第132話 企みごとは?


 ヨミがずるずるとナイシノスに引きずられていくのを、みんなが生暖かい目で見送る。

 すると、モミジがニヤニヤと笑い始める。


「まあ、そのような次第です故、こちらへお邪魔させていただいてよろしゅうございますか? 」

「……まあ、滞在するだけなら構いませぬが……」


 渋い顔になるツツカワ親王。

 それを見て取り残された刀和が不思議そうな顔になる。


(どうしたんだろ?急に? )


 ツツカワにしては珍しい対応である。

 その対応に不思議そうにしていると不意にモミジが刀和の方へと向いた。


(えっ? )


 にっこりと笑うモミジ。

 その艶やかな笑顔に刀和は顔を赤らめてしまう。

 するとモミジがツツカワ親王に向き直り、にこやかに言った。


「ただ、こちらへお邪魔するのも気が引けますゆえに、晶霊士たちの指南でもいたしましょうか? 」

「……指南ですか? 」


 さらに渋い顔になるツツカワ親王。

 だが、モミジはそのまま話を続ける。


「親王殿下の配下の晶霊士は少々お若く感じますゆえ、このままでは戦で後れを取りますでしょう。経験豊富な妾が指南して、親王殿下のお役に立ちとうございます」

「うむむむ……」


 さらに渋い顔になるツツカワ親王。

 するとモミジが扇で口元を隠しながらじろりと睨む。


「妾の技量にご不満とあらば、今すぐにでもナイシノスを呼んでお手合わせして見る? 」

「いえいえ! モミジ様の技量に何の疑いもございません! 」

「ならば、指南させていただいてもよろしゅうございますな? 」

「それは……」


 困った顔になるツツカワ親王。

 すると、ある場所から声が出た。


「僕がその指南を受けます」

「お、おいトワ! 」


 隣に居たラインが慌てて止めに入るがトワはそのまま話す。


「僕に話があるんでしょう? 」


 毅然とした顔でモミジをじっと見る刀和。

 すると嬉しそうにモミジはコロコロと笑った。


「良い目をしたおのこですな。背丈は小さいし、体も丸々としているのに中々どうして……」

(余計なお世話だよ! )


 失礼なモミジの物言いにイラッとする刀和。


パタン


 モミジは扇を閉じてにこやかに笑う。


「良いどす。回りくどく言うんはやめましょ。うちもあんたに興味があってきたんどす」

(やっぱりか……)


 刀和は何か変な感覚に捕らわれていた。


(妙に気にかかるんだよね……陰謀の予感っていうか……)


 何か蜘蛛の糸に引っかかっているような感覚をしていた。


(彼女は何か関係があるのかも……)


 刀和はそう考えていた。


 一方、瞬は何を考えていたのかと言えば……


(急に京都弁になった! あ、でもここに京都は無いから京都弁ってのもおかしいのかな?)


 どうでもいいことが気になっていた。

 ちなみに自動翻訳されてる関係で何となく京都弁っぽく聞こえるだけで、実はちょっと違ってたりする。

 そんな瞬は別としてモミジは不敵に笑う。


「ふふ……」

「何を考えているんですか? 」


 余裕の表情の紅葉に毅然と見つめる刀和。

 するとモミジがにこやかに笑う。


「何も難しいことはありまへん。ただ、当代随一と呼ばれる黄衣の剣士ヨミの相棒に選ばれた男がどんな男か興味が出来ただけどす」

「僕は見ての通りの男ですけど? 」

「その目はただ物ではありまへんなぁ……お兄さんのこと詳しく聞きたいんやけど、聞かせてくれはりますか? 」

「良いですよ」


 毅然とした刀和の姿を見て「ほう……」と唸るホーリ。


「そこに話が出来る小部屋があります。ゆっくり話しましょう」

「良いどすえ」


 そう言って刀和は小部屋へとモミジを案内した。

 他の者たちは呆然とそれを見るだけだった。


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