2章 召喚勇者と邪神の怨み

第1話 プロローグ

「陛下、マルスリオン帝国より親書が届きました」


「うむ。

 ありがとう」


 この国の宰相が城の最上部に近い場所にある部屋にノックをして入ると中にいた国王に手紙を届ける。

 親書を開けた国王が中から取り出したのは、一枚の手紙と数枚の絵。

 始めに手紙を読んだ国王は一緒に送られてきた絵の意味を理解した。

 同封されていたのは帝国の第二皇子ロイア。

 手紙の内容は、ドゥルヒブルフ王国第二王女のリリィへの縁談の申し込みだ。

 それを読んだ国王の額にはしわが寄っていた。

 

「陛下、内容の方は?」


「ああ。

 リリィへの縁談だ。

 だが、どうしたものか……」


「返答ですか。

 少し前に報告が上がっていますが動きが怪しいですからね」


 と言うのも、ここ数週間の帝国の動きはどこかきな臭い。

 帝国へ向かう商人たちは食料や武器・防具、衣料品などを大量に運んでいるという。

 明らかにどこかに戦争を仕掛けるつもりである。

 そのような国が縁談を申し込んでくるというのは何かがおかしい。


 それから数分経った。


「そうだな。

 まずは、リリィと話したい。

 対応はそれから考える」


 そう伝え終えるとドゥルヒブルフ王国国王クルスは再び手紙へと視線を戻して考え込むのだった。





 親書が届けられてから数日。

 国王の執務室に再び宰相が訪れる。


「陛下、ドゥルヒブルフ様が面会をしたいとのことです」


「なんと!

 すぐに向かう」


 机に向かっていた国王は立ち上がるとすぐに部屋を後にする。

 そして、向かったドゥルヒブルフ神に割り当てられている部屋では先日の親書の内容を超す衝撃的な話を聞くことになった。


 それは、魔王が発生したというもの。


 その報告を聞いて、国はすぐさま調査の指示を出した。

 魔王が発生したと思われる場所からドゥルヒブルフ神の提案によって冒険者を起用した調査となる。

 主導はドゥルヒブルフ神がおこなうとのことで国王クルスは宰相に話を通しておくように告げた。


 緊急性も有るということで調査結果は数日で国王のもとまで届く。

 その調査結果は、魔王の姿を確認。

 現在は山脈の間を眷属を連れて移動しているとのことだ。

 そこから、ドゥルヒブルフ神と早急に対応を話し合った結果、とある指示が出された。


「ドゥルヒブルフ神の認可のもと、異世界より勇者召喚を行う。

 直ちに、召喚の儀式の準備をせよ!」


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