第82話 見学

僕が見たかったのはロボットの研究をしているエリア。地図をみると一度建物の外に出たほうがよさそうだったので、外からまわることにする。

目的の建物は見学者が多いみたいで、見学用に入り口もわかれていたのでそっちから入る。


中は見学者用の展示がしてあるコーナーがあり、その先に実際の研究開発している部署をガラス越しだけど見ることができる。


この世界のロボットは、自動車の自動運転や建物内で配達するロボットカートは実用化されているものの、足で歩くタイプのロボットはまだ発展途上のようだった。

ダニールという優れたロボットの見本があるのだから、それを参考にすればすぐにでも実用的なロボットが出来そうなものだけど、そうでもないようだ。


通路を歩きながら研究途上のロボットを眺める。地球でも見たようにな4本足で犬みたいなロボットはわりとうまく動いているようだった。机などの障害物があると避けて進んだりしていた。


見学用のコースをぐるっとまわると最初の場所に戻ってくる。


「ありがとうございました。」


付き合わせたアンナさんに礼を言う。


「いえ、他に見たいところは無いのですか。」


「そうですね。見学できるところだとここぐらいですかね。」


バイオ関係とか、金属などの材料の研究は見てもそれほど面白そうではなさそうだし、よくわからないだろう。


「ロボットは面白かったですか。」


「自動運転の車や荷物を運ぶカートは実用化されてるのに、歩くロボットがそうじゃないのは不思議な感じがします。」


「自動車はともかく、荷物を運ぶカートはそれほど普及はしていないと思います。私は初めて見ました。」


「それじゃあ、まだ研究途上なのかもしれませんね。」


そのまま部屋にもどって、アレク技官が迎えに来るまでのんびりしていた。



「それじゃあ少しはやいけどお昼にしよう。」


アレク技官がきて、朝と同じ食堂に行った。


「どこか見学に行ったかね。」


食堂のテーブルで食事をしながら聞かれた。


「ロボットの研究開発を見ました。意外といっては失礼ですが、それほど進んではいませんね。」


「それは昨日の彼と比べればどんなのだって見劣りするだろうね。でも奥の方ではもっといろんなことをやってるみたいだ。」


「そうなんですか。」


「義手や義足としても使えるくらいの人間に近い形の物も研究されていて、これは彼の修理用でもあるみたいだ。」


「修理用って、ああ昨日もイスから立たなかったからどこか具合が悪いのかもしれませんね。」


「そうなんだよ。それに君のおかげで僕のクラスもアップしたので今まで知らなかったことにもアクセスできるようになった。」


「クラスのアップとは何ですか?」


僕のおかげと言われても、何かした覚えはない。


「ああ、昨日のことさ。あの部屋に呼ばれたことで、僕も秘密を知る立場になったわけだ。あそこには各部門の長とか、特別に呼ばれた者しか入れないんだ。」


「そういうことですか。秘密保持の為に、みたいな感じですか。」


「まあそんなところだ。そして秘密を知った者にだけ話せることもあるんだ。」



昼食を終えるといよいよ飛行場へ出発だ。研究所から定期的に運行しているバスがあるのでそれに乗っていく。飛行場も研究所の一部で、航空機関係の研究や実験に使われているらしい。宇宙に行くのだから飛行機じゃなくてロケットじゃないんだろうかと思ったけど、行けばわかるだろうと特に聞かなかった。


飛行場の格納庫にはスペースシャトルみたいな機体があった。ジャンボジェットみたいな胴体に大きなデルタ型の翼があり、翼の根元にはジェットエンジンらしき物も付いていた。

スペースシャトルにはジェットエンジンなんて付いていなかったのでそこは違うけど、全体的なシルエットとしてはそんな印象だった。


「これに乗るんですか。」


「そうだ。決心は変わらないかね。」


「それはまあいいんですが、これはどうやって飛び立つんですか。」


スペースシャトルみたいに燃料タンクや補助の個体ロケットをつけて垂直に離陸するなら今の時点で横向きに駐機しているのが不思議だったので質問した。


「どうやってって、普通に滑走路から飛び立つはずだが。」


「そうなんですか。」


ちょっとおどろいた。


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