神様のギフト「最高の恋」は期間限定イベントです

楠 冬野

第1話 はじまり

       -1-


 この世にファンタジーは実在する。

 私の身の上に起きたその不思議を語るとき、まずは何から話をすればいいのだろうか……。


 出会った彼女の名前を私は知らない。

 彼女の存在を一言で言い表すならば……、

 り来たりではあるが、やはり彼女の言葉を借りてこう呼ぶのが相応しいだろう、「妖精」と。

 奇麗にまとめ上げられた髪、頭の上にはお団子が一つ。薄い黄色のワンピースを着て、背中には美しく透明なはねを生やしていた。

 見目可愛らしい少女の髪は金色ゴールド、目は碧眼へきがん。身の丈十五センチくらいの彼女は例に漏れず宙を飛んでいた。

 うーん。私なりにこれが精一杯の描写であろうか……。

 ともかく、その妖精はいきなり私の目の前に現れた。

 彼女は、幼い頃に絵本の中で見たものとは少し違って可愛げなどなかった。

 彼女は自分のことを”神様の使い”などと称しながらもちょっぴり意地悪だった。


 桜が散り始めた頃。

 あの日、あの雨の中で妖精に出会った。

 三十路を越えたいい大人がこのようなことを真顔で話せば、頭は大丈夫か、と誰もが訝しげに眼を向けるだろう。でも、それでも良い。私は断言できる。全てが事実であったと。

 遭遇した出来事はファンタジーにして現実。

 そして……、

 彼女との出会いが私の最後の恋の始まりとなるのである。











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