第64話:やはり同期は特別
羅希目線_____
ケータイが鳴る。それが蒼桜君からの着信だって分かってる。
「もしもし、蒼桜君?」
「あぁ…。」
「どうしたの?この時間に電話なんて珍しいし、元気なさそうだよ。」
「言えなかった。」
告白の件だ。
「そっか…なにかあったの?」
「ここだけの話にしてほしいんだけど…。凛音寮出るって。」
「居心地悪かったのかな?」
私と同室は嫌だった?寮を出たいって思ってるなんて知らなかった…。
「前、おじいさんが学校来たの覚えてる?それでおじいさんと住むことにしたみたい。だから羅希の同室が嫌だったってわけじゃないよ。」
そんなところまで気がついてしまう蒼桜君は優しすぎだね。
「大丈夫?」
「そうだね、凛音が決めたことだから俺はなんとも言えないし、寂しいけどね。」
「そっか…。蒼桜君お泊まり会これる?もし辛いなら上手く理由作っておくけど。」
「大丈夫。みんなも俺も楽しみにしてたことだし、それに凛音も含めて神咲班でこうやって出来ることって、凛音が寮出たら限られてくるだろうし、盛り上げたい!」
「分かった。じゃあ準備進めるね!」
「よろしくね。急に電話してごめんね。じゃあおやすみ。」
「おやすみ。」
電話を切ると静かな夜の闇が濃くなった気がした。
「蒼桜君…。」
そう呟いた音は私以外の耳には入らず闇に消えていった。二人きりでも他人が通りそうな時は"班長"って呼ぶようにしてた。無意識的にそう呼ぶべきだと思っていた。なのにたまに"蒼桜君"と呼んでしまうのはきっと私の甘えから。どこかで蒼桜君は最終的に自分の側にいて、自分の支えになってくれるっていう自信の表れから。だからどんどん深くなっていく夜の闇に飲み込まれそうになっていく。
「もう、やーめた。」
そう声に出して布団に潜り込む。生暖かい夏の布団が空気が私を包んで離さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます