第5夜お仕事ごとごと、の前に服


さて、この世界に来て?一日が経ちました。


今日から私、花蓮と姐さま方に付いて回ってお仕事の猛勉強です。



この世界、紙と墨は高級だから、すぐメモとかできないのが悲しいわ。


なんでこんなこと考えてるかって?



「来夏ちゃんの服は…えっと、大きさはこれくらいでいいかなぁ…」



暇だからです。


今、私は花蓮に服選びをされている。


いや


してもらっている。うん。



でも、服が全部着物?で、赤系統が多い。

というか全部赤。


何が違うの、と言いたいところだが、それをさっき言いかけたら



『ねぇ、花蓮、これって何がちが』

『ッ!』

『何でもありませんッ!』



こうね、クワッ!と目を見開いて


お前何言ってんの…?


って感じで見てきたからさ…怖くて…。

なんか、うん、こう、猫目だった。威嚇した猫の目。



「うーん、来夏ちゃんは綺麗な夏空色だからなぁ…赤は似合わないかなぁ…」

「………………は?」



夏空色?なにそれ?



「な、夏空色って何?」

「え…もしかして、来夏ちゃんここに来てから、ううん、生まれてから鏡見てない?」

「…見てない」



そもそも、生まれてから昨日までの記憶がすっからかん。なんて言えない。



「あんのクソジジイ……ちょっと待ってて。あのクソッおやじ様から、鏡奪っ貰ってくるから」

「あ…そ「こんのクソジジイがぁ!!」…」



花蓮、最後の最後で我慢してきたのが無駄になってたよ。



「………はぁ」



私何もわからないじゃん



「ん?何で開いてんっ!?」

「あ、夕弦?」



夕凪ならもっと無表情だから、たぶん夕弦だろうな。



「おまっ、お前、何つー格好っ」

「格好?」



何って、寝間着の白い柔らかい、明らかに高級そうな…寝間着っすよ。



「っ〜〜!!夕凪呼んでくるッ!」

「あ、うん」

「夕凪ィィィィ!!!」



おーい、夕弦さんや、廊下走ると兄さまや姐さま方に怒られるぞーい…って、聞いてないか。








ダダダダダッ


「おいっ、夕弦引っ張んなッ!!」

「大変なんだよ!!」

「何がだよ!」



うーん、本当に何が大変なんだろうか。



「ほら見ろッ!」

「何っ…ふへぇ?」



うわ、夕凪、すげぇマヌケな声出た。



「おま、おま、お前、何してんだよ…」

「待ってる」

「「誰を!」」

「花蓮を」

「「花蓮んんんんん!!!!」」

「花蓮ならおやじどののトコだよー」

「「あんのクソジジイィィィィ!!!」」



流石双子。シンクロ率高い。

そしておやじどの、クソジジイに改名される



「…仮にも設定的には、楼主って私たちの雇い主じゃなかったっけ…?」





後に、七歳児三人に頭を下げているおやじ様の姿が、兄さん姐さん方に見られたとか見られてないとか…。



結局私はどうすればいいの。まだ寝間着のままなんだけど。



ぼっちじゃん。私ぼっちじゃん。



…しょぼん。

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