侵入
賊徒らは何か秘密を握っているかもしれないことを、ミートはレクイカ達に話した。
賊徒らは強気だ。
こちらの要望には応じないだろう。
「砦に侵入し、頭領を討つかもしくは人質にしよう。それで、やつらの戦意は殺がれるだろう」
ミートの提案に、レクイカも頷く。
「そうね。こちらとしても、ゆっくりはできない。このままここに留まっていても、やがては線の雨に……」
レクイカは、成す術もない難民達を心配した。
「数から考えれば、正面突破は無謀すぎる。上手く侵入した後、私達だけならば砦を抜けられるかもしれないけれど、ここにいるこれだけの難民を置き去りにすることは、できないわ」
それからミートは、魔術師風の男のことについては、必ず生け捕りにしたいと話した。
できれば、砦の内部を探り、頭目の部屋やそれに囚われの女性達や部屋の配置を把握したかったが、時間もない。
その段階で失敗すれば、計画はなしになるし、こちらは騎士ばかりで偵察任務に長ける者もいなかった。
「やむを得ないけれど、一発勝負ね」
「レクイカ様」
今度はミカーが意見を述べる。
「念のため、民の中に砦の内部を知る者がないか、再度手分けして聞き込みをしてみましょう」
レクイカはこの案を受け、ミカーは再びミートをほらほらと、難民らの方へ押し遣る。
ミートがしどろもどろに民とコミュニケーションを試みる間に、商人がレクイカの前に難民の中にいた一人の旅人を連れてきた。
旅人が言うには、以前にこの砦を越える際に砦内に宿泊したことがある、とのことだった。
レクイカが是非覚えている限りの部屋の配置を教えてほしいと告げると、旅人は快く聞き入れ、簡単な図も書いてくれた。
砦には地下があったとのことで、見てはいないがかつて兵に聞くと地下牢があるとのことだったようだ。
おそらく囚われの女性達はそこにいる、とレクイカは目星を付けた。
二階、三階が宿泊施設になっており、旅人は三階に泊まった。四階には上がれなかったが砦の守将や兵の部屋があったのだろうと言う。
四階へ続く階段の位置はわかった。
頭目がいるのは先程顔を出した四階、中央付近の部屋なのだろう。守将の部屋だった最も良い部屋を使っているのかもしれない。
旅人は更に、宿泊した際に、部屋ですることもないので一階にある食堂の書架から本を借りて部屋で読んでは返しと何度か行き来しており、なのでよく覚えているが一階の階段の脇の部屋は物置だったと言う。
階段は、門を入ってすぐ左手に上階、地階それぞれへの階段がある。
「だと、あそこの窓は物置の窓、かしら……」
見張りもいないと言えさすがに門を真っ正面から入るのは無謀だろう。
戻ってきたミカーも途中からその話を聞いて飲み込み、
「ま、入って誰かいたならいたで、その時点で」
弓を掲げて、速やかに消去ですね。と述べた。
「ところでミートはまだ、あんなところで最初に話しかけた民とずっと話してますね」
「なんか汗ってる」
「さすがコミュ障騎士。交渉役は務まりませんので、せめて一番に窓に突っ込ませて囮役になってもらいましょう」
上階へ頭目を討ちに行く班と、地下へ捕虜を救助に行く班の二班に分けることにした。
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