第71話:何回目かの発作
羅希目線___
「それで、すっごく部屋も大きくて!」
凛音の話を聞きつつ二人でご飯を食べてた。とりあえず上手くやってるようだ。
「従姉妹がいるって言ってたけど会えた?」
「それがまだ会えないんです。」
「え、一緒に住んでいるのに?」
「ご飯も別々ですし、家も広くて…。どんな子なんだろう…。仲良くできるかなぁー?」
従姉妹ね…一条家か。聞いたことある気がする…。
「ねぇ、凛音。遊びに行ってもいい?」
「はい!!」
ということで放課後来てみた。…ひ、広い。物語に出てくる豪邸じゃないか、これは。
「凛音様の先輩ということで、凛音様がお世話になっております。どうぞごゆっくり。」
「井上さん、いつもありがとう!」とメイドの井上さんに声をかける凛音。本当にお嬢様じゃないか。
「これなら男子勢も来たがるだろうなぁー。」
「寂しいので来てほしいです!!!」
「じゃあ今度みんな連れていくね!」
「そういえば今日なんで三人は居ないんですか?」
「…これはあんま言ってほしくないんだけどね。また近々戦争が起きるかもしれない。」
「白軍との情勢がそんなに悪化してるのですか?」
「白軍もだけど…。どうも赤軍と白軍のスパイが黒軍に居るらしくてね、それで内部粛清が行われるかもしれない。」
「っ!?」
「それで私たち二人と奇龍はスパイの疑いはないって判断になったんだけど、班長と雨梨はまだ一応疑われててね…。」
「っ!!なんでですか!いつも二人は命かけて戦ってるじゃないですか!」
「そうだね…。一応普通科の生徒も含めて全生徒を疑ってるんだよ。それで今、上に呼ばれたり大変みたいなんだよね。特に雨梨は技術者でもあるから余計引き抜きの疑いがあってね…。」
「二人は違うのにっ!!」
嫌な予感がする。
「凛音大丈夫だから、落ち着いて。」
「だって、こんなのおかし…い…。」
しまった、凛音にするべきじゃなかった。膝から崩れ落ちる凛音を受け止める。
「凛音!凛音!」
「どうしましたか?…凛音、発作ですか。」
「貴方は玄…?」
「はい。お久しぶりです、九万里先輩。」と現れた玄と二人で凛音をベットに寝かせる。すぐに目を覚ますの分かってるけど、発作起こしたときはすごくその短時間が永遠にも感じる。
「凛音、寂しがってました。知られないようにしようとしてましたがずっと班の写真見てました。」
寂しいよね、そうだよね。
「寮戻ってきたらだめなの?」
「本人の意志次第ですね。」
強がって大丈夫って言って戻ってきそうにないな。
「お願いがあるんだけど、凛音のこと注意深く見ててほしい。それと従姉妹のことも。」
「猫音様のこともですか?」
「そう、ちょっと気になってね。」
「わかりました。」と姿を消して行った。本当に忍みたいだ。
「…羅希先輩?」
「凛音、大丈夫?」
「また発作ですか…。」
「うん。」
「すみません、迷惑かけて…。」
「大丈夫だよ。あのさ凛音。実家でも倒れたでしょ?」
「…痣ですか?」
「うん、それもあるけど、痣はきっと違う気がする。そうでしょ?」
「はぁ…羅希先輩には敵わないですね。」
そう言った凛音は肩の消えかけの痣を見せながらこう言った。
「簡単に言えば親子喧嘩です。義母にやられました。」
それから凛音は今までのことを話してくれた。
「…そっか。」
「ドン引きましたよね?」
凛音は自嘲気味に笑っていた。
「ううん。」
そんな凛音を抱き締めて
「今までよく頑張ったね。今までよく一人で生きてきたね。そして大和に来てくれてありがとう。」
この言葉しか出てこなかった。泣いてる凛音の細い体を抱き締めて、いつまでもこの子の幸せを願い続けようと思った。
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