第154話 恋の話


「驚いたわー……まさか上皇陛下にこんな若いお后が居たなんて……」


 オトがびっくりした顔でマジマジとローリエの顔を見る。

 可愛い顔の持ち主で愛嬌がある。


 するとローリエが苦笑して言った。


「バカだと思ったでしょう?」

「いやいや。そんなことは無いよ?」


 慌てて手を振るオトだが、流石にすぐにバレた。


「良いのわかってる。みんな私のことをバカバカ言って虐めてきたから……」


 少しだけ顔に影を落とすローリエ。


「ロクちゃんたちは助けてくれたけど、私はずっとみんなから虐められてたの……」

「そ、そうなの?」


 気まずい顔のオト。

 リューグは和気あいあいとしていたのでオトはあまり虐めを考えたことが無い。

 下手にそれに近い真似をすると父親から拳骨が落ちたのだ。


(人を貶める者は自分を貶める。人を尊敬する者は自分も尊敬されるだったなぁ……)


 故に自分の格を上げたいならまず人を尊敬し、敬意を示せ。

 そうすればおのずと人は自分を上げてくれると。


 実際、リューグで諍いを起こした者はただちに追い払われたので、皆守っていたのだ。


「初めて上皇陛下を見た時、すぐにわかったよ。『この人は虐められて傷ついた』んだって」

「……あー……」


 言いたいことがすぐにわかったオト。

 詳しい経緯はオトも知らないが、確かに「虐められた」と言っていいだろう。


「だから助けてあげたいなって思って……色々している内になんかこう……こんな感じになっちゃった♪」

「あたいはその色々している内にの部分をより精密に詳しく聞かせてほしいかな♪」


 恥ずかしそうに言うローリエにぐいぐいと行くオト。

 すでに相手が上皇の后であることを忘れている。


 するとローリエを助けていたという女の子三人組が声を上げる。


「ローリエちゃんはね。最初は物凄く上皇陛下に嫌われていたの」

「けど、ずっと助けてあげたいって色々してたの」

「ドジだから失敗ばかりしてたけどね」


 そう言ってきゃはははと笑う三人組。

 それを聞いて頬を膨らませるローリエ。


「ぶう~! みんな酷いよ!」


 そう言って三人組をポカポカ殴るローリエ。

 仲良し4人組といった感じの4人にオトはほっとする。


(なんか良いよなぁ……)


 オトの時は丁度同い年の子がほとんどいなかったのでこういったじゃれ合いが苦手だったりする。

 上か下しか居ない状態では微妙に同い年の仲間をどう扱っていいかわからないのだ。


(シュンのお陰で何となくわかってきたけど……)


 さり気に瞬がオトにとって一番大事な友達になってるのも仕方がないことだった。

 すると4人組はオトに振りむいて言った。


「ちなみにオトちゃんは誰か好きな人が居るの? 」


グサリ


 心に何かぶっとい杭が刺さったように感じるオト。


(ま、まずい……)


 ぶっちゃけ、オトの周りには男の子が居ない。

 実は刀和が来たときに若干意識したぐらいなのだ。

 周りの大半が部下の男の子で、困ったことに同年代の男の子が居なかったのだ。

 慌てて、なりそうな男の子を探すオトだが……


(トワはシュンが居るし、ラインはまっぴらごめんだし、その部下は論外だし……)


 早い話が近くに全く恋愛対象が居ないことに気付くオト。


(あれ? ひょっとして私って遅れてる?)


 自分に浮いた話が一切ないことに気付いて現状にビビるオト。

 だが、そんなオトに容赦なく押し寄せる4人組の女の子。


「ねえねえどうなの?」

「ひょっとして一緒に来てる人たちの中に居る?」

「それともちょっと上を狙ってツツカワ殿下とか!」

「ひょっとして……もう、しちゃってるの!?」


 ワクワクした顔でオトに問い詰める女の子たち。

 すると、そこに1人の女の子が近寄ってきた。


「どうしたのオト? なんかあった?」


 瞬がふわふわと泳いでくる。

 瞬も復興計画に参加できないだけでこっち側の人間なのだ。

 それを見たオトはがしっと瞬の肩を掴む!


「シュンはトワと良い感じなんだぜ!」

「えっ?……ちょっ! いきなり何言い出すのよ!」


 慌てて否定する瞬だが、時すでに遅し!

 新たな生贄を見つけた女の子たちは瞬へとターゲットを変えた!


「きゃー♪ 晶霊同士だけかと思ったら相棒同士も♪」

「ねえねえ! トワってどんな感じなの!?」

「あの子凄く強かったよね!」

「良いなぁ! 彼氏がたくましくて! 」


 すぐに囲まれて身動きが取れなくなる瞬。

 その隙にさらっと逃げるオト。


「ちょっ! オト! これはどういうこと! オトぉぉぉぉぉ!!!!!」


 瞬の叫び声だけがその場で響いた。


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