2.参:The WKASETk vs 生存中の六媒師

 六媒師。

 それは、

  リーダー:レトウス、

 副リーダー:アザリガ、

 情報収集係:ロウトウ、

  防御担当:アリナ、

  進化担当:アカリ、


 そして、アゲインという人物で形成された特殊部隊とも言えるものである。

 アゲインの本名はアゲイン・ワン。まさに謎の名前であったが、とある国家に殺されたという情報が現在広まっている。

 しかし、その話を聞くたび六媒師の残された五人は口を揃えて言うのだ。

 「絶対」と。



「くっ」


 館の主であり余でもある、The WKASETkはアカリの出現によって苦戦していた。

 そして何より驚いたのはアカリが第十六形態で迫ってきたことである。速い上に、攻撃力も強力。悔しいが今の余ではこの者を加えた五人には敵わぬ。

 二時間ほど激しい闘った後、この結論に辿り着いた。

 仕方ない。気は進まぬが、この黒い体を利用して逃げ、力を蓄えるか。

 そう思い、自分の黒い体を更に黒くしようとすると、


「そうはさせぬ!」


 素早くロウトウが反応し、余に居合い斬りを叩きつけた。


「うぐ!」


 思わず声は出て、蹌踉めく。

 完全に余は相手を舐めていたのだと、ここで気付いた。

 そして余は方向を転換。六媒師の方向にこの技を放った。


暗黒龍の黒光線Dark Ray of Dark Dragon


 余の技により闇の龍が召喚された。

 闇の龍は、レトウス・アリナ・アカリに突進していき、爆音が発生する。


「うう」


「アリナ!!」


 龍はアリナの百のバリアを破壊した。


「くそおおおお」


 余は三名に勝てたと思った。しかし、


「俺は! 最後まで諦めねえ!」


 最強の防御力を誇るアリナは倒れているというのに、余に立ち向かうか。

 余は思わず立ち向かうレトウスに苦笑した。


最強の雷Առավել ուժեղ կայծակ


 レトウスの技であり十大魔法のうち一つ、『最強の雷Առավել ուժեղ կայծակ』。電撃系の大技で直撃した者はほぼ確実に感電死する。まあ、余には効かぬのだが我が黒龍には効いているようだ。

 そしてアカリも防御に加勢し、レトウスはその『最強の雷Առավել ուժեղ կայծակ』を使い、黒龍を足止めした。


「いや、余は勝てるはずだ」


 そう余は自分に言い聞かせた。

 しかし、またもや背後の注意を怠った。


「俺様を…忘れられちゃあ困るねえ」


 アザリガだった。


Tornadoトルネード


 うぐっ強いな。流石だ。

 そう思った時にはもう遅い。

 余の前にはロウトウが出てきていた。

 全員本気で来ているなと気付いた。

 ロウトウだけは、本気になるためにいくつかの条件が必要なのだが、その条件全てをクリアしているようだった。

 条件一、敵が自分の弱気より弱くないこと。

 条件二、自分は一度倒されていること。

 余はそれを知っていてロウトウを倒した覚えはないのだが、いつの間にかロウトウは自滅し、レトウスによって本気にされてるようだ。

 そしてレトウスとアカリは黒龍を撃破してしまった。

 余はどうすれば良い!?


「皆、これで決めるぞ! 準備はいいな!?」

「はい!!」


 レトウスの一喝で六媒師はまとまった。

 レトウスの『最強の雷Առավել ուժեղ կայծակ

 アザリガの『最強の斬撃Sterkste Sny

 ロウトウの『本気必殺一撃』

 アリナの『光ボス石の矢Light boss stone arrow

 アカリの『第十六形態最大攻撃』

 五つの技が余に当たった。


「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 それは有り得ない!解せぬ!

 余は信じられない…信じられなかったのだ!

 余は…余はⅩ魔物と呼ばれる、世界に十体しかおらぬ最強の魔物の一生物だぞ!余はな…このような者たちでは倒せぬ…!

 そしてそれが…遺言となった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 その夜、恐怖の館と呼ばれていた難攻不落の館が攻略された。

 攻略者は、六媒師。

 それによって時代は大きく動き出す。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 この頃。一つの国家、チレ国では…


「六媒師が遂にやったか」


「はい」


 一人の青年と、一人の少年が話していた。

 二人はそう言うと、何がおかしいのか大笑いした。


「それじゃあ次は…どう動かすかな?」


 少年は王座に座り、チェスのキングを見つめた。

 少年の目には、美しい赤の執念が取り憑いていた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして世界三大国家のうちの一つ、ロセイア国では…


「館が…落ちたの?」


「はい、王女。これによって西への攻略が容易となります」


 王女とその年老いた側近が会話をしている。

 彼女たちは美しい満月を眺めていた。


「でも、大分きついね。フェーリンドも動き出すんでしょ?」


 王女は言った。

 その目はどこか先の未来を見ていた。

 しかし、


「確かにそうですが、相手にとって今の敵はソーリン。フェーリンドはその先なので暫くその国家が責めてくる心配は無いかと」


 側近がそう言うと、


「でも、攻めてくる可能性だってあるんでしょ?」


 そう王女は言った。


「誰!?」


 彼女は振り返った。

 気配がしたのだ。

 彼女が見た方向には、別の老人がいた。


「気付くとは…流石だな、ヒナよ」


 その声を聞くと、女王・ヒナはその次の言葉を待っている様な視線でその老人を見つめた。

 老人はそれを察し、言った。


「そうじゃな、目当ての男が見つかったのだが」


 瞬間、ヒナは嬉しそうな顔をした。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 世界三大国家のうちのもう一つ、アベーカ国では…

 ワスィートゥーン城で王が悩んでいた。


「あの館におびえていたラスカ王がついに動き出すのか、まずいな。ならば同盟を選ぶしか無いか…」


 景色を見つめながら、そう呟く。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 次の朝、レトウスは電話を使っていた。


「ああ、そうだ。お前らが言ったミッションは全て達成した。そちらにどのような得があるか気になるが…」


 受話器の中から声が聞こえる。

 レトウスはその声の相手に苦笑する。


「確かにな。俺には関係ない。ああ。…ところで少し寄り道させて欲しいのだが」


 レトウスはツガヤの森がある山を見つめた。

 そして電話を切り、こう呟いた。


「ツガヤの森…か…」


 風が吹き、落ち葉が舞った。


「ふっ」


 レトウスは笑った。

 季節は秋であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る