第31話 秘められた目の力

学校が終わってから、タニタの家でマンガを読んでいる。

第三話「森のアイリア」は二話からの続き。すっかり元気になったアイリアは、礼を言って立ち去ろうとするが引き止められる。自分を助けてくれた老夫婦の願いを無視にするわけにもいかず、しばらくいっしょに暮らすことに。

森の中での生活は、アイリアに小さかった頃のことを思い出させる。回想でも現在でも魚を釣って食べたり、木の実をとってきてジャムを作ったりするアイリア。

しかしそんな穏やかな日々も長くは続かない。猟犬を連れた男達が森にやってくる。

老夫婦の小屋を訪ねてきた青年もまたアイリアを探す一人だった。しかし老人はそんな子は知らないと嘘をついて追い返す。

森での猟犬や男達をやり過ごして帰って来たアイリアは、老人から自分を探しにきた青年の話を聞く。回想シーンに出てきたアイリアといっしょに魚をとったりしていた男の子がその青年だろうというのが示唆される。

老夫婦を巻き込みたくないアイリアは、今までの礼を言って家をでる。ちなみに老人がアイリアがいないと嘘をついたのは、単に別れるのがイヤだったから。

森の中の道を歩くアイリアが少し開けた場所にくると、背後から青年が声をかける。猟犬と男達もでてきて、周りを囲まれるアイリア。

同行を求める青年と、断るアイリア。しびれを切らした男達は青年が止めるのも聞かずに猟犬をけしかけようとするが、なぜか動かない犬。むしろアイリアを恐れて後ずさる動きをみせる。

武器を手にして襲い掛かろうとする男達も、アイリアの髪の中の目が光ると急に力を失ったかのように倒れこむ。青年も身体からエネルギーが奪われたかのような感じがして膝を地面につく。

その場を立ち去るアイリア。


ここで二話からの話がひと段落して、アイリアの過去や能力も一部がわかってくる。植物からだけでなく動物や人間からも生命力を奪う力。

タブレットから顔をあげるとタニタがこちらを見ていた。


第四話は「さよならアイリア」で、タイトルからしてこれで終わりだろう。

病院のような建物にいるアイリアは誰かのお見舞いに来ているようで、ベッドの脇に座っている。

建物の周囲は自然を生かした公園のようになっていて、入院患者らしき人が散歩していたり遊んでいる子供もいる。アイリアは少し疲れたかの様子でベンチに座っていたが、暇そうだと思われたのか寄ってきた子供達に誘われて一緒に遊ぶことに。

かくれんぼの鬼になったアイリアは皆を探すがなかなか見つからず、こっそり後ろの目の力を使う。生命力を感知する目の力で、物陰に隠れている子供を見つけ出す。生命力が低下していて見つけにくかった子がいたので、目の力を使って生命力を足しておいたりもしていた。

別の日にまたお見舞いに来ているアイリア。前よりもだいぶ回復している様子。同じ部屋に来ていた人から謝礼を渡されるが、お金は返してタブレットみたいな物だけを受け取る。タブレットにさわるとアイリアの写真が入った身分証明書らしきものが表示される。身分証明書入りのタブレットは僕らが学校に持って行ってる物もそうだけど、それよりも表示機能が良いタイプみたいだ。

その後はまた子供達と遊ぶ。前に生命力を足しておいた子供も順調に回復してるようで、アイリアの後ろの目でもはっきりと見えるようになっていた。

場面は変わってどこかの教室。先生が転校生を紹介する。教室に入ってくるアイリア。



「うーん、面白かった。」


僕は手にしたタブレットを置いて、飲み物に手を伸ばす。


「どうだった。アイリアかっこいいよね。」


タニタがお菓子を食べながら言う。

僕はお茶を飲み込んでから、


「最初の話が学校で始まって、途中は話の感じが変わるけど最後はまた学校で終わるのがまとまりを良くしてるね。」


と返事をした。僕も大球人の身体なのだから、口で食べながら同時に鼻で話をすることは肉体的には可能なのだろうけど、地球人としての感覚がどうにも邪魔をしてしまう。

無意識ならば出来るのだけど、意識してしまうとダメだ。


「片目のアイリア」というマンガは話のパターンとしては地球にあるものとそう大きな違いはない気がする。少し変わった転校生であるとか、追われる超能力者みたいなのはわりとよくあると思う。

生命力を奪ったり与えたりするのは超能力というよりかは吸血鬼っぽい感じもする。そういえばこっちの世界に吸血鬼みたいな伝説はあるのかな。



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