アメリカ版「蛍の墓」?~「ザリガニの鳴くところ」

“ Where the crawdad sings “

by Delia Owen

https://www.amazon.co.jp/ザリガニの鳴くところ-ディーリア・オーエンズ/dp/4152099194



このタイトルって『ザリガニの鳴くところ』

になっちゃうよねえ。ザリガニ鳴かないよねえ、と娘と話してました。例によって、散歩の間、娘に私が今読んでる本の話を無理に聞かせるのですが、ひとくちに言って、「火垂るの墓」のアメリカバージョンみたいだったから、主人公の名前を節子として話しました。

舞台は60年代、9歳のカヤのは両親と兄弟3人と暮らしていましたが、母がある日失踪、姉、兄も次々出ていき、ついには父が帰って来なくなります。


ソーシャルワーカーに小学校に連れていかれたものの、”DOG” さえ書くことができずイジメられたカヤは、家に逃げ帰り、貝と干し魚を売ることで食い繋ぎます。そう、ここはノースカロライナの湿地帯(マーシュ)。カヤの住む小さな家には電気すら通ってなく、移動にも舟を使うのです。カヤは街の人間からはマーシュガールと呼ばれ、差別され、避けられるのですが、テイトという年上の少年に字を教わり、マーシュの動植物をスケッチしたり採取したりしながら成長します。

テイトが進学のためにカヤの元を去り、美しく成長したカヤは、人気クォーターバックだったチェイスと付き合います。そしてチェイスがある夜、火の見櫓から転落死し、カヤに容疑がかけられるのです。


辛い!

また美しい女の子が辛い目に遭う話を読んでしまった〜!

と、中頃まで読むのが辛かったです。だってカヤは字が読めないから、母親から来た手紙を父親に読んでもらおうとしたら燃やされるし、移動が船だし!町の人は汚いだの、夜目が光るだの言うし。


でも無学でど貧乏だったカヤはマーシュの生態系の研究で本を出して、まともに暮らせるようになるのよ。海洋研究所での職のオファーも来たり。でもお金ができても家を離れない。


カヤのマーシュに対する愛着は、「風と共に去りぬ」のスカーレットの、タラ(スカーレット所有の農園) を思い起こさせました。

「カヤの愛した人たちはいつもカヤの元を去ってしまう」けれどマーシュは、いつも彼女と共にあった。南北戦争で財を失ったスカーレットがタラの農園に生きがいを求めたようにね。


公判では弁護士が町の人の偏見と差別を指摘して、チェイスが死んだ夜、カヤが街にいなかったことを強調して勝訴!

いい仕事するじゃん!

思わず私もガッツポーズでした。

ハッピーエンドです。


で、ここからネタバレです。












カヤ、やっぱり殺してました。

まあね。

チェイス、他の女と結婚したくせに別れてくれなかったからね。

あー

そういえば裁判の時

「私ここにいなきゃいけない?」

とか捨て鉢な態度だったわ。

まさか勝訴するって思わなかったのね。

ネックレスが現場から見つからなかったの、

ザリガニが持ってったという私の名推理も意味なかった。



私的には

カヤの死後に、彼女が有名な詩人であったことも明かされたのが

自分で自分の文章quoteしとったんかーい!

とツッコミどころです。


アリバイ工作のために出先からバスで戻った時の変装は、長身の男だったのか、老婆だったのかだけ気になりました (そこ?!)


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