第67話 外遊び

テレビを見終わってからも、なし崩しに子供達と遊ぶことになった。

ヒトの男の子は僕を捕まえているし、サラにもひまそうだから一緒に遊んでといわれてしまった。

他の大人は何をしているんだろうと聞いたら、食事の用意や掃除、それから畑仕事なんかもしているらしい。いつもは面倒をみてくれる大人がいるみたいだけど、今日は何か忙しいみたいで子供だけで過ごしているということのようだ。これは主にサラが話したことで、他の豚人の子も補足的に説明してくれた。


「何しようかな。いつもは何してるの。」


「外で遊びたい。」


とサラが質問に対する回答ではないけど希望を出してくれた。


「じゃあ、外にするか。ボールとかあるのかな。」


さっきのテレビでサッカーみたいな競技をやってたから、ボールとかで遊んだりもするはずだ。


「あるよ。持ってくる。」


と別の男の子。


「それじゃあ外の広場で集まろう。」


「あー。」


ヒトの男の子もわかってくれたみたいだ。僕は靴に履き替えるのに建物の入り口に向かうが、子供達は別のところに靴があるみたいでどこかに走り去った。



「それじゃあいくよ~。」


まるく輪になってボールを投げあう。ゴムではないみたいだけど何か柔らかい素材で、中は空気らしく軽い。

相手は幼稚園くらいの子なので、下から山なりに投げた。

ボールはいったりきたりしながら、ときどきは後ろにそれて拾いにいく。僕に戻ってくる回数が多めな気がしたけど、僕からはなるべく均等になるように投げる。

たまに、見ているのとは違う方向に投げたりというフェイントも使ってみる。最初は意表をつかれて後ろにそらし、サラなどは「ずるいよー。」と文句を言いながらそれでも楽しそうにボールを追いかけていた。


その後は手から足に切り替えて、ボールを蹴って転がした。手よりもボールのコントロールが難しいみたいだったけど、足の内側で蹴るインサイドキックを教えたらだんだんうまくなってきた。

子供の動きを見た感じでは豚人もヒトも身体能力的にはそう変わらないみたいだ。


「他に何かないの~。」


ボール遊びに飽きたのか、サラから注文が出た。


「他にかあ。何があるかな。」


他の子もボールを蹴るのをやめてこちらを見ている。何かできることあるかなあ。


「うーんと。じゃあ歌と踊りでもやるか。」


さっきのテレビ番組でも歌とかダンスとかはやってたので、そういうのもありだろう。ただし僕がやるのだと地球の歌だから、わかりやすいもので。


「じゃあやってみるよ。最初は頭~。」


そう言って手を頭に乗せる。


「肩、膝、足~。」


言語が違うしメロディーもうろおぼえだけど、適当なリズムに合わせて手を肩、膝、足と移動させる。

もう一度、頭、肩、膝、足とくりかえして、最後に目、耳、鼻、口と続いて終わり。


「わかったかな。じゃあ今度はみんなでやってみるよ。」


なんだか幼稚園の先生になったみたいな気持ちで、先導する。この歌は身体の部位を言って、その場所に手で触れるというシンプルなものなので異世界人でもわかりやすいだろう。たしか英語バージョンもあったはず。


リズム感については個人差があったけど、それでも皆わりとうまく踊ってたと思う。


「ねーねー、他には~。」


と催促されたけど、思いつかなかったので誰か知ってる歌とかないのと子供にふりかえしたら、サラともう一人の女の子が順番にやってくれた。

なんとなく聞いたことがあるような気がしたから、テレビでやっていた曲かも。

ヒトの二人も歌えはしないものの、いっしょに踊ってた。

そういう動きからすると、ヒトの知能が豚人に劣るようにも思えないので、言葉が話せないのが謎だ。


「みんな~、そろそろお昼ごはんよ。」


声のした方を見ると、バンガローなどに続く通路の途中で手を振ってる人がいた。


「誰か呼んでるから、これでおしまいかな。」


「またあそぼうね。」


サラ以外の豚人の子もそんなことを言って走っていき、ヒトの男の子もぶんぶん手を振って、女の子は軽くこちらに頭をさげてから通路の方に移動していった。



「子供達と遊んでいたのですね。」


背後で声がして振り返ったらアンナさんだった。いつの間に来たんだろう。


「ええ、皆元気ですね。」


「私達もお昼にしましょうか。」


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