第36話 狩り
そして数日後……
刀和達は狩りに出かけることになった。
「いやっほぅ! 」
「いぇーい! 」
「あわわわわわ!!! 」
オトの駆るシャチ船に乗る瞬と刀和。
シャチ船はこの月海では広く知られた乗り物の一種である。
シャチが二頭あるいは四頭で引っ張る船で一種の馬車のような物である。
後ろの荷台はこの無重力世界を反映してか、大きな樽の形になっており、オトが御者をやって軽快に飛ばしている。
前は比較的視野が広く、シャチを手綱で指示できるようになっており、御者席らしく場所には瞬とオトが乗って嬉しそうに声を上げている。
「きゃっほう! 」
「飛ばせ飛ばせぇ! 」
一方、刀和は後ろの席で荷物を押さえていた。
「ちょっ! そんなに飛ばさないで! 」
「聞こえなーい! 」
刀和の苦情を聞かないふりする瞬。
この世界では海獣を乗り物にすることは多い。
理由は簡単で泳ぎが早い上に人間より大きな生き物も多いからで、多種多様な生き物が乗り物として飼育されている。
軽快に飛ばしながら、山に入る一行。
山に入ると刀和と瞬は降りて、オトは荷物を下ろす。
「よいしょっと」
荷物の大半はサバイバル道具で一番多いのは矢で、矢羽の代わりに魚のヒレが付いている。
今日はみんなで狩りに出かけたのだ。
狩りと言っても、この世界における狩りは魚を射貫くことである。
普通は網で漁をするのだが、狩りとなるとどちらかと言えば大型の獲物を取ることを差す。
「マグロとかカツオが捕れると良いなぁ……」
そう言ってオトは弓矢の準備をする。
きょろきょろと刀和が辺りを見渡す。
トヨタマとアカシが少し離れた場所で弓矢を手に別に狩りをしているようだ。
「二人ともこっちに来ないの? 」
「あの二人が来ると魚が逃げちまうだろ? 」
「なるほどね」
当り前だが……動物は自分より大型の生物が居るところに、自分から近寄ったりはしない。
だから別々にやるのである。
「でも下手に俺らだけでやると前みたいに鰐が来たらヤバいからな。こうやってお互い、すぐに行き来できる程度の距離でやるんだ」
「あんな思いは二度とごめんだからねぇ……」
肩を震わせる瞬。
二人は弓を渡されて、張り具合などをチェックする。
一応、弓の使い方を教えてもらったのでこれぐらいは出来る。
実は狩りは軍を維持するために重要な仕事である。
糧食を賄うのに実は輸送分だけでは足りないことが多い。
その足りない分を補うのが狩りである。
実はこの辺の問題は現代でも起きていて、兵隊が孤立すると自給自足しなければならず、サバイバル技術を教えられるのだ。
現代でもこれなのだから、まして古代ともなれば推して知るべし。
二人とも早く狩りのやり方を学ばなければならないのだ。
「それじゃあ、やってみようか! 」
そう言って三人で狩りを始めた。
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