第106話 玲友の縁


 アカシは瞬の居場所を聞き出して、助けに来ていた。

 お陰で体中に傷を負ってフラフラだ。

 そんな状態で瞬へにこりと笑う。


ガタ


 少しだけ辛そうに膝をつくアカシ。


『シュン……大丈夫? 』

「アカシ……なんで……」


 もう晶霊士の相棒は解消されており、アカシにはここまでやる義務も義理も無いのだ。


 だが、アカシはここへやってきた。

 恥ずかしそうに笑うアカシ。


『あたしのせいでシュンがこんなことになったから……』


 瞬がずっと苛まれていたように、アカシもまた苛まれていた。


 迂闊に相棒を外に出してしまった馬鹿。

 挙句に相棒に捨てられた馬鹿。


 そして何よりも……


 大切な相棒をそんな目に遭わせてしまった事。


 晶霊にとっても人間は大事なのだ。

 共に支え合うからこそ真の友である。

 それに気づいた瞬は思わず涙ぐむ。


(私は自分の事しか考えてなかった……)


 上手く出来るのは自分のお陰と考えていた。

 だが、実際には違う。

 自分のお陰で出来ているのは正しいが、相棒のお陰で上手く出来ているのも正しいのだ。


(自分が辛いから……アカシから逃げていた! )


 自分可愛さに友達を捨てていた。

 同じように苦しんでいた友達を捨てたのだ。

 

 瞬はふわりと飛びあがり、アカシの顔へとフラフラと泳いでいく。


「ごめんなさい……アカシ……」

『ごめんなさい……シュン……』


 ひしっ


 アカシの頬に抱き着いて泣く瞬と同じように泣いてしまうアカシ。

 

「ごめん! アカシゴメン! わたしは! わたしはね! 」

『良いの! 私の方こそゴメン! ごめんねシュン! 』


 ひたすら互いのことを思い合う二人。

 すると、うざそうな声が聞こえた。


『あー! 人質が逃げてるよぅ! 』


 ウルメだった。

 だが、もう一人の声も上がる。


「糞女が! 絶対に調教してやる! 」


 小刀を手に血走った目をしたヒロツグも現れた。


『おい! 助けられたんなら、早くしろ! こっちはちょっとヤバくなってきた! 』


 ヨミが微妙に難しそうな顔で急がせる。

 ヨミはくいっと顎で示す。


 その先ではトーノがピンチになっていた。


 それらを聞いた瞬が一瞬だけ迷うがすぐに顔を上げ、涙をぬぐう!


「アカシ! 乗せて! 」

『……えっ? 』


 何を言われたのかわからなかったアカシだが、すぐにその意味を理解する。


「あたしの方から相棒解消しておきながらこんな虫のいい話は無いと思うけど……もう一度アカシに乗って戦いたいの! 乗せて! 」


 それを聞いて少しだけ戸惑うアカシだったが、すぐに嬉しそうにうなずいた!


『もちろん! 私の方こそお願い! 』

「アカシの頼みなら断れないわよ! 」

 

 そう言って瞬はアカシのお腹に手を当てるとにゅるんと吸い込まれる。


ぼぅ!


 相棒を持ち、晶霊士となった証拠としてアウルがアカシの体にまとわりつき始める!


(行きましょうアカシ! )

(行こうシュン! )


 そう言って二人は再び立ち上がった! 

 ウルメを倒そうとじろりと睨むアカシ。

 すると、ウルメの方はヒロツグと合流したところだった。

 ヒロツグはにやりと笑うとにゅるんとウルメの中に入っていく。


『アカシはおいらのものだぁ! 』

 

 そう言ってアウルを噴き出し始めるウルメ。


(めんどくさそうね……)

(ええ、確かあいつも強いんでしょ? )

(そうよ。ヒムカでは1,2を争うほどよ)

 

 ウルメもこう見えてかなりの手練れである。

 一方、アカシも近在に名の知れた手練れだが晶霊士に戻ったとはいえ、それまでに手傷に負っている。

 

(難しい戦いになりそうね)


 冷や汗を垂らしていると二人の晶霊が隣に立った。


『加勢するわよ』

『お姉さまの為にも頑張ります! 』

 

 トヨタマとタマヨリの姉妹が笑って言った。


『オトが言ってるわ。再結成おめでとうって! 』

『一言余計よ』


 親友の軽口にアカシは辛そうに笑って答えた。



用語説明


玲友


玲とは涼し気な音や玉のように美しい様を表す。

そこから一点の傷も無い美しい友情を玲友と呼ぶようになった。


ちなみに作者の造語でこの世界の言葉なので真に受けないように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る