第62話 論功行賞
両脇に西海八州の国司と小毅が並び、その後ろには各国の主要な郡司と校尉が並んでいる。
その中にはオトの父親のリューグ郡司アントとトヨタマの父親 カザナミ校尉が居た。
二人とも、どこかしら誇らしげに立っている。
こう言った場合は儀式にもよるが、軍事的意味合いが強い場合は晶霊の立場を優先して並ぶ。
すなわち、晶霊に付随する形で相棒(シーグ)が並ぶので晶霊の肩にその相棒が立っている。
細かい儀礼的な差異はあるものの、色々複雑なのだ。
トヨタマとヨミが西海太宰のツツカワ親王とその相棒にして晶霊たちの太宰である大毅ホーリの前に立つ。
ツツカワ親王も大毅ホーリの肩に立っている。
トヨタマとヨミが膝をついて頭を下げると後ろに居るリューグ軍全員がそれに倣う。
そして、大毅ホーリの副官が声を上げた。
『リューグ校尉カザナミの娘トヨタマ。今回の海賊討伐に対して多大なる功績を上げたことに評し、ここに赤珊瑚50枚を与える』
そう言って褒美の赤い珊瑚を貨幣に加工したものを渡す大毅ホーリ。
この世界の通貨は珊瑚が基準で、紫、青、赤、黄、白、黒の順番で価値が高い。
赤珊瑚50はかなりの大金である。
ひざまずいたまま受け取るトヨタマ。
『続いて、救援に駆け付け、新たにリューグ家に仕えることになった黄衣の剣士ヨミ。今回の海賊討伐に対して、多大なる功績を上げ、さらには敵将スミトを討ち取った功績につき、青珊瑚100枚を与える』
おおおおっ!
さらに全員が感嘆の声を上げる。
赤珊瑚よりも大きなご褒美である。
それに続いて大毅ホーリの副官が言った。
『皆も見ての通り、大毅ホーリ様は成果に対して恩賞を惜しまない。皆、忠勤に励むように! 』
『『『『『ははぁ! 』』』』』
全員がひざまずいて頭を下げる。
海賊スミトも功績に対しては大きな恩賞を与えていたが、それと同様にツツカワ親王もまた恩賞を与えている。
だからこそ、誰もが忠誠を誓い、より励む。
西海太宰の評判が良く、地方が荒れている中で西海だけが穏やかに過ごせるのもここに理由がある。
『また、両名には新たに官位を与えることを約束しよう。おって連絡するゆえ、屋敷で待機するように』
おおおおっ!
さらに大きな歓声が上がり、拍手が鳴り響く。
人々は将来有望な若者たちにエールを送った。
『さて、細かい話はこれで終わりだ! 者ども飲むぞ! 酒を持てい!! 』
『『『『『うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 』』』』』
先ほどの倍以上の歓声が上がる。
ヨミがぼそりとぼやく。
『俺の昇進よりそっちの方が大事か? 』
「それは仕方ないだろ? ヨミだって儀式よりも飲みの方が良いだろ? 」
『まあな』
刀和の言葉にヨミはにやりと笑った。
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