第75話 お風呂


 数日後……


 ラインは腕相撲で勝利した刀和が気に入ったようだった。

 何かと一緒に行動する機会も増えて良き友人となりつつある。


 そんなある日


 ラインは刀和を風呂へと誘った。


「刀和! 一緒に風呂行こうぜ! 」

「わかった」


 最近では刀和も慣れて一緒に行動するのが当たり前になってくる。

 流石にずっと女の子に囲まれて辟易していたのだ。

 なんだかんだ言いながら友達とバカをやりたい年頃でもあるのだ。


 太宰府の寮は風呂とトイレは共用である。

 このうちのトイレは魚を養殖している場所で糞を振り撒くのが普通である。

 ばっちい話だが食物連鎖はこんなものである。

 一方で上から魚の糞が良く落ちてくるので特に肥料を撒かなくても畑は育つのだ。


 そして風呂はと言えば、これはサウナ式だが一応存在する。

 流石にお湯風呂は存在しない(というよりはお湯が飛び散ってすぐ冷める)が、サウナで入る水風呂は用意しやすい。

 そして体から汗を流すのは良い物である。

 

 とはいえ、お風呂は火を使うのでそれなりに気を使うものでもある。

 この世界の火事は地上よりも危険で、火の粉が上下前後左右に飛び散るのだ。

 

 それゆえに火を扱うものは竈以外では慎重になる。


 二人が向かうのは専用の湯殿で、夕暮れ時と言うこともあり、仕事が終わった人たちでごった返していた。


「うわー混んでるねぇ……」 

「行こうぜ」


 二人はフワフワとゆっくり泳ぎながら湯殿に向かう。


 すると、湯殿の前の木の枝に乗って休んでるオトに出会った。

 空を泳げるので、こんな感じの待ち方も出来るのだ。

 現にオト以外の人たちも木の上に座って休んでいる。


 地べたは汚いので誰も座りたがらない。


「あれ? オトもお風呂? 」

「うん。シュンは見なかった? 」

「見て無いけど? 」

「おかしいなぁ……ここで待ち合わせしてたのに……」


 不思議そうなオト。

 そしてふと刀和に尋ねる。


「そういや、リューグじゃ水風呂ぐらいしか入ってなかったけど、入り方知ってる? 」

「大丈夫だって。瞬に聞いたから」


 お風呂の入り方にもマナーがある。

 最近は守られていないのでおじさんはとっても嫌です。

 ちなみにお風呂は高額なので貴族ぐらいしか入らない。


 刀和もサウナに入ったことぐらいはあり、入り方も大体一緒だったのでそれを参考にするつもりである。

 オトがいやらしい顔になって笑う。


「トワ~? 覗いちゃだめだからなぁ~? 」

「だ、大丈夫だって! そんなことしないから! 」

「本当かぁ~? 」

「本当だって! 先に入ってるよ! 」


 そう言って刀和はラインと一緒にお風呂に入っていった。

 ちなみに瞬がやってきたのはそれからすぐだった。


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