第126話 パジャマの思い出


(刹那はホモが好きだったわねぇ……)


 瞬は在りし日の親友である天沼刹那との思い出を思い出した。


『俺達の一線を越えようぜ』


 そう言って画面の中の美少年二人がくんずほぐれつの合体を始めている。

 テレビにイヤホンを着けた瞬とその親友 天沼刹那が食い入るようにして画面を凝視している。

 二人ともほんのり顔を赤らめて、美少年二人のくんずほぐれつをがっつり見ている。


 だが、最初に飽きたのは瞬だった。


「せっちゃん。これはちょっとおかしくない? 」


 不思議そうにエロ本(無修正)を開く瞬。

 

「英吾から押収した「これ」の男の人に『やおい穴』って無いよ? 」


 割とリアル思考の瞬に対し、眼鏡を掛けたピンクのパジャマ姿の刹那がDVDを停止して拳を振り上げた!


「そんなこと言っちゃダメ! 私の心の中では男の人には『やおい穴』はあるの! 」

「それ多分、せっちゃんの心の中だけだと思うけどなぁ……」


 訝し気な青のパジャマ姿の瞬。


 二人は親友で土日にちょくちょくパジャマパーティーをする中でもあった。

 両親が兄弟なので互いの家で一緒に寝ることが多かった二人だが、今回は刹那の家でお休みになっている。


 瞬は青の水玉模様が入ったオーソドックスなパジャマで刹那は縞々の入ったピンクのパジャマである。

 刹那は力説する!


「男同士の愛が一番尊いの! そりゃ確かにア○ルの方向性が違うこともあるよ? でも私は人の原動力は愛だと思ってるの! そうじゃない? 」

「ま、まあそうだけどぉ……ていうか今、ア○ルって答えを言ってなかった? やおい穴って無いよね?」

「だから男同士の愛は火のない所に火炎放射してでも燃え上がらせるべきなのよ! 」

「うん。とりあえず戻ってこようかせっちゃん? 」


 ゴッ!


 後頭部に手刀を当てて刹那を黙らせる瞬。

 鼻汁とよだれを噴き出してそのままフラフラと座る刹那。

 とりあえず美少年のカバーを着いたティッシュ箱(何故かお尻から紙が出てくるデザイン)からティッシュを出して鼻をかむ刹那。


「ごめんなさい。つい興奮しちゃって……」

「その変な趣味捨てようよ? せっちゃんの将来が心配だよ……」


 困り顔の瞬だが、刹那はじろりと睨む。


「瞬だってガ○ダムとかスパロボ好きじゃない? 」

「だって、良いじゃない! 男同士でこうがっつり戦うの! 」


 今度は瞬の方が拳を振り上げる!


「男たちが己の信じるもののために戦う姿ってかっこいいじゃない! 共に平和を求めているのに立場が違うから戦う二人とか! そもそも思想が相いれないから戦うとか! そう言うのが良いんじゃない! 」

「また、確かに……お互いのチ○ポファ○ネルで熾烈に攻め合って受けと攻めが交互に変わると考えると……ひょっとしてあの戦いはものすごく尊いの? 」

「そう凄く尊いの! わかるでしょ! 」

「超わかる! 」


 全く分かり合っていないのだが、わかり合ってるような二人。

 ひしっ!抱き合ってわかり合った喜び?を分かち合っている。


「だから、英吾達がプロレスごっこしてた時はあたしも入りたかったなぁ……」

「ダメよ瞬! 男同士のイチャイチャたたかい異物おんなが入ったら純度が下がっちゃうから! 」

「むぅ……」


 不満そうな瞬と怖い顔になる刹那。


「いい? この世でもっとも尊いのはホモなのよ? 男同士でやり合うから純粋なのよ! 」

「せっちゃん。またさらっと違う世界に行ってるでしょ? 」


ゴッ!


 そう言って刹那にモンゴリアンチョップを決める瞬。


「ごふ……」


 再び眼鏡をずらしながら崩れ落ちる刹那。

 むせている刹那を見て瞬はあきれ顔だ。


「……ひょっとしてと思うけど、あいつらと一緒に居てカップリングとか考えてたりしてない? 」

「少し……」

「やっぱり……」


 呆れる瞬。


「一番好きなのはチーボ攻め英吾受けかな? でも英吾攻めチーボ受けも意外性があっていいし、チーボ攻め嘉麻受けもダイナミックな繋がりがあると思うし、逆に刀和攻め嘉麻受けも良いかなって思うから心の中で色々なカップリングローテーションで試行錯誤を……」

「あたしの中の『少し』とせっちゃんの中の『少し』に大きな隔たりがあるような気がするんだけど! 」


 汗が出始めた瞬に平然と答える刹那。


「そんなのは些細なことよ」

「些細だけど些細じゃないよ? だいぶおっきいよ? 」


 困り顔でツッコミ入れる刹那。


「でも一回ぐらいは生で見てみたいな……刀和なんか大人しいから、されることがあるかも? 」

「絶対に無いわよ」


 あきれ顔で瞬は答えた。


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