第55話:母親
凛音目線____
「凛音いい仲間が出来たな。」
「うん。」
「亡くなったお母さんも喜んでいるだろうな。」
「…そうだね。」
お父さんが亡くなったお母さんの話を再婚してから出すのは珍しい。今なら言えるかな…?
「お父さん」
「ん?」
「一条のおじいちゃんとおばあちゃんに会ったよ」
「…そうか。」
「昨日学校に来て、それで話したよ。」
「元気だったか?」
「うん。…ねぇ、なんでおじいちゃんおばあちゃんがまだ生きてること教えてくれなかったの?」
困らせるかな?もちろん答えは知ってるけど、ちゃんと聞きたかった。
「再婚したからな。」
だよね…。
「知らなかったみたいだよ再婚したこと。驚いてた。」
「言ってないからな。そもそもお母さんが亡くなってからは連絡すらとってない。結婚も賛成はされていなかったしな。お母さんが亡くなってからは半ば縁が切れたって感じだ。」
「なんか聞いてごめん。」
「いいさ。お前が大和に行くならいつかは向こうにバレると思ったし。一条家は黒軍の名門の家で、源九郎さんは有名な司令塔だった。お前のお母さんのお兄さんは有名な騎馬兵団の戦士だったみたいだ。お母さんも本当は黒軍に入る予定だったみたいだけど、体が弱いから大和の普通科に進学したみたいだ。」
「じゃあ、お母さん大和出身なの?」
「ああ。お母さんの話ちゃんとしたことなかったし、お母さんの話しようか。」
今まで話したことも無かったお母さんの話をお父さんはゆっくりと懐かしむみたいに話し出した。
「出会ったのは大学生の時。お母さんは文学部日本文学学科の生徒で俺は農業科で専攻は畜産。全く違う系統の学科だったから二年の終わりまでお互いを知らなかった。でも俺がお母さんのお兄さんと仲が良くなって、そしてお母さんと出会った。付き合い初めて二人とも自然が好きでよくピクニックとかしてな。大学四年になってお父さんは実家に就職することになって、お母さんは体が弱いから実家に戻ることになって、結婚しようって言ったんだ。もちろん向こうの親は大反対。黒軍の由緒正しい家に嫁がせる予定だったからな。賛成してくれたのはお兄さんだけさ。お母さんは一生懸命説得したんだけど、全然聞いてもらえなくてね。でもお兄さんが、こいつは高校も普通科で黒軍とあまり関わりがないし、黒軍に縛らないであげてくれって頼み込んでくれてね。自然が豊かだし、いいってことになったんだ。それで少しして凛音を妊娠して、凛音を出産した後からもっと病気がちになって亡くなったんだ。凛音の存在は知ってたはず。出産の時は立ち会ってたからね。でも、連絡が途絶えたし、わざわざ定期的に連絡を入れたら、そのうち一条家の養子にされてしまいそうで、定期的に連絡を入れることをしなかったんだ。だから中2の時に大和に入りたいって言い出して驚いた。黒軍の血はやっぱり流れてるってね。」
「だからすっごく反対したの?」
「純粋に戦場に行くことも一条家に近づくことも不安だし、高校で親元から離れて過ごさせるなんて想像出来なかったんだ。側にいてほしかったからね。」
「でも、今のお母さんが賛成したから大和に行くこと許してくれたんでしょ?」
「もう高校生なら子供じゃないし、本人の自由だって言われたからな。」
大和に通えたのは嬉しいし、その点では感謝しないといけないよね。でも、今のお母さんが賛成した理由は私の為じゃなくて、私がいなくなればいいと思っていたからだよ。そんなこと言えないよね。
「まぁ、なんか辛かったらいつでも帰ってこいよ。」
「うん。」
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