第108話 勝てない相手
一方でアカシ達はと言えば……
『ウルン! 』
ドガァン!
『うわっ! 』
『くっ! 』
『ぐみゃっ! 』
ウルメが槍を振り回しただけでアカシ、トヨタマ、タマヨリの三人が吹っ飛ばされる!
いくら女晶霊三人とは言え、中々の膂力である。
『僕だって十分強いんだルン! 』
変な語尾で怒鳴るウルメ。
悔しそうに立ち上がるアカシ。
『こいつに負けるなんて……』
こう言っては何だが、太宰府におけるウルメの評価は悪かった。
我儘で軍規を守れず、戦隊行動が出来ない。
ろくすっぽ訓練にも参加しないので、みんながバカにしていたのだ。
だが、実際に戦ってみればこの通りである。
タマヨリも仏頂面で立ち上がる。
『こいつ……こんなに強かったの……』
槍を構えてウルメを睨み付けるタマヨリ。
トヨタマの方も立って槍を構える。
『あたしもこいつには勝てなかったからね……』
『そんなに強かったの? 』
アカシが驚くのも無理もない。
トヨタマは晶霊兵の時に太宰府での訓練経験がある。
その時も有望なルーキーが現れたともてはやされていたからだ。
タマヨリが不思議そうに尋ねる。
『でも、何でそんなに強いのに周りから見放されていたんでしょう? 』
『……そういや、何か理由は有ったわね。なんだったかしら? 』
トヨタマが首を傾げる。
アカシが不思議そうに尋ねる。
『あんな性格だからじゃない? 』
『にしたって変ですよ? あの実力ならヨミやトーノたちが来るまでは晶霊士の中では十分主力ですよ? 』
アカシの言葉に訝しく答えるタマヨリ。
『今の晶霊兵で私に勝てるのはフキアエズぐらいですよ? 晶霊士でも私に勝てる相手が少ないぐらいですから』
タマヨリと西海大毅ホーリの弟フキアエズは晶霊兵の中では最強を誇っていた。
何しろ、ワンランク上の晶霊士でさえ、ほとんど勝てないのだ。
このメンバーの中では弱いがハンデ付いているからで、それが無ければアカシとトヨタマも勝てないと思っていた。
タマヨリの言葉に訝しむトヨタマ。
『言われてみればそうね……何故かしら? 』
基本、晶霊同士の戦いは数が少ないのでどうしても個々の能力頼みになる。
ヨミのように十分強ければそれで戦に勝てるのだ。
アカシが不思議そうにぼやく。
『戦隊指揮が下手くそだから? 』
『それはヨミも一緒でしょう? 指揮は他の者にサポートさせればいいのですからそこまで問題ではありませんよ? そもそも晶霊士なんだから別に無理して任せる必要もありませんし』
タマヨリが言うのももっともで、晶霊士は、そこそこ戦えればそれでいいのだ。
普通はそこまで戦えないからこそ、戦術を駆使するのであって、十分強ければいらない。
さらにアカシが不思議そうに首を捻る。
『それに西海の代表として都の武道会に行くメンバーにもあいつ外されてたでしょ? トヨタマより強いのに何で? 』
『言われてみれば変ね? なんであいつ行けなかったんだろ? 』
現実に三人がかりでも倒せない敵などそうそういない。
それほどの強さを持つのに何故選ばれなかったのか?
一方、ウルメはニヤニヤ笑って大槍を立てかけてじっと待っている。
アカシはその姿に奇妙な違和感を感じた。
(はて?……何かしら? )
奇妙な違和感を感じたが、突然轟音が鳴り響いた!
ドゴォン!
見れば山肌の一部が派手に吹っ飛ばされている。
ふと見てみると、トーノがギョードンと対峙していた。
(晶霊将か! )
どんな能力まではアカシからはわからなかったが、明らかにまずい状況だ。
事前の話では晶霊将は味方に一人も居ない。
(早く片付けてあっちも手伝わないと! )
それだけ晶霊将は脅威なのだ。
アカシがチラリと二人の方を見るとこくりとうなずいた。
『行くわよ! 』
『了解! 』
『突撃ぃ! 』
三人は同時にウルメに向かって行った。
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