何がある?貴様の事だ、優位な条件があるのだろう?】

「知らぬ。興味など無い。適当に決めたまでだ。気に入らなければ貴様が指定しても良い。我が国でなければ何処だって構わぬ」

 納得したと頷くガイチューン。自国に被害が及ばなければ、何だって良い。それには多少の共感を覚えた。

 だが、二人の内容には決定的な違いがあった。

 ガイチューンは民の為、己の兵の為に自国以外の戦場に渋々ながらも納得した形なのだが、プリシィは土地が荒れなければ良かったのだ。

 自分の兵が何万人死のうが、あのガーデニングの土地さえ荒れずに手に入れば、なんだって構わなかったのだ!!

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