第33話 怒ってる女の子
タニタが怒っていたのは、僕が言い訳的に言った無理にお願いして家に来たということに対してのようだった。僕としては異世界のマンガが読みたいというので少ししつこく言ってしまったかなというのと、タニタがお母さんにあれこれ聞かれないようにわかりやすい理由として持ち出したのだけど、タニタとしてはそうではないんだということらしい。
「私が読みたいの?って聞いて、カンカが読みたいって言った。」
タニタがさっき言ったことを繰り返す。怒ってるせいなのか無口にもどったというか、語彙が少なめな感じになっている。これはプールで家に行っていいかと言ったのの直前の話か。言われてみればタニタが先にマンガを読みたいのか聞いてきて、僕が読みたいから家に行ってもいいかと尋ねたという流れだな。
なので、
「そうだね。ごめんね。」
と語彙を少なめにしてあやまっておく。長々と説明しても言い訳みたいだし、そういうのを求めているわけではないだろうから。
そのまま黙って二人でお茶を飲んだ。
「じゃあ、そろそろ帰るね。」
お茶を飲み終わった僕は、タニタに言った。
「あ、うん。」
とタニタ。
「アイリア面白かったよ。」
と言っても、
「うん。」
と短い返事。まだ怒ってるわけでも無さそうだけど、少し気まずい感じだ。僕としては誰かと気まずくなっても気にしない方なのだけど、今は一時転生中だから僕が帰った後のことも考えておく必要はある。僕のせいで身体を貸してくれたカンカの人間関係に問題が起きたら申し訳ない。
なので玄関まで見送りに来てくれたタニタに、
「さっきのところまで一緒に来てくれないかな?」
と言ってみた。
「えっ。」
「帰り道がよくわかんなくて。ダメかな?」
この帰り道がわからないというのは嘘だ。一緒に歩いている間に多少は関係回復できるかなというのと、何かをお願いして了解してもらうというのにも効果があるのではと考えたからだ。
「んー、ダメじゃないよ。じゃあ外で待ってて。」
タニタはそう言って、母親に言うためなのか小走りで家の奥に入っていった。
家を出た路上で帰り道を思い出していると、タニタが出てきた。
「お待たせ。」
というのに、
「いや、今来たとこだから。」
と返したら、
「ふふっ。」
と少しうけた。
それから黙ったまま、一緒に歩く。
「この辺までくれば、あとはわかるよ。」
さっき待ち合わせをした付近にきたので、そう言ったのだけどタニタはそのまま歩いてる。
「もうちょっと。」
「えっ。」
「もうちょっと一緒に歩いてたい。ダメかな?」
と聞かれたので、
「んー、ダメじゃないよ。」
と答えてみる。
それを聞いて、タニタが笑う。もう怒ってはいないようだ。
僕の家まで半分くらいのところで、タニタは帰っていった。とりあえず気まずい状態からは回復できたので、一安心といったところ。しかし逆に仲良くなりすぎるのも良くないのか。僕が帰った後は、元のカンカの生活が続いていくのだから。
そんなことを考えながら歩いてると、家が見えてきた。手前のライラの家の庭では、ライラがミーカと何かしていた。散歩から帰ってきたところかな。
「やあ、ライラ。それにミーカ。」
ミーカは軽く吠えて僕に答えてくれたけど、ライラは黙っていた。ミーカが僕の方に来たので、柵ごしに手を伸ばして相手をする。
「今日はどこに行ってたのよー。」
とライラがいつものように語尾を延ばした口調で聞いてきた。
「ん、タニタの家だよ。マンガを読ませてもらったんだ。」
「どうしてよー。タニタとはそんなに仲良くなかったのにー。」
そう言われると確かに教室で隣の席のわりにはタニタと話したカンカの記憶はほとんどない。僕が一時転生してからの二日間で、それ以前の一週間よりも話してるだろう。
でも僕が誰と仲良くしようとライラには関係ないような気もするけど、それは言わないで、
「それじゃあ、また明日ね。」
と、無難に挨拶して別れようとしたが、
「私の胸、さわったくせにー!」
ライラはそう叫ぶと家の中に入っていってしまった。
えーと、これはいったいどういうことなんだろう。
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登場生物まとめ
カンカ:僕の一時転生を受け入れてくれた男の子。
ライラ:カンカの幼馴染。眼鏡っ子。
タニタ:カンカの左隣に座ってる女子。無口。マンガ好き。
ミーカ:ライラの家で飼っている犬みたいな動物。
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