第70話:ばれちゃった


凛音目線_____

 痣消えてないか。実家から飛び出して蒼桜君の家でバーベキューした次の日、お父さんにかなり怒られた。当たり前だよね、倒れたのに家飛び出したんだから。

 そして今のお母さんがなぜか荷物を取りに次の日一度戻ってきた。


「おねぇちゃん!帰ってきてたの!?」と飛びつく可愛い弟の優和を引き剥がしつつ

「あんた、帰ってきてたの?」と明らか嫌そうな顔をする義母さん。会うと思ってなかったから心の準備も出来てなくて余計に刺さる。

「夏休みなので。」

「そう…。」

 あんまり干渉されなかった…。良かった…。


 優和の着替えとか取りに来たけど、一晩だけ泊まっていくらしい。お父さんと優和がお風呂入ってる時にリビングで会ってしまった。緊張からかクーラーついているのに体温が上がって汗がでる。

「あんた、生きてたのね。」

「まぁ…軍に入ってもすぐに戦場に行くわけでもないですし、戦争に行ったとしても死ぬとは限らないので。」

「あっそ、お父さんから聞いたと思うけど弟できるから。そしたらあんた余計邪魔になるわね。」

 この人はいつもストレスが溜まると私に当たる。言葉だけで大体は済むが、たまに手を挙げたこともある。今イライラしてるのは保健の授業でやったマタニティーブルーってやつなんだろう。

「まだあんたこんな地味で根暗そうな髪型してるのね、恥だわ。」

 髪に触れられるのが嫌で避けると余計不快そうに言う。

「本当さっさと死ねばいいのに。」

 久しぶりのこの言葉が突き刺さる。下を向き黙っていたら余計イライラした義母さんが

「あんたの好きな神咲君、大和らしいわね。お父さんが言ってたわ。お父さん神咲君嫌いみたいよ。お父さん、あんたを黒軍の関係とは結婚させたくないみたいよ。どんだけ好きであっても結ばれないなんてかわいそうなこと。まぁ、その神咲君も大和ならいつ死ぬか分からないし、似た者カップルなんじゃないの? 大和は頭悪い生徒ばっかりだし、みんなで仲良く戦争ごっこして死んでいけばいいのよ。」

 何にも知らないのに!この人は何にも知らないのに!

 部屋に入っていく相手を追いかけ、肩に手をかけ、振り返らせ足を引っ掛けようとした瞬間。

「妊婦に手をあげるの?」

 私の動きが止まる。その隙に逆に技を決められ部屋の床に投げ出される。受け身を上手くとれず肩をテレビの台に強打する。合気道の有段者だったこと忘れてた。ふらふらと立ち上がりあざ笑う声を背に部屋を立ち去った。


 あの時の痣は結構色もサイズもすごいもので、隠してきたつもりだったけどばれちゃったか…。蒼桜にぃにもばれちゃってることはないよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る