第79話 三つ巴
ガキィン!
タマヨリが放った槍の一撃を持っていた刀で受けとめるトーノ。
『おいおい、何が起きたってんだ一体? 』
平然と受け止めておきながらも飄々と言ってのけるトーノ。
『お姉さまに群がる害虫を駆除しにきただけです! 油断も隙もありませんね! 』
がキガキガキガキィン!
タマヨリが断続的に一撃を振るうが、歴戦の強者であるトーノに触れることは無く、トーノは持っていた刀で受け流している。
慌ててタマヨリを止めるトヨタマ。
『こらやめなさい! 刃物を出して喧嘩していいわけないでしょう! 』
『放してトヨねぇ! あの害虫を駆除するだけだから! 』
羽交い絞めにされても暴れるタマヨリだが、そこにもう一人の声がかかる。
『おりょ? トーノじゃねぇか。久しぶりだなぁ! 』
ヨミまで来てしまった。
『おー! ヨミさんじゃねぇか! 久しぶりだなぁ! 』
飄々と答えるトーノ。
どうやら旧知の間柄らしい。
『どうしたの? こんなところで? 』
『いやぁ、この子と話してたらあの子が急に襲い掛かって来てさぁ……』
『大変だったなぁ! 』
和やかに笑いあう二騎。
そしてヨミが朗らかに尋ねる。
『ということはお前はアカシを口説いてたんだな? 』
『そういうこと! 』
『なぁんだそういうことかぁ! 』
『そういうことなんだわぁ! 』
はっはっは!と呵々大笑する二騎と、対照的に揉みあいになっているトヨタマ・タマヨリ姉妹。
すると……
がしぃ!
いきなりお互いカウンター気味に殴り合うヨミとトーノ。
双方の拳が空中でぶつかり合う!
『てめぇ! なんでアカシに手ぇ出そうとしてんだ! あれは俺のだ! 』
『うるせぇじじい! まだお前のもんじゃねぇだろ! 』
そう言って睨み合いを始める二騎。
『この寝取り野郎め! 成敗してくれる! 』
『なぁにが寝取り野郎だ! 応天門の寝取り王に言われたくないわ! 』
『うるせえ! てめぇこそ種蒔き王って呼ばれてたじゃねーか! 』
互いに罵声を浴びせかける二騎。
すると、何か思い出したかのように呟くトヨタマ。
『そういや中央に行ったときに聞いてたわ。応天門の寝取り王と種蒔き王ってあだ名ってやつが居るって! 』
『種蒔き王は俺が名付けてやったんだ』
自慢げに睨みながらも答えるヨミ。
『仕返しにてめぇに寝取り王ってあだ名付けてやったんだよなぁ……』
『ふん! 下半身に節操の無い貴様に言われる筋合いはないわ! 』
互いに罵倒し合うおっさん二騎。
アカシは呆れてぼやく。
『……どっちも言われる筋合い無いと思うけど、言われるのは仕方ないと思う』
『……あたしもそう思う』
二騎のおっさんの耐えがたい罵倒に呆れたトヨタマは呆れてタマヨリを開放した。
『トヨねぇ……? 』
不思議そうなタマヨリから槍だけは取り上げるトヨタマ。
『行きなさい。あの二騎を成敗してくるのよ』
『了解! 二騎ともしねぇぇぇぇぇ!!! 』
罵倒し合う二騎に突撃するタマヨリ。
すると、すぐにさらっと避けて見せる二騎。
『おう! またお前か! 』
『元気の良い子だなぁ! 』
『二騎まとめて退治してくれるわぁ! このスケベジジイどもぉ! 』
『お? やんのか? 』
『やっちゃうか? 』
そう言って三騎が揉みくちゃになって喧嘩を始める。
それを確認してからトヨタマは言った。
『さ、ほっといてあっち行きましょ? 』
『……そうね。……はぁ……』
溜息交じりのアカシを連れてトヨタマは立ち去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます