第3話 海の中は危険がいっぱい
竹林の中は静かなもので、大きな音を出す生き物もおらず、のんびりとした空気が漂っていた。
しばらく竹林を泳いでいる二人だが、ふと刀和が思いついた。
「竹林出るだけなら上に泳いだ方が早くない? 」
刀和がそう言うと同時に急に竹林が暗くなり……再び上から陽の光が入ってきた。
何か大きな生き物が上を通り過ぎたのだ。
刀和が嫌な予感を感じると同時に瞬が神妙な面持ちで答える。
「さっき、あたしも上へ泳いだんだけど……映画とかゲームで見たモササウルスみたいなのが泳いでた……」
「……中を泳ごう」
海中は思っているよりも危険地帯なのだ。
空気が存在することで、より危険さが増えているようだ。
冷や汗を流しながら泳ぐ刀和。
ふと、あることが気になった。
「英吾達はどうなったんだろう? 」
記憶を探る刀和。
そして瞬も記憶を探り始めて泳ぐのがゆっくりになる。
すると、瞬は急に地面すれすれを泳ぎ始めた。
「確か……あんたらが水泳部に覗き穴作ってるのがバレて、私にボコボコされてる途中だったわね」
「うん、そうなんだけどね。いきなりその辺の棒を持つのは止めよう」
急に手ごろな棒を探し始めた瞬から距離を置く刀和。
「今のこの状況にとっては些細なことだよ? 」
「些細だけど……些細じゃないよ? 大分おっきいよ? 」
丁度良い棒があったので手に取る瞬。
瞬は唇を引くつかせながら、棒を振りながら具合を確認する。
「前々からおかしいとは思ってたのよ…………あんたらが私の胸のカップまで知ることが出来たのが。あたしの胸って下着専門店の店員でさえ間違えやすいFカップなのにスケベは一味違うなぁって思ってたけど、そうじゃなかったのよねぇ…………」
「落ち着こう瞬! 悪いのは全て英吾であって僕じゃない! 」
「あんたも共犯でしょうが! 」
そう言ってポカポカ殴り始める瞬とそれから逃げる刀和。
しばらくそうやっていて、あることに気付く。
「やめよう。おなかをすかせるだけだって」
「そうね……」
今の二人は完全なサバイバル状態なのだ。
御飯の準備が簡単にできる状態ではない。
下の陸地を見る瞬。
沢山の貝が竹の間に群生しており、小さな魚も泳いでいる。
「幸い、海産物は多いみたいだけど……」
「……火が無いと食べられないね」
困り顔の二人。
よく、新鮮な魚は生でも食べられると言われるが、海産物は寄生虫が怖い。
昨今、魚を生でも食べられるようになったのは冷凍技術の発達で寄生虫を殺せるようになったからだ。
刀和が食べたそうな顔で貝を見ながら呟く。
「それに海の生き物は毒持ちが多いよね。迂闊に食べてどうなることか……」
海生生物は陸上生物に比べて毒持ちが多い。
陸よりも遥かに多様な生物の宝庫である海は、生き残りが半端なく難しいのだ。
当然ながら体に毒を持って食べられないようにしたり、毒を刺して獲物を捕る技術が発達した。
そして毒が無い生き物と言えば単純に毒を持たなくても生きられる生き物=巨大生物になる。
その巨大さも陸上とはサイズが大幅に違うのでとても中学生二人で捕らえられる大きさではない。
空気があるからと言って危険度が下がっているわけでは無い。
逆に空気中という安全地帯が消えるのだ。
こうなると逆に小魚と言えど安心できなくなる。
ピラニアが食いつくすように襲われる可能性も否定できないのだ。
「……とにかく、竹林から出ましょう。どこか安全に住める場所を探さないと」
「そうだね! 」
サバイバルにおいての第一は活動拠点の確保だ。
毒蛇や猛獣からの攻撃を防ぐ住処は何よりも大事である。
竹の間を縫うように泳いでいる二人だが、やがて光が強い場所に出る。
「……あそこから出られそうね」
「……そうだね」
二人は慎重に外の様子を窺いながら竹林から顔を出した。
用語説明
海の生き物
この世界ではかなりの数の海の生き物が出てくるが、魚には瞼や肺があったり、貝や蟹も虫のような生き物である。
現実世界とは名前が同じでも若干違う生き物であると考えてほしい。
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