第127話 色とりどり


(まさか本当に起きるとは……)


 親友のホモ趣味に呆れていた瞬だが、いざ、目の前にすると流石に戸惑いを抑えられなかった。


「ホモだけは……ホモだけは……」

「よしよし。怖かったねぇ……」

 

 ホンワカ狸顔のぽっちゃりお姉さんのアミにすがりつくようにすすり泣く刀和。

 刀和は服が半脱ぎになっているが、それをかえりみる余裕すらない状態だ。


 その前には瞬が仁王立ちで怒りのオーラを出しながらライン達を睨み付ける。


「あんだら……なんでこんなことしようとしたの! 」

「いやぁ、トワが教えて欲しいって言うから……」

「我々もトワ殿はもう親友と思っておりますので……それぐらいはよろしいかと……」


 ラインとサダカゲが口々に弁明する。


 俗に言われる『衆道』とはこんな感じだったらしい。

 彼らにしてみれば「そういったことをしない相手は親友ではない」ぐらいの勢いである。


 現代の我らとは価値観が大きく違うのだ。


 そもそも『ホモを忌み嫌う』のはキリスト教の価値観であって、アジア全般からするとおかしいぐらいである。


 ちなみに作者はそれでもホモは嫌だが、彼らにとっては『それが当たり前』なのだ。 ← 非常に重要です。ホモは嫌いです。


 瞬に睨まれている二人だが、髭面強面のサダカゲが真面目な顔で答える。


「しかし、シュン殿。これより我らは皇都ヤオエの応天門で仕事をすることになります。そうなるとスードを誘われる頻度もこちらの比ではありませんぞ? 」

「……そうなの? 」


 少しだけ鼻白む瞬。

 ちなみに衆道とは『朝廷の貴族の間で流行って』いた物で基本、庶民はやらない。

 後に武士たちが貴族にバカにされてから、やるようになったのがきっかけである。


 それを聞いてうんうんうなずくライン。


「俺もそっちで教えてもらったからな……『貴族のたしなみ』らしいから、田舎者とバカにされるわけにはいかなかったし……」

「ら、ラインまでやってたの……」


 流石に青くなる瞬。

 さっきまで『刀和の親友』と思っていたのが急に危険な敵に見え始めた。


ガタガタガタガタ


 何かが小刻みに震える音が聞こえたので、そちらを見ると刀和が震えている。

 急に怯えた目でラインの方を見始めたのだ。


(まあ、しょうがないか……)


 瞬も、もはや怒って良いのか悪いのかがわからなくなった。


(刹那が居なくて良かったわぁ……)


 ホモ趣味の親友が居ては収集がつかなくなっていただろう。

 すると、狐目お姉さんのスエムが冷めた目で二人を睨む。


「スードはそんなに頻度は多くないでしょ? 普通は飲み会で交流するでしょうが。そもそも応天門には女の晶霊士も沢山居るでしょうに」


 当り前だが……ホモは『男しかいない状態』で発生しやすいし、レズは『女しかいない状態』で発生しやすい。


 この世界では女も晶霊士になれるので必然的に女晶霊士も多い。

 要するに恋愛は普通に起きるのだ。


「一部の好事家がやるだけの趣味を無理矢理押し付けない! わかった! 」

「「はーい……」」 


 仏頂面で答えるラインとサダカゲ。

 明らかに納得していない顔である。


 それを見てため息を吐くスエム。


「こんな感じで良いかしら晶霊将殿? 」

「ありがとうございます! 助かりました! 」


 ぺこりと頭を下げる瞬。

 だが、スエムは少しだけ意地悪そうににやりと笑う。


「でも気を付けた方が良いわよ? 勉強したと思うけど晶霊将の中でも『拡張型』の人は実益も兼ねて誘惑してくることもあるからね? 」

「……実益? 」


 言われたことがわからずにキョトンとする瞬。


 拡張型とは特定の行動が元でアウル量が増えたり減ったりする能力である。

 ドラゴ○ボールにおける『気』とよく似ており、増えると身体能力が全般的に高まる。

 

 長所は『特定の条件』を満たすと強くなるが、短所として『特定条件の逆』とやった場合は下がるので弱体化する。

 だが、どんな場合でも『極端すぎるふるまい』というのはかえって難しく、条件を満たすのが意外に難しいことから、拡張しても常識的な範囲にとどまりやすい。


 瞬が不思議そうにしていると、狸顔のほんわかお姉さんのアミがのんびりと答える。


「モミジ=ナイシノスのことねぇ……」

「モミジ=ナイシノス? 」


 不思議そうに尋ねる瞬。

 流石に晶霊将の名前まで全部覚えてはいない。

 スエムは悪戯っぽく笑った。


「有名な拡張型の戦士で能力は『淫乱』なの? 」

「えっ……淫乱? 」


 唖然とした瞬の表情を面白げに見ているスエムは、左手で穴を作って右手の中指を入れる。


「エッチした経験人数でアウルの量が増えるの」

「け、経験人数!? 」


 顔を真っ赤にしてビックリする瞬。

 多少は免疫が出来たとは言え、まだまだうぶな所もある瞬である。

 面白がって話に乗っかるアミ。


「モミジは経験人数でどんどんアウル量が増えるのと、本人が奔放な性格してるもんだからドンドン増えちゃってねぇ……ヨルノースでも最強の戦士の一人だよぅ……」

「そ、そんな人が居るんだ……」


 ドン引きする瞬。

 経験人数=強さに直結するとは思いもよらないだろう。


「黒髪赤目の美人だからとってもモテるし、自分から口説いたりもするの」

「凄いわねぇ……」


 もはや感心してしまう瞬。

 

「ちなみに経験人数は万を超えていると言われていて『万の者』とも言われているの」

「……正しいような間違っているような言い方ね……」


 ネットスラングを知っている瞬は少しだけ困った顔になる。

 スエムは真面目な顔して言った。


「あの女にあったら刀和は隠しといたほうが良いわよ?絶対手を出そうとするから! 」

「ああ、うん……一応、私は刀和のこと何とも思ってないんだけどね……」


 そう言って真剣に瞬に説くスエムとドン引きする瞬。

 それを見てアミはほんわかと答える。


「スエムは憧れの人をモミジに寝取られたからねぇ……未だにそのことを根に持ってるのぅ……」

「言わないでよアミ! 」


 スエムは恥ずかしそうに怒った!


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