そして…どうか間に合いますように…!
ユリィさんの圧倒的な強さを目の当たりにし、ますますの安全と安心感を手に入れた俺は、この二人がいればどこまでも行けそうな気がしてきた!
その後現れた階段を降りながらガイドブックを取り出して次の階層の情報を確かめようとしてある事に気がつくまでは…。
俺「ちょっと待って二人共…何かそれっぽい作りで、
しかもマップ的にも中ボス階仕様だったから
何も疑問を持たなかったけどさ…。
さっきの階、十八階層だったはずじゃない?」
ユリィ「はぁ~…そう言えばこの階段も長いですね~…。」
そう、確かに転移でスっ飛ばして来た階層のページを確認しても数はあっている。
俺「次のページがいきなり二十階層なんですけど…。」
何かがありそうで怖くなってきたんですけど!
エイナ「心配しなくて大丈夫だよアサヒ~。
多分この先とても横に広い層が続くんだと思うよ。
何処かに隠し扉があったり、
条件を満たさないと進めなくなっちゃう事もよくある事だよ♪
でも…こんな浅い所でそんなギミックが出てくるなんて…。
ここ割とレベル高いダンジョンなのかも~♪」
ユリィ「そうですね…私も仕事柄色々と巡ったりしてますけど~…。
他の所だと、そーいった仕掛けが出てくるのは…
だいたい五十階層過ぎた辺りからが多いイメージですね~。」
この二人!
ユリィ「多分ですが~…情報を持ち帰った人達が、
二十階層から十九階層の存在だけ確認したけども…行かなかったか、
行けなかったか…そんな所だと思いますよ~。
こういう作りの時には中ボス階が前倒しになることも有るんですよ~。
そう、特に上級ダンジョンに多いです~。」
エイナ「次のボスは楽しめそうだね、ユリィお姉ちゃん♪」
ユリィ「はい、エイナちゃん♪
よろしくお願いしますね~♪」
ユリィさんはエイナの強さを肌で感じているのだろうか?
まぁ、さっきの階でお互いに一人で勝手に歩き回れるレベルで有るなら…て、事かな?
その長い…いびつな螺旋状の階段を降りていくと、先程の十階層のチュートリアルの時のような、大ボス感溢れる扉が現れた。
エイナ「ちゃんとした最初の大ボス、行っくよ~♪
お姉ちゃん前からよろしくー!」
バンッ!と扉を開いたエイナはそのまま真っ暗闇の中へと突進して行った。
ユリィ「あらあら~元気が良いですね~。
さ、行きましょうアサヒさん。
かなり広い部屋だと思うので、安全な所に居てくださいね~。」
そう促されて入った部屋に、また適当な演出を済ませて明かりが灯る。
なるほど…かなり広くて天井が高い。
2フロア分である…。
更に壁の中ほどに、部屋と部屋をつなぐ通路というか手摺の付いたテラスのような物が見える。
あれが十九階層ということか…。
と、それどころでは無い。
俺が壁を見ている間に静かに現れたそれは…2フロア分もの高さの狼…いや、
『双頭のデッカイ犬』だった。
やがてそれが部屋全体を揺らす程の咆哮を放ち、ボス戦スタートです!
…さて、俺は離れた場所であの階層に進む方法でも考えて見よう。
例えば、あの魔物に飛び乗ってあのテラスに飛び移る…
…というのは今まさにエイナが失敗してみせた。
好奇心の塊だものな…考えるよな…。
簡単に言うと空間に弾かれたのだ。結界のようなものだろう。
とすればこの階の戦闘中には入れない、そもそも入り口感が無いので十九階層そのものが独立しているのだろう。
だとすれば次に考えられるのは下からの回り込み、または上層階の隠し通路である。
せっかくスルーできたのに…しかも戻って探すような時間は無い。
暫くこの街に滞在して調べて見るのもありだが…万が一こんな旅の序盤で命を落とす事になるのも嫌だ。もっと色々見てみたい!
しかもコレまでの二人の会話、そして二人の強さから鑑みて…このダンジョンは他の街に比べてレベルが段違いのようだ。
どうしても気になったら、情報を待てばいい。
思い出せ…ウチのパーティでまともに戦えるのはエイナだけ!
…下の階層の情報が無いとなると、あと気になるのは…
『十五階層のランダム転移』
…俺も小さい頃は色々とテレビゲームにもハマったし、RPGは大好きだった。
難しくてクソゲー呼ばわりされるゲームの中にも、ありえないような直感でそのポイントを抜けると死ぬほど思い出に残る、人生に影響を与えてしまった物まで有る。
…あ~…寝る間も惜しんでゲームやりて~…。
いや違う、そんな中に序盤で出てくるのに解明出来ず、諦めて進んで終盤に手に入るアイテムを持って行けば全く違う次元に飛んでラストや、ボーナスステージ、
または最強アイテムを手に入れる…なんて事も多々あった。
ああ…ロマンだなぁ…♪
そう言えばチュートリアルの魔物も言っていたな。
記憶…情報は各地で共有されていると…。
ここは精霊の遊び場、暇つぶしの娯楽を求めているのだ。
今まで幾人かの同郷者も訪れ、それで出来上がった各ボス部屋の演出…。
結論は出た!
よし、あの十九階層の事は忘れよう!
今はゲームじゃない、命がかかっているのだから!
などと岩陰に隠れて現実逃避しているうちになんだか静かになったので、そっと覗いてみると…
エイナ&ユリィ「イエ~イ♪」
と、手を合わせてピョンピョンしているのが目に入る。
いつかあのポジションになりたい…。
頑張りましょう…可能な範囲で!
…だってそもそも魔力とか無いし…。
隠れていた俺を見つけてエイナがくるくると回りながら駆けてくる♪
エイナ「アサヒ~ここ凄いよ!
お姉ちゃんと二人でもこんなに時間がかかっちゃった!
あの十九階も見えるのに入れないし…。すっごく面白いよ、ここ!」
ユリィ「お待たせいたしました~♪
さぁさぁ~…どんどん先へ進みましょう~…。」
と、コチラには近づいて来ずに先を急ごうとしている様に見えるユリィさん…
まだ…おしりのダメージがあるのか…ほのかに顔を赤らめてモジモジと…
は!今まで体感していなかったが…その問題ってどうなっているの!?
ダンジョンって!
と、おもむろにガイドブックを漁って見ると…あ、割とちゃんとしている。
俺「あ!急ぎましょう!
次の階層に降りたらすぐに有るみたいですから!」
顔を更に真赤にしたユリィさんはプイッ!と振り返り、現れた扉に向かって走り出す!
ユリィ「わかってもいちいち言わないでください~~!」
…あ…嫌われたかも知れない…さらにコレを伝えたらもっと嫌われるかも知れない…
しかし言わざるを得ない!
急を要する事態かも知れないのだ!
だからこそ俺は、扉にたどり着く彼女に大声で伝える…!
俺「階段降りたら左まっすぐ直進の扉でーーーーす!!」
ユリィ「はい~~~~~~~~……。」
力無い返答に無事を祈る!
エイナ「どしたの?
お姉ちゃん…ウンコ?」
そうだ、エイナはガイドブックのマップを暗記していた…。
そして…俺はこの子と共に『デリカシー』という事に付いて深く学んで行かなくてはいけない事を改めて知った…。
ちなみにここのトイレは地下水脈を使った清潔な洗浄式だそうです♪
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