第136話 エピローグ

この宇宙転生という話は、世の転生物はどうして人間と同じ生物が存在する世界に都合よく行くのだろうという疑問からうまれた架空のお話です。アイデアやストーリーの多くは友人から得たものだということも、彼の名誉の為に記録しておきます。


作中の主人公のモデルでもある私の友人ノムラについて。ここでは作中に合わせてノムラという表記を使います。

最初にノムラから送られてきたのが、宇宙転生の第一部にあたるものでした。その少し前に久しぶりに会って、どうして転生小説は都合よく人間がいる惑星に行くんだみたいなことをネタにして盛り上がったりしていたので、自分でも書いてみたのだろうと思いました。作中の転生を成立させる設定も、会った時に聞かせてもらったものでした。


それで感想を送ってネットで公開してみたらとすすめたりしていたら、自分では面倒なので代わりにアップしてといわれたので、私ノソンの手によって発表するなりゆきになりました。発表する際に文章を読みやすくしたり個人情報が出ないようにといった修正もしています。


ノムラがこの話のアイデアをどこから思いついたのか、少し書いてみたいと思います。本人に聞いても、これは実際に体験したことなのだという設定を崩さないためなのか直接は教えてくれないので、前に話したことなどからの推測になります。


まずガリヴァー旅行記、これは有名な作品だし作中にも登場させているので説明はいらないでしょう。付け加えるとしたら、こうやってネットで公開するときに文章をいじってもいいか質問した時に、ガリヴァーは改変に怒っていたけど僕は気にしないよとノムラは言っていました。ガリヴァー旅行記を読むと、確かにガリヴァーが自身の体験を発表するに際して内容を修正されたことに憤慨している文章が最後の方に書かれています。


次に不死販売株式会社。これは少し前に映画化もされたみたいですが、主人公が自動車事故で死亡し、未来で別人の身体でよみがえるというSF小説です。

交通事故での死亡や、別人への転生といった異世界転生に定番の要素が含まれていますが、こちらの方が昔の作品です。

この作品の精神だけの転生というのが、この宇宙転生の設定の元になっているような気がします。前にノムラとこの作品について話したこともあります。


精神だけの転生といえば、スターキングという作品もあります。これはアメリカの保険会社で働くゴードンが、未来の銀河帝国の王子と一時的に意識を交換するというスペースオペラです。一時的な意識の交換というのは、宇宙転生でもすこし修正して使われている設定です。

このスターキングには続編もあって、今度は身体も一緒に未来へ行きます。物語の最初でゴードンは精神科にかよっていて、前作での自分の体験を精神科医に話したりもしています。治療のかいあって正常に戻りかけたゴードンに、再び未来からの声が聞こえてくるという展開。

実はノムラも精神科に通っていたことがあり、ジョン・ゴードンみたいに異世界の体験を医者に話すわけにもいかないから代わりに文章に書いたんだみたいにも言ってました。


最後に、ここでいったん宇宙転生の話を終わらせる理由についても書いておきます。

それはノムラと連絡がとれなくなってしまった為です。失踪とかではなく、住んでいた部屋もきちんと引き払い、荷物などは実家に送ってます。

連絡先も落ち着いたら教えてくれるということだったのですが、今のところ何も連絡がありません。


ノムラがいなくなる前に送ってきたメールに、「スターキングへの帰還のあれは、時のロストワールドのあれで説明できそう」と書かれていて気になっていたのだけど、どういうことか聞く前に連絡がとれなくなったので自分でも考えてみました。


スターキングへの帰還のあれというのは、前作では精神だけだったのに身体ごと移動できるようになったことでしょう。「スターキングへの帰還」が続編のタイトルです。

研究の成果とは書かれているけど具体的には描写がなく、ふたりでどういう原理なんだとかはなしたこともあります。

そして「時のロストワールド」。これは同じ著者の書いたキャプテンフューチャーという有名なシリーズの作品です。だいぶ前にNHKでアニメになったこともあります。


時のロストワールドでは過去からの助けを求める通信を受けて、タイムマシンで過去へと旅をします。そして現代では破壊されて小惑星になっている火星と木星の間にある惑星カタインの人々を救います。

その方法なのですが、脱出用宇宙船の燃料に使う大量の放射性物質をある方法で手に入れます。それはさらに過去に旅をして探しにいくという方法。つまり半減期によって減少する放射性物質は、過去ならば大量に存在するはずだから。

そして大量の放射性物質を運ぶ手段ですが、そこに最初にでてきた未来へ通信を送る装置が出てきます。時を越えて情報を送ることが出来る装置を改造して、物質を送れる転送機のように使うというアイデアでした。


情報が送れるなら物質も送れるなんていうのはSFならではの荒唐無稽なことではあるのだけど、情報が物質と全く無関係なのかというとそうでもないのです。電波というのは電気の波だけれど光子という粒でもあるし、電線を流れる電気のデータは電子という物質を作っている粒子の一種です。もし電子だけでなく陽子や中性子という粒子も送ることが出来たら、理論的にはあらゆる物質を送ることもできることになります。


時のロストワールドでやったように情報を送ることができる装置を改良して物質も送れるようになれば、スターキングへの帰還でも現代のゴードンを未来へと移動させることが出来たのだろうというのが、ノムラのメッセージの意味するところなんでしょう。


もしかしたらノムラも同じ原理で異世界に身体ごと転移してしまったのではないか。

そんな妄想じみたことも頭に浮かぶのですが、誰かに言うわけにもいかないので、ここに書いておくだけにします。


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