第119話 お金とお菓子
ここでいったん、この世界でのお金についてまとめておきたい。この文章は転生から帰還してから書いているのだけど、転生時の記憶は時間がたつにつれてあやふやになってしまうので、忘れないように記録している。
まずお金の単位はペアで、銅貨1枚が1ペアとなっている。異世界語としては「2個組み」とか「1セット」のような意味をもつ言葉でもあるので、実際の発音はもちろん違うのだけど僕の頭の中にはペアという翻訳結果になっていた。
1ペアの価値は、日本円で100円位だろうか。屋台の安い食べ物は1ペアから買えることが多いし、野菜だと数個は買える。
4ペアの価値を持つ四銅貨は、銅貨よりもちょっとだけ大きくて四角い穴が開いている。
それから銀貨。これは四銅貨よりもさらに大きくて500円玉位。そして価値は15ペアとなっている。15というのは不思議で、地球の貨幣で15というのは見たこと無い。
四半金貨は25ペアで、これは金貨の4分の1の価値。アメリカの25セントなど25という数字のコインは地球にもあるので、これはまあわかる。大きさは銅貨と同じくらい。中央部だけが金で、周囲は銀色をしている。こういう二色のコインというのも外国のお金であったような気がする。
そして金貨。サイズは四銅貨と同じくらいで、厚さがすこし分厚い。価値は100ペアで実際に目にしたコインでは最高額。金貨よりも高いのがあるかは不明だけど、銅貨よりも低い0.5ペアの半銅貨はあるらしい。
赤い実の買い取り代金は金貨8枚なので、800ペアということになる。1ペア=100円とすると8万円だから、結構高く売れたことになる。その代金を金貨6枚と四半金貨2枚、銀貨10枚で受け取った。
「おなかすいた~。」
店を出るとマリアはまだお昼には早いというのに、そんなことを言い出した。
「ええと、たしかもう少し先にお茶やお菓子を出す店があるはずだから、そこに行ってみようか。」
「うん、いこういこう。」
テーブルを店先に並べている店がミルアの記憶にあったので、そこで何か食べられるだろうと思って提案してみたら、すぐに熱烈な同意が返ってきた。
店は記憶の通りの場所にあり、何か飲んでいる人だけでなくお菓子らしきものを食べてる人も確認できた。店内もガラス越しに見えるようになっている。
入り口を入ってすぐのカウンターで注文をしてお金を支払い、テーブルに持ってきてもらう方式のようで、ちょうど何か注文している客も確認できた。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
「こんにちは。」
店員の声に答えて、カウンターの前にすすむ。メニューはカウンターに置いてあり、後ろの壁にも本日のおすすめセットみたいなボードが設置されてる。
「ええと、飲み物とお菓子のセットでどんなのがありますか。」
メニューに目をやりながらも店員に聞いてみる。ざっとみたところお茶が3種類でお菓子は5種類くらいか。ジュースやワイン、食事的なものもあるけどそれは今回の目的外。
「そうですね、本日のお茶とお菓子のセットが10ペア、好きなお茶とお菓子で15ペアです。あとポットのお茶とお菓子盛り合わせのゴールドセットというのもありますが、こちらは25ペアとなっています。」
「そうですか。マリアは何か食べたいのあるかな。」
説明を受けて、マリアにも聞いてみたけど、
「たくさんたべたい。」
という返事だった。
「それじゃあ、本日のお茶とお菓子のセットを一つ。それからゴールドセットを一つでお願いします。」
注文をして代金を支払うと番号の書かれた札を渡された。ゴールドセットのお茶を何にするか聞かれたけど、よくわからなかったのでメニューの一番上にあるものにした。
「おかしまだかな。」
入り口から近い席に座ると、すぐにマリアがそんなことを言う。
「そんなにすぐにはこないよ。でも楽しみだね。」
「うん。」
そのあとは特に会話はせずに、ぼんやりと周りを眺めていた。店内には他にも数組の客がいて、外のテーブルでも何人かが飲み物を飲んでいるのが見えた。
「おまたせしました。」
マリアがお待ちかねのお菓子、とお茶がやってきた。ワゴンに乗せて運ばれてきたそれらをテーブルにならべると、番号札を回収して戻っていった。運んできたのはカウンターにいた女性店員で、今の時間はひとりできりもりしているようだった。
僕の前に置かれたのは本日のお茶とお菓子のセット。お茶は麦茶くらいの色で、香りはそれほどなく、苦味はある。菓子は長方形のビスケットみたいな焼き菓子がいくつか皿に乗っていた。
マリアの前には大きめの皿に3種類の菓子が盛られている。細長いポテトフライのようなもの、黒くて丸いおはぎのようなの、そしてロシアケーキみたいな丸い焼き菓子の中央にジャムのようなものがのっている菓子だった。
「どれもおいしそうでまよう。」
などと言いながら、自分のだけでなくこちらの菓子まで見ていたので2つほど手にとってマリアの皿に乗せた。
「よかったら、これも食べていいよ。」
「ありがとう。じゃあかわりにこれあげる。」
とポテトフライみたいなのを何本かくれた。食べてみると、イモはイモでもジャガイモよりもサツマイモに近い甘みがあるイモを、カリッとするまで揚げてあるようだった。砂糖を使っていない芋けんぴみたいな菓子といったらいいのだろうか。
マリアにわけた長方形のビスケットみたいな焼き菓子は、味もビスケットみたいだった。少ししっとりとしていて、イギリスのショートブレッドにも近いかも。
あとはマリアが食べるのを見ていただけだけど、黒いおはぎみたいなのは中まで黒くて、中に細かく刻んだ何かが練りこまれているようだった。
「これ、すごくあまくておいしい。」
というマリアの感想だった。ロシアケーキみたいなのはジャムがあるのが違うけど、周囲の生地は長方形のビスケットと同じみたいだ。
お菓子を食べ終わったあとも、お茶をのんでのんびりしていた。僕もマリアのポットのお茶から分けてもらって2杯目を飲みながら、これからのことを話したりしていた。
「それじゃあ、あとは買い物をして帰ろうか。」
「おかしも、おかしもほしい。」
「はいはい、おかしも買って帰ろうね。」
そういえばこの店では持ち帰り用の菓子も売ってるのだろうかと思ってたのだけど、それは少し後に来た客によって判明した。
その客は通常よりも魔力が多かったので、店に入ってくる前に近づいてくるのが感知できた。しかし店に入ってきたときにはだいぶ驚かされることになった。
ドアを開けて入ってきたのは、背の高さは大人の胸くらいまでで僕らよりも少し高いくらい、服装はズボンにチョッキで手には買い物カゴのようなものを持っていた。そしてその客は人間ではなかった。
服を着て二本足で歩くぬいぐるみの犬というのが最初に見たときの印象だった。
その動くぬいぐるみの客は、あたりまえのようにカウンターでお金をはらってお菓子の包みを受け取ってカゴにいれた。そしてそのまま店を出て行った。
「ねえ、いまのみた?」
さすがのマリアも驚いたようで、そんな感想を述べた。
「そうだね、びっくりしたよ。あれも使い魔なのかな。」
「このみせのおかし、かってかえれるんだよ。」
そっちか。マリアの関心はお菓子が第一でゆるがないようだった。
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通貨まとめ
お金の単位はペア。1ペアで屋台の安い食べ物が買えるくらい。
半銅貨(0.5):あまり使われていない。
銅貨 (1) :10円玉くらいのサイズと色。
四銅貨(4) :四角い穴あきで銅貨より大きい。
銀貨 (15) :500円玉くらいのサイズで銀色。材質は銀ではなさそう。
四半金貨(25):サイズは銅貨程度。周囲が銀色で、中央部が金。
金貨 (100):サイズは四銅貨程度だけど分厚い。周囲が銀色で、中央部が金。
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