第78話:拾う神
凛音目線――
「大丈夫か?」
若い男の人ぽい。
「話せるか?」
無理だよ。逃げなきゃ。面倒なことになる。立ち上がろうとして前のめりに倒れ込む私を受け止めた時に、血が止まらない左腕に触れられる。
「うあっ!」
「って、怪我してるのか?」
ゆっくり私を座らせ、ウィンドブレイカーを脱がされる。逃げなきゃいけないのに…。動けない。
「これは…止血するから我慢してくれ。」
「あっ…うぅ…!」
「これで少しは大丈夫だ。もしかして軍の生徒か?」
まずい、軍関係者だ。じゃなければ軍の生徒なんて言わない。白軍でも赤軍でも敵軍だ…何をされるか…。黒軍も味方ではないだろうし。精一杯の力を込めて抵抗するが、もう体力も残っていない。
「俺は軍の関係者だ。だけどどこの軍でも関係ない。傷ついた者は助けるのがこの国の人間のあるべき姿だ。安心してほしい。病院にも連れていかない。うちんちで少し休もう。」
この人は信じられる目をしている。蒼桜にぃと同じ目。嘘をついていない目。どっちにしろ動けない。信じると決めて、助けてもらうお礼を言いたいのに言葉がもう出ない。でも表情を見ただけで分かったのかお姫様抱っこをされる。
「車の揺れが少し痛いだろうがあと5分でつく。我慢してくれ。」
人の肌の温かさに緊張が自然とほぐれ、意識が飛んでいく。その人の呼びかける声が遠のいていく。
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